勝利の鍵を握るポイントをクラブ視点で分析(Getty Images)

米国選抜と欧州選抜の対抗戦「ライダーカップ」は、ゴルフにおいて最も精査される大会と言えるだろう。開幕を待つ日々は、キャプテン推薦やペアリング、ユニフォームや髪型までが、ファンやメディアにとって分析や調査のネタとなる。

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前回の欧州選抜編に続き、1993年以来となる欧州での勝利を目指す米国選抜にとって鍵を握るであろうクラブを列挙してみた。

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• 「ライダーカップ」で欧州選抜にとって鍵となる5本のクラブ

1. ジャスティン・トーマスの長尺ドライバー

長尺ドライバーの活躍シーンは見られるか（GolfWRX、PGATOUR）

クラブ情報： 45.625インチのタイトリスト TSR3（10度） + グラファイトデザインVF-5Xシャフト

ここ数年にわたり、ジャスティン・トーマスは卓越したアイアンプレーを輝かせる機会拡大のためであれば、ティショットの飛距離よりも精度向上に重きを置くと述べてきた。

トーマスは「全米プロゴルフ選手権」制覇を含むPGAツアー5勝を挙げ、フェデックスカップ制覇を成し遂げた2017年のシーズンは、ツアーにおけるドライビングディスタンスで8位にランクインした。しかしながら、今季はこのスタッツを37位に落としている。

とはいえ、潮目は変わるかもしれない。「フォーティネット選手権」にて、トーマスは長尺ドライバーの使用が即座に飛距離アップにつながることを明かした。第1ラウンドではこのクラブを封印し、その日の飛距離のランキングを71位としたが、その後の3ラウンドでは長尺ドライバーを投入。同ランクで3位に入り5位フィニッシュへとつなげた。

ライダーカップでこのクラブを使用するかはまだ明らかでない。深いラフを理由にベンチへ下がるかもしれないが、攻撃的なプレーへの見返りが見込めるマッチプレーでは、便利な武器となる可能性もあるだろう。それは、バーディが必須のフォアボールでは、特に言えることである。

トーマスは、フォーティネット選手権の会見で、この長尺クラブがスタメンの座を得ることはないが、コースやコンディション次第では時としてオプションになるだろうと述べている。しかし、かなり早い段階で実戦投入に踏み切った事実を鑑みると、当初の見込みよりも使われる頻度は高くなるかもしれない。

ドライバーについてトーマスは、次のように述べている。「長めのドライバーのオプションが欲しかったんだ。毎週それを持って転戦しつつ、1年に5回、あるいは1回しか使わないようなドライバーが欲しかった。3/4インチ長いだけなのだけれど、クラブスピードは時速2、3マイル上がるし、（ボール初速は）時速3から5マイルアップするから、だいぶ先まで飛ぶんだ。強振して、高弾道の強いショットを打つと15yd飛距離が伸びる。これは重宝するよね」

トーマスは今年、ロフト角10度で44.875インチのタイトリストTSR3ドライバー（シャフトは三菱ケミカル ディアマナZF 60TX）を使用してきた。長尺ドライバーのヘッドは同じタイトリストTSR3ながら、シャフトはグラファイトデザインのツアーAD VF 5Xとなっている。

• ライダーカップへ秘策？ トーマスが“長尺”1Wをテスト

2. サム・バーンズのパター

サム・バーンズが使用するプロトタイプパター（GolfWRX、PGATOUR）

クラブ情報：オデッセイNo.7プロトタイプ

バーンズはプロデビューを果たした17年「サンダーソンファーム選手権」以来、オデッセイ オーワークスブラック #7Sパターを使用してきた。PGAツアーで挙げた全5勝の優勝パターとなっており、ストローク・ゲインド・パッティング（パットのスコア貢献度）で5シーズン連続してトップ30入り。うち3シーズンは連続してトップ10入りを果たし、23年シーズンの同スタッツは3位となっている。

しかし、バーンズは8月のプレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」を前に、パターを新しいオデッセイNo.7プロトタイプに変更するという驚きの動きを見せた。この大会ではグリーン上で2.6ストロークを稼ぎ、出場30選手中のストローク・ゲインド・パッティングで6位に入った。

単一大会という小さなサンプル数において、パッティングはしばしば成功と失敗の分水嶺となる。特にライダーカップにあてはまることであり、1打のパットが瞬く間に敵の士気をくじき、一気に形勢を逆転させることがある。バーンズがローマでどちらのパターを使用するにせよ、チームにとって鍵となる役割を果たす公算が高そうだ。

3. パトリック・カントレーのドライバー

長く愛用するドライバーとともに対抗戦へ(Getty Images)

クラブ情報： タイトリストTS3（9.5度を8.75度に調整）

パトリック・カントレーはPGAツアーきってのドライバーの名手である。ツアーにおけるトータルドライビングで首位に立っているほか、ストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティ（ティショットのスコア貢献度）で5位、フェアウェイキープ率で15位にランクインしている。飛距離と精度の両方で平均以上の力強いコンビネーションを持っており、平均飛距離も35位につけている。

