注目のホール:AT&Tオークスコースの16番
2014年 バレロテキサスオープン
期間:03/27〜03/30 場所:TPCサンアントニオ(テキサス州)
<佐渡充高の選手名鑑 113>ジャスティン・レナード
2014/03/26 10:00
■ 生れも育ちもテキサスの熱い男ジャスティン・レナード
テキサス州はベン・ホーガン、バイロン・ネルソンらのレジェンド生誕の地として知られ多くのメジャー優勝者を輩出してきた。PGAツアー創設当時から毎年試合が開催され、今季同州で開催される4試合のうち、最初の大会が「バレロテキサスオープン」だ。1922年に始まり今年で92年目、テキサス4大会で最も長い歴史を誇る。
1997年「全英オープン」優勝のジャスティン・レナードは、生まれも育ちもテキサス州北部のダラス、同地のテキサス大学卒と生粋のテキサン(テキサス出身)だ。地元の試合は愛州の熱い思いから今大会にほぼ毎年参加し、ツアー通算12勝のうち3勝(2000年、2001年、2007年)を今大会で飾っている。かつてゴルフといえばテキサス、というイメージが強かったが、レナードはテキサス出身選手の最後のメジャー優勝者で、ここ近年は、しばらく静かなムードが続いている。レナードと同じダラス出身、テキサス大学出身の後輩、20歳のジョーダン・スピースの出現で、今年は2人の地元ヒーローズが大会に新たな風を吹き込みそうだ。
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■ 21シーズン連続で奮闘し続けるレナードに拍手を!
レナードは1992年アマチュア最高峰の全米アマ選手権に優勝。対戦のトム・シェアラーを8&7の大差で圧勝。1994年は、全米学生選手権を含む10勝を挙げ、母校の先輩ベン・クレンショーが残す18勝に次ぐ、2番目の記録をマークした。1994年にプロ転向し、アマチュア時代の実績からスポンサー推薦で8試合に出場。その8試合で賞金ランク125位に入り、1995年のシード権を獲得。多くの選手はQT合格を経るが、彼は超ウルトラ飛び級的な快挙でツアーメンバーになった。翌96年には「ビューイックオープン」で初優勝、わずか3年目にメジャーの「全英オープン」を制した。さらに98年には第5のメジャーである「ザ・プレーヤーズ選手権」優勝と、素晴らしいキャリアを積み重ねていった。
デビュー当時、童顔で可愛い雰囲気のレナードも、今年6月には42歳を迎え、ツアー入りして今季で21シーズン目の大ベテランとなる。彼がデビューした頃、石川遼や松山英樹は3歳にも達していない。20年以上の長い年月、体調の変化や好不調の波を乗り越え、歯を食いしばり毎年必ずトップ10に1度は入る活躍を続けてきた。今季もすでにトップ10に2度、1月の「ファーマーズ・インシュランスオープン」でアキュラシー部門で1位になるなどシャープなプレーを見せ、改めてレナードの奮闘に注目し、拍手を贈らずにはいられない。
■ プレーオフに弱いのは先輩クレンショー譲り…?
通算12勝、最後の優勝が2008年の「セントジュードクラシック」で、最初の4勝のうち、3勝が5打差の逆転勝ちという派手な勝ち方をしてきた。しかし、プレーオフには2勝5敗と何故か弱い。特に2004年「全米プロ選手権」、2009年「全英オープン」のプレーオフは惜敗だった。余談だが、テキサス出身の大先輩ベン・クレンショーは「マスターズ」で2勝を挙げているが、8回もプレーオフに加わりながら一度も勝利がなくツアーの七不思議と言われた。さらにこの8戦全敗は、現在もツアー史上最悪の記録となっている。実力がありながら瀬戸際で勝利を譲ってしまう理由が見つからず、「ベンは人が良いから」ということになっているが、これはレナードにも当てはまるかもしれない。
印象に残っているのは27歳で果たした「全英オープン」優勝直後の凱旋帰国スピーチだ。「こんなに早くメジャーに勝てて、これ以上嬉しいことはない。このまま突き進みたいと思う。でも、もし僕が偉そうな言動をしたらその場で殴ってください」。勝つことにこだわりつつ、謙虚に慎み深く生きたい、そんな彼を表す言葉だった。
■ 母親はグリーン上の魔法使い 14年間3パットなし
レナードは身長175センチ、77キロと選手の中では小柄だ。今季も飛距離は平均約274ヤードでランク169位。「飛距離はプレーヤーの体格と比例しない」とゴルフに体格は影響がないと考えてきた。また「身体が大きくなく、飛ばす資質のないことが僕にとって幸いだった。なぜならゴルフは飛ばすゲームではなく、止めるゲームだから」と本質を突いた発言もあった。彼のゴルフはショットの正確性と巧みなパットに尽きる。実は母親ナンシーはパットの名手としてテキサスの女子アマ界で有名なプレーヤーだった。レナードが学生だった頃まで、母は14年近くも3パットしたことがなかった。彼がプロ転向した頃、「(母は)魔法使いのようにパットを決めるんだ。もし、あのセンスが僕にあればメジャーに何勝もできるかもしれない」と、誇り高く評価した。母譲りの名手ぶりで「グリーン上の貴公子」と言われてきたが、最近は頼みのパットが原因で成績もあまり芳しくない。このところは試行錯誤を繰り返しながらパットの感覚を模索し、6年ぶりの優勝に向けて頑張っている。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。
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