S.ストリッカーが23アンダーで開幕戦を制す!
2012年 ヒュンダイトーナメント・オブ・チャンピオンズ
期間:01/06〜01/09 場所:プランテーションコースatカパルア(ハワイ州)
佐渡充高が簡単解説!初めてのPGAツアー【第十九回】
今シーズンの注目選手を教えてください。
まず、名前が挙がるのはロリー・マキロイですね。2010年はPGAツアーでプレーをし、2011年シーズンは欧州ツアーを中心に出場していました。そして2012年は再びPGAツアーに戻ってくるでしょう。やはり4大メジャー大会のうち3つはアメリカで開催されますので、そのアメリカで数多くプレーしておいたほうが有利になりますからね。彼はすでに全米オープンのタイトルを手にしていますし、次の目標は2つ目、3つ目のメジャータイトル、その先には年間グランドスラムが目標になってくると思いますから、早いうちにアメリカに渡って数多くプレーして、その地に慣れて結果につなげようという思いもあると思いますよ。今回は本当にやる気があるので、ひとつメジャーを勝ったことで、次のメジャーも見えてきています。おそらく相当の活躍が期待できそうですね。
彼はマスターズでした失敗を、次の全米オープンで活かしたので本当に強くなったんだと思います。メジャータイトル1つだけで終わってしまう選手もいますが、マキロイには世界ランク首位に立つ可能性も秘めていると思います。小柄な体格(身長175cmくらい)から生み出されるパワーは力強く、体幹がしっかりとしていて飛距離も出ます。さらにショートゲームでは鋭い勘を発揮します。かつてのセベ・バレステロスを思わせるような器用さ、勘を持ち合わせています。またルーク・ドナルドのような手堅く、そつなく寄せてしまうというよりも、時にはミスをしますが、“ここぞと言うとき”“これは寄らないな”という時も、彼の持っている感性みたいなもので寄せてしまう、そんなところが魅力的でもあり、目が離せませんね。
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もう1人はバド・コーリーという選手です。彼はアラバマ大学を3年で中退して、2011年全米オープンの時にプロ転向を果たしました。当時PGAツアーメンバーにはなっていなかったのですが、同大会では予選を突破し、その後も7試合中6試合、予選突破を果たしました。さらにフライズ・ドットコム・オープンでは自己ベストの単独3位フィニッシュで年間約73万ドルを獲得し、賞金ランク125位以内相当の賞金を稼いだので、今シーズンからルーキーとして活躍します。コーリーは21歳です。彼の母は学校で教師をしているのですが、コーリー自身はホームスクールで育ちました。大学ではゴルフ部の奨学金で入学し、寮生活が始まりました。父、祖父は軍人(海軍の潜水部隊)で、自由と平和ために身をささげて戦い、絶対に負けは許されないという家庭環境の中でコーリーは育ちました。一見おとなしそうに見えますが、彼は「絶対に負けられない」という気持ちで戦ってきましたし、これからもその気持ちで1試合、1試合を戦っていくと思いますね。だから数少ない試合で125位以内に入ったんだと思います。大学を卒業、または中退してそのまま翌年のシード権を得た人は、過去にタイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン、ライアン・ムーア、ゲーリー・ホールバーグの4人しかいません。コーリーがどのレベルまで上りつめるかは分かりませんが、今の時点ではその威名に並ぶくらい期待できる選手ですね。
これからは20代がゴルフ界を席巻していくのでしょうか?
20代の若い選手が並み居るプロに混じって、なぜこれだけ戦えるのかという質問にトム・ワトソンはこう答えています。「彼らのステータスはアマチュアだけど、やっていることはプロ以上だ」と。大学の試合は年間30~40試合あり、開催コースは名門コースばかりです。チャレンジングでスコアがまとまらないような難コースで試合を行っているんです。スポーツ心理学も学び、コーチもいる、トレーニング環境も整っているので、やっていることは、なんらプロとの差はないのです。ツアープロはそれを仕事としているので、練習もするし、体も鍛えるし、メンタルも鍛えます。内容をみてもほぼ同様です。ある程度年齢とか、経験が必要だと言いますが、経験は既に備わっているんです。かつてプロの世界に入らないとできなかった経験が、今の若い世代の選手はすでに経験できており、より体にしみついているんだと思います。精神面の強さやメンタル的なものは年齢に必ずしも比例するものではなくて、あれだけ周りに強豪がそろい、アマチュア時代から同じレベルでプレーをするということはものすごい経験ですし。それを続けてきているから、例えばこれまでは20年かかってやってきたことを、彼らはその半分、もしくはもっと短い時間で体得してしまっているのではないかと思うほどです。ネイションワイドツアー、Qスクールからもどんどん強い若手選手が出てくると思いますね。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。