選手の多くが素早く最新テクノロジーへ飛び乗る一方、カントレーはギアの変更には慎重だ。特にドライバーは、いまだに2018年リリースのタイトリストTS3ドライバーを使用している。

ことし用具契約フリーとなったカントレーは、「概して、僕はあまり試打好きではないんだ」と述べた。好みのクラブに鞍替えできる状況にありながら、これだけ長く同じドライバーを使い続けているという事実は、彼がこのクラブに感じている自信の裏付けといえるだろう。

マルコシモーネではドライバーの精度が何より重要となるため、カントレーは安定して飛距離の出て曲がらないティショットのアドバンテージを存分に生かすことになるだろう。

4. リッキー・ファウラーのアイアン

昨秋から使用するキャビティバックモデル（GolfWRX、PGATOUR）

クラブ情報： コブラ キングツアー アイアン（4番～PW）

リッキー・ファウラーの新しいパターは、23年における最大のギア関連ニュースだった。カウンターバランスのオデッセイ VERSA JAILBIRD（ジェイルバード） パターの火付け役であり、「全米オープン」王者となった今年2勝のウィンダム・クラークのインスピレーション源にもなった。

ファウラーは今季、アイアンも替えている。キャリアの大半を通じてブレードアイアンを使用してきたが、今季初頭にキャビティバックのコブラ キングツアー アイアンに変更。ストローク・ゲインド・アプローチ・ザ・グリーン（グリーンを狙ったショットのスコア貢献度）で9位、175～200ydの平均プロキシミティ（ボールからピンまでの平均距離）で14位に入ったことから、この変更が成功だったことが証明された。

ファウラーは昨秋、次のように述べている。「このアイアンは、僕が使い慣れていたものよりも明らかに大きめだね。寛容性が高くなるのは分かっていたけれど、数字に対する一貫性も必要としていたんだ。コンタクトの具合によって、スピン量が多くなったり少なくなったりしないようにね」

「芯を少し外したミスヒットや、フェースの下側、あるいはヒールからトウへのバイアスがかなり安定している。特に溝1本か2本分下のミスが、そこまでショートしないんだ。ここの数ヤードの差は、色々なところで大きな差となり得るからね」

「全体的に寛容性が高くなったけれど、同時に弾道やスピン量に関しては僕の欲する特性を維持している。常に（ブレードの）見た目と打感を愛してきたけれど、僕はこのアイアンでも引き続き、素晴らしい見た目と打感が得られるんだ」

• ファウラーがコブラ キングの未公開アイアンを投入

5. スコッティ・シェフラーのパター

米国選抜のエースが投入するのはどのパター？（GolfWRX、PGATOUR）

クラブ情報： スコッティキャメロン タイムレス ツアータイプ、またはテーラーメイド スパイダー ツアー プロトタイプ

シェフラーはボールストライキングに関して歴史的なシーズンを送った。今季PGAツアーにおいてストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティとアプローチ・ザ・グリーンの両方でトップに君臨しており、このままシーズンを終えると両方のスタッツで1位にランクした史上初の選手となる。

今季のティからグリーンにかけた高いパフォーマンスは、「ザ・プレーヤーズ」制覇を含む2勝に加え、出場23大会で17度のトップ10入りをもたらしてきた。しかし、ストローク・ゲインド・パッティングとなるとランキングは151位まで落ちる。驚異的なボールストライキングの数字と比較すると、この数字の酷さはかなり目立ってしまう。

シェフラーは解決策を模索するなか、今年は何度かパターの変更を行った。22年「WMフェニックスオープン」でPGAツアー初優勝を挙げて以来、大体において、スコッティキャメロン スペシャルセレクト タイムレス ツアータイプGSSブレードパターを使用してきた。「マスターズ」とザ・プレーヤーズを含むPGAツアー全6勝を挙げた際にバッグに収まっていたパターだ。

昨秋に南カリフォルニアで開催された「CJカップ」では、スコッティキャメロンのマレットへ乗り換えた。全米オープンではワイドボディのスコッティキャメロンブレード型パター、メンフィスで開催されたプレーオフシリーズ初戦「フェデックス セントジュード選手権」ではカスタムのテーラーメイド スパイダー ツアー“SSプロト”に変更。しかし、この実験は長続きせず、ツアー選手権では再びブレード型のスコッティキャメロン タイムレス ツアータイプへと戻している。

シェフラーは、フェデックス セントジュード選手権の会場でスパイダーパターについて言及。「テーラーメイドの担当者たちが、このパターに大きな労力を注いでくれた。これまで作られてきた多くのスパイダーとは異なり、前方に重量があるので、僕の好きなブレード型のような感じがする。上部には視認できる要素が多いので、目標に対して構えやすくもなっているんだ。今年は、良いパットを打ってエッジまで行きながらカップインし切らなかったことが何度もあったように思う」と述べている。

シェフラーが1カ月の休暇を経て、どのパターをバッグに入れてローマへ来るかは、誰もが興味を抱くトピックである。世界ナンバーワンの選手である彼のパッティングパフォーマンスは、米国選抜の勝敗の鍵を握ることになるだろう。

（協力/ GolfWRX, PGATOUR.com）

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