石川遼、練習ラウンドで封印したクラブとは?
ガルシアよ、スコットにアドバイスを求めてみてはいかが?
ザ・プレーヤーズ選手権での最終2ホールは、ついに優勝者が決まる盛り上がりを見せた一方、セルヒオ・ガルシア(スペイン)は、3度も池に打ち込んでしまっていた。
頭に血が上ったり、後遺症が残るような気の遠くなる状況と向き合いながら、この大いなる失望の経験は、ガルシアに不屈の精神を与えることだろう。ガルシアは、17番ホールで打ち直しの球を打つとき、まるで「どこか遠くに行きませんか?」というサウスウエスト航空のコマーシャルを彷彿させるような状況になってしまっていた。
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このガルシアの最終ホールでの不調こそが、アダム・スコット(オーストラリア)にアドバイスを求めようとするかもしれない理由だ。スコットは、全英オープンでの最後の4ホールでボギーをたたいてしまった後、同じような状況に直面していた。多くの人々は、スコットがメジャー大会で勝つことが出来るか疑問を呈し、スコットが次の大会に向けてどう復活してくるか懐疑的だった。
ただ、今はもう誰もスコットに対してそんなことを思う人はいない。彼は、4月にマスターズで優勝し、後遺症や心的トラウマの疑問を一蹴した。素晴らしいパフォーマンスによって、スコットは新たな頂点に立ったのだ。ガルシアが、最終日の17番、18番で池に打ち込むショットによって運命付けられた一方、スコットはすでにオーストラリアの国民的ヒーローとして、まるで何でも出来るかのような羨望の眼差しを受けていた。
ガルシアのキャリアは、同じような上昇曲線をたどることが出来るかもしれない。彼はまるで特別なケアが必要なのでは、というような終盤のプレーで日曜日にコースを去った。 現在33歳のガルシアには、タイガー・ウッズ(アメリカ)とこれからも競い合いながら、メジャー大会を制覇する為の時間は十分に残っている。しかしウッズは今年、すでに4大会で優勝と、コースを支配する強さを取り戻してきた。ガルシアは競争の中で自分自身を見出すことで、次の大会では自信を持ってウッズを迎え撃つことができるだろう。
ガルシアが、今週も優勝争いに加われれるようなゴルフができれば、今週の大会は、より一層魅力的な大会になることは間違いない。
もしガルシアが、引き続き2013年の残りの大会に出場するのであれば、ゴルフはもっと面白くなるだろう。その戦いに注目しようではないか。ライバル同士の戦いは、スポーツをより面白くする。そして、ガルシアとウッズこそが、正真正銘のライバルなのだ。ウッズとガルシアが、土曜日にペアでