タイガー・ウッズがテーラーメイドと用具契約
2017年 ファーマーズインシュランスオープン
期間:01/26〜01/29 場所:トーリーパインズGC サウスコース
<選手名鑑224>バッバ・ワトソン(後編)
■「市長になりたい」発言の真意
マスターズ2勝を含む通算9勝のババ・ワトソン(38)の夢は政治家だった。昨年11月22日、無事に1年のスケジュールを終え、AP通信の取材を受けた際に「政治に興味があり、ペンサコーラ市の市長になりスポーツイベントを企画したり、コミュニティの成長にかかわる仕事をしてみたい」と発言。彼の中では長年温めてきた思いで、マスターズ勝者の唐突な発言にビックリだった。多くの選手の将来の目標は、「理想のゴルフ場を持ち、そこで自身のホスト大会を開催、ジュニア育成、コミュニティに貢献したい」などが一般的だが、ワトソンの目標は「市長」。一体、どういうことなのか?
彼はフロリダ州ペンサコーラ市近郊バグダッドという小さな街の出身だ。同市は州の最西端部分に位置し、北はアラバマ州、西はミシシッピー州に隣接している。南にはメキシコ湾を抱き、白砂のビーチで知られる保養地。そしてペンサコーラ海軍航空基地をはじめ、海軍関連施設が多くある軍事都市でもある。
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ワトソンの父は同地の海軍に所属、ワトソンはそこで生まれ育ち、故郷愛は人一倍強い。今やワトソンはペンサコーラが生んだスーパーヒーローで、マスターズ優勝だけでなく、さまざまな活動で故郷の人たちを笑顔にしている。彼は少年時代から野球が大好きで、同地ベースの野球チーム「ペンサコーラ・ブルー・ワフーズ」(ダブルA)の共同オーナーになり、積極的に運営に関わり地元を大いに盛り上げている。その功績が評価され、昨年、球団はリーグの最高賞を受賞した。
昨春リリースした絵文字「Bubbamojis」も広く愛され、ワトソンブランドはすっかり定着。昨年7月末に同地にオープンした「Bubba's Sweet Spot」という店もワトソンのイラスト顔がトレードマークとなっている。アイスクリーム、ファッジ(キャラメルのようなお菓子)の甘党専門店は大人気で、今後は店舗を増設する予定。彼はすでに活動を始め、市長になれば、もっと幅広く貢献できるかもしれないと考えているようだ。
カーマニアの彼は自動車ディーラーも共同経営している。昨年6月に加わった愛車はすべて漆黒のベンツを改造したジープで、まるで戦車のよう。他にも改造ピックアップトラックを数台所有するほか、プレミアムカーも所有している。2012年1月にアリゾナ州スコッツデールのオークションで落札した69年製オレンジのダッジ・チャージャーは、価格は11万ドル(約1300万円)。この車は米TVドラマシリーズ、映画化もされて大ヒットしたバート・レイノルズ主演の「The Dukes of Hazzard」で使用された実車だ。さっそくフェニックスオープンの水曜日にその車でコースに現れたのだった。他にもロボット産業に共同出資するなど多岐にわたる。ゴルフで得た人気、影響力、収入を故郷のためにフル活用!そして、その思いがゴルフのモチベーションになっている。
■市長とツアープロを両立 目指せ!第二のロッキー・トンプソン
地元でのワトソンの人気は絶大で、立候補すれば当選確実?かもしれないし、ツアープロとの両立も可能?かもしれない。かつてロッキー・トンプソン(77)という選手は市長職をこなしながらプレーしていた。彼は90年代にテキサス州トコ市の市長を務めながら、選手として試合にも出場した。レギュラーツアーで果たせなかったツアー優勝の夢を、チャンピオンズツアーでガッツと創意工夫で叶え、3勝を成し遂げた人物だ。本名はヒューだが、映画「ロッキー」の主人公のごとく戦いたい!と登録名を“ロッキー”に。ニッカボッカスタイルで48インチの長尺1Wを振り回し、豪快なゴルフをしていた。
ある日、練習場に彼を訪ねた際の雑談で「ベン・ホーガンと同組だった時、俺はすごいバーディを決めたんだ。そして恒例の腰振りバーディダンスをしたら“いい加減にしろ!”って叱られたことがある」と、いうほど賑やかなキャラクター。市長と両立できるのか聞いたところ「オフには仕事をしている。でも市長っていっても、町は皆の名前を知っているほど小さい。逆に試合で活躍し、町を宣伝し、町興ししてほしいと言われている」とのことだった。
ワトソンはメジャー勝者、トンプソンとは街の規模も違うが、愛する地元に貢献したいという思いは同じ。立候補の際は、熱血トンプソンがひと肌脱いでくれるかもしれない。
■ボールもピンク!2017年をもっとハッピーに
ワトソンといえば「ピンク」も代名詞と言えるだろうか。今年はピン社のピンクドライバーだけでなく、ピンクのボールでプレーする。彼がそのボールの存在を知ったのは、昨年の世界ロングドライブ選手権のテレビ放映を観戦している時だった。ピンクに反応した彼はさっそくメーカーに連絡。中国で開催されたWGC HSBC選手権の時に手元に届いたという。
12月には、そのピンクボールを製造している韓国のボルビック社と使用契約を締結。同社はLPGAの選手にカラーボールを提供し人気を博したメーカーだ。ワトソンは、ピンクはもちろん、同社のライム色やカモフラージュ柄にも興味があるようで、今年の初戦SBSトーナメント・オブ・チャンピオンズではショッキングレッドのボールを使用し、ギャラリーや周りの選手を驚かせた。ピンクにはやはりこだわりがあり「最終日はピンクのボールでプレーすることを定番にしたい」と考えているという。2勝しているマスターズでは「グリーンのボールを使いたい」とも話し、「ボールの色や柄が違うと感覚も微妙に違ってくるので、段階的に移行したい」とのこと。2017年もゴルフ場内外のカラフルな話題でハッピーな1年を送ること、間違いない。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。