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<選手名鑑160>松山英樹

■ ターゲットは“タイガー・ウッズに次ぐ連覇達成”

今大会は1976年、ジャック・ニクラスがゴルフ界のレジェンドたちを讃える大会として創設し、今年は節目の40回目を迎える。ハイグレードな大会にふさわしく、今年から優勝者には世界選手権での優勝と同じ「3年間のシード権」が与えられることになった。

歴代優勝者はトッププロたちが名を連ねるが、不思議なことに連覇を達成しているのはタイガー・ウッズただひとりで、99年から3連覇という怒涛の連勝だった。昨年の今大会で米ツアー初優勝を飾り、日本人初の歴代優勝者として名を連ねた松山英樹には、ぜひ2人目の連覇を目指してほしい。

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松山は2週前に現地で行われたメディアデーに出席し、記者会見の席で「緊張しているが、しっかり練習を積み良い成績を収めたい」と並々ならぬ意欲を示していた。そして連覇の可能性も大いに期待できる。彼のパフォーマンスは、いつ優勝しても不思議ではない高レベルを継続しており、ほとんどの大会で優勝者候補に挙げられるほどの注目を集めている。

ディフェンディングチャンピオンとして挑む今週はいつも以上の期待が寄せられ、王者にふさわしい堂々たるプレーを見せてくれよう。松山のパフォーマンスは、彼を支えるキーパーソンの力に支えられている。彼の躍進とともに彼らの仕事ぶりもツアーで注目を集めはじめている。

■ トップクラスのプロキャディに成長した進藤大典

“チーム松山”は、最高レベルでTeamがWork(機能)している。キャディの進藤大典(33)は、松山の活躍で次々と大舞台を踏み、トップクラスのキャディに成長した。進藤の貢献度は計り知れない。

その典型的な例が、昨年大会で、松山がウィニングパットを決める直前のアドバイスだった。約3メートル、右上からのパーパット。進藤は松山にこう囁いた。「かなり左に切れそうに見えるけど、そんなに切れないよ」。「どうしてわかるの?」と松山。「さっきアダム・スコットが同じところから打つのを見ていたら、そんなに切れなかったから」と。

このひと言で松山は確信をもってクラッチパットを決めることができた。進藤は預言者でもなければ霊能者でもない。プレーオフとなった73ホール目に、72ホール目にスコットが打ったラインが松山のウィニングパットとほぼ同じになるなどわかるはずがない。だが、偶然ではない。進藤はいつも冷静且つ正確にラインを記憶に留め、絶妙のタイミングで情報を提示する。これぞプロの仕事だ。

ツアーキャディには選手と優勝の喜びを分かち合うこと、そして一攫千金という夢がある。昨年の年間王者ビリー・ホーシェルも一昨年の年間王者ヘンリック・ステンソンもキャディに100万ドル(約1億2千万円)のボーナスを出した。タイガー・ウッズの元キャディは1シーズン100万ドルの契約を結んでいたが、コンビを解消した後、ウッズのネガティブな話題を吐露するなど、後味の悪い結末は珍しくなく、夢ではなくお金のために我慢していた?と感じることもあった。

キャディも心技体の総合力が要求される。コースを学び、ヤーデージブックの白紙部分を読み解く力、選手のプレーの傾向、体調、気持ちの状態を理解すること、プレー中は会話する言葉選びまで、細かな配慮が必要だ。

松山とともに真剣勝負に出陣する姿に思わずエールをおくってしまうが、彼の仕事ぶりは他のキャディと一線を画している。日本人ならではの繊細な感性、冷静な対応、和を保つことにも心を配る。彼の人柄も力となり、松山をより強くしていると注目の存在なのだ。劇的初優勝から1年、今週は松山のプレーとともに、進化した進藤の仕事ぶりも必見だ。

■ 闘える選手にまで変えた飯田光輝トレーナー

松山がPGAツアーでプレーを始めた当初、体調や負傷が少し気になっていた。デビュー年となった2013年の2戦目、10月17日、「シュライナーズホスピタルforチルドレンオープン」初日のことだった。スタート前、約10分の練習の最中に腹痛をきたし欠場。初戦の「フライズドットコムオープン」で3位と健闘した後だけに、残念でならなかった。

翌週、マレーシアで開催の「CIMBクラシック」では背中痛。その翌週、中国で開催の「WGC HSBCチャンピオンズ」では2日目に背中、腰痛を訴え棄権。年が明け、2014年の初戦「ソニーオープンinハワイ」では、前日に左手の負傷で欠場した。2月28日、「ザ・ホンダクラシック」2日目、左手首の痛みで「長引かないように大事を取って休みます。前回の左親指のように長引くと大変なので」と再び棄権を選択した。

ツアーに参加しながら負傷を直すのは無理と言わざるを得ない。負傷を抱える選手は少なくなく、それが原因で長期離脱、最悪の場合は復帰が叶わなかった選手をこれまで何人も見てきた。それだけに松山の状態は心配されたが、最近では「痛い」という言葉を口にすることがなくなった。これは大きな変化だ。

松山の安定したプレーは、飯田光輝トレーナー(36)によるコンディショニングの賜物である。一度負傷するとなかなか治らないものだが、飯田トレーナーは、松山がプレーを続行しながら、できる最善の状態へと導いた。のみならず、身体強化メニューも行い、スイングにパワーと安定感をもたらし、松山を負傷しにくい強い身体に変えたのだ。これはかなり稀な成功例である。

今年の「ザ・プレーヤーズ選手権」では、連日30度を超える炎天下で、治療道具をぎっしり詰めたバッグを背中に背負い、ロープの外から見守っていた。帯同トレーナーと転戦する選手は少なくないが、これほどまでに真剣に選手と向き合うことはあまりない。飯田の情熱溢れるバックアップも松山に安心感を与え、好結果をもたらしていると言っても過言ではない。

松山には誰にも負けない情熱がある。その思いに、自身の夢も重ね、支えてくれる頼もしいサポーターたちがいる。メジャー優勝、世界ナンバーワンという夢への道は、志をともにする人たちのストーリーでもある。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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