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<佐渡充高の選手名鑑 87>グラハム・デュレット

■ 惜しい!母国カナダ人50年ぶりの優勝を逃す

RBCカナディアンオープンは、1914年までの開催では11回中10回の大会でカナダ人が優勝を飾っていたが、以降、カナダ人の優勝は1954年のパット・フリッチャーのみと遠ざかっている。2004年の大会で、地元のマイク・ウィアビジェイ・シンとプレーオフにもつれ込んだ時は、カナダ中が沸きに沸いたのだが、プレーオフ3ホール目で、ウィアが池に打ち込み、惜敗という結果で大会は幕を閉じた。ウィア以降、ツアーでのカナダ人の優勝争いさえなく、期待は毎年持ち越されている。カナダのゴルフファンは、母国出身の選手の優勝をずっと待ち望んでいるのだ。

■ カナダの成長株、ビッグヒッターのグラハム・デュレット

ウィアに続く、有力なカナダ人選手がなかなか出現しなかったが、最近めきめきと成長している選手が現れた。それがグラハム・デュレットである。1982年1月22日、カナダ、サスカチェワン州に生まれたデュレットは、大学は米国アイダホ州のボイシ州立大学体育学部を卒業。身長180センチ、体重75キロと体格はツアーで平均的だが、持ち前の飛距離が自慢だ。高校まで、アイスホッケーとバレーボールで鍛えた脚力と腕力で、今季の平均飛距離は約301ヤードでランク10位。さらに今季はパーオン率が72%強でランク1位、スクランブリング(寄せワン)は14位。この分野に関してはヒューストン・オープンで87%を超え、1位になるなどショットの正確性やショートゲームのクオリティが急上昇した。今季は優勝争いにも度々加わり、4度のトップ10フィニッシュと好調だ。特に6月のトラベラーズ選手権では、1打プレーオフに届かずの惜敗。ショット、パットが噛み合ってくれば母国の期待であるツアー優勝を十分に狙える選手である。

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■ 順風満帆のキャリアもホッケーの古傷再発で中断

デュレットは、学生時代から実力を発揮したエリート選手だった。大学時代は10勝の実績を誇り、2006年にプロ転向を果たすと、翌2007年にはカナディアンツアーの新人王に輝いた。2008年にはワールドカップにカナダ代表として初参加。2009年にはカナディアンツアーの賞金王戴冠に加え、PGAツアーのQT合格と、順風満帆に2010年ルーキーシーズンを迎えた。同年4月のシェル・ヒューストンオープンでは3位タイに入るなど、さらなる期待を抱かせる1年目を送った。しかし2年目の序盤から異変が現れはじめる。ジュニア時代にホッケーで痛めた腰の古傷が痛み出し、股関節の痛みと相まって2試合しかプレーできずにシーズンを終えた。神経に触れている骨を削るという手術でリハビリが続き、そのシーズンを棒に振ることとなったのだ。長い長い休養とリハビリを経て、昨年は公傷制度でプレーし、3度のトップ10フィニッシュと活躍。今季ようやく「体調は万全」と実力を発揮できる体調に戻った。

■ パターヘッドに愛妻の名

デュレットのパターヘッドには、妻であるルビー夫人の愛称“The Rubes”の刻印がある。プレー中で離れていても愛する妻は近くにいてほしい、そんな願いがこめられている。二人の出会いは銀行だった。彼女はデュレットが通う大学の校門を出て、道を渡ったところにある銀行の窓口業務を担当していた。毎月、奨学金の小切手を換金しに行くと、彼女がいつも対応してくれたことから交際に発展した。アマチュア時代には、出場していた試合で不調でも、彼女が応援に駆けつけると一変、幸運の女神に助けられ好成績を残していった。パターに刻まれた愛妻の名を見る度に、苦しい時こそ笑顔で良いプレーを、と励まされ初優勝に向け奮闘している。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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2013年 RBCカナディアンオープン



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