悲願のメジャー優勝へ、“きっかけ”を掴みたいジェイソン・デイ
2014年 WGCキャデラック選手権
期間:03/06〜03/09 場所:トランプナショナルドラール(フロリダ州)
<佐渡充高の選手名鑑 110>グレーム・マクドウェル
2014/03/05 10:00
■ G-MacとのマッチプレーはG-Shock級?
“G-Mac”の愛称を持つ北アイルランド出身のグレーム・マクドウェル(34)は、ツアーの中でもとてもフレンドリーな選手の一人だ。選手やメディア、ボランティア、ファンのアンケートによるグッドガイ・ランクでは5位に入るほどの人気だ。インタビューはいつも笑顔でジョークを交えファンを魅了する。
2月の「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」の2回戦で松山英樹を破り、4回戦で敗退したものの、初戦から3日連続の逆転勝ち。マッチの肝を知り尽くした勝負師のプレーは圧巻だった。彼は「直接対決」にめっぽう強い。昨年は4月の「RBCヘリテージ」でウェブ・シンプソンとのプレーオフを制し優勝。5月は前年に決勝で敗れた欧州ツアーの「ボルボワールドマッチプレー選手権」で逆転優勝。身長178センチ、体重78キロの平均的な体格。ビッグヒッターでもないが、技と攻略でしぶとく粘り、食らいつき、気がつけば形勢逆転に成功。対戦相手はG-MacのカウンターパンチにG-Shock!そんなプレーが彼のゴルフなのだ。
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■ マッチに強い理由とは・・・
彼はアイルランド島の北海岸ポートラッシュという小さな港町に生まれた。グリーンキーパーの叔父に勧められ、4歳からゴルフをはじめ、14歳でハンディ4という能力を開花させた。マッチプレーはゴルフ競技の原点であり、英国ではマッチの試合が多かったため、幼い頃から慣れ親しんできた。しかも風雨の激しいタフなリンクスコースで揉まれるなど、育った環境による影響が最も大きいと言える。
もう一つは母国の先輩ダレン・クラーク(45)との出会いだ。少年時代にクラークと9ホールを一緒にプレーする機会があり、その情熱的な人柄、これぞ勝負師という、彼のゴルフは衝撃的だったそうだ。今もなお、クラークのゴルフはマクドウェルの憧れであり原点だという。マクドウェルは母国の大学に進学し工学を学んでいたが、ゴルフへの夢は断ちがたく、渡米してアラバマ大学に転学した。試合での連勝のみならず、大学時代には文武両道に優れ、全米ナンバーワンの学生ゴルファーに授与されるハスキンス賞を受賞。休暇中には帰郷し、アマ試合のビッグタイトルも獲得。タイガー・ウッズやルーク・ドナルドが保持していた学生の平均ストローク1位の記録を塗り替えるなど驚異の活躍で圧倒し、プロ転向の際は大きな話題になった。
■ 「01010001」の8週間
2010年ペブルビーチGLで開催の「全米オープン」で優勝。2012年には「全英オープン」5位とトップランカーとして安定した活躍をみせている。しかし、どんな選手にも好不調の波はあるものの、彼の2013年の波は過去に例がないほど激しかった。4月の「マスターズ」での予選落ちのあと、翌週の「RBCヘリテージ」で優勝。続く「ザ・プレーヤーズ選手権」で再び予選落ちを喫し、翌週は前述の「ボルボワールドマッチプレー選手権」で優勝を飾った。その後、3試合連続で予選落ちした後、再び欧州ツアーの「アルストム・オープン・ド・フランス」で優勝。8試合で3勝、5回の予選落ちを、彼は数字で「01010001」と表現した。予選落ちの悔しさで練習に打ち込み、その成果で勝利を得るという繰り返しだったという。使用ボールの刻印も“00”とシンプル、YesかNoか、好きか嫌いか、何事も中途半端が嫌いな性格とはいえ、ここまで成績にも反映されるとは!?激しすぎるアップ&ダウンに本人もビックリの8週間だった。
■ 昨年はレストラン開業と結婚、今年は父親・・・そしてライダーカップVへ
波乱の8週間の後、秋には米国の拠点、フロリダ州オーランドの自宅近くに160坪のレストラン・バー「Nona Blue」をビストロの会社と共同で開業した。バーはアイルランドの雰囲気でチキンウィングを酒の肴に、彼がこよなく愛するギネス(ビール)を気軽に楽しめ、ワインバーも隣接。「数年前から米国にこんなバーがあったらいいな」という思いがあり、遂にそれを実現させたのだ。10月1日にクリスティン・ステープさんとバハマで挙式。彼女はオーランド在住のインテリアデザイナーで、自宅の改装を依頼し知り合い、レストラン開業も彼女の尽力あってのことだった。8月には女の子が誕生予定で、夫人の5歳になる長女と合わせ、今夏にはマクドウェル家は4人家族となる。
2014年の目標はメジャー2勝目を狙うだけでなく、欧米対抗戦「ライダーカップ」に、弟分のロリー・マキロイと共に出場することだ。得意のマッチプレーで米国選手を撃破し、欧州チームの連覇に貢献、そして仲間と勝利の美酒に酔いしれるという青写真は現実のものとなるのだろうか。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。
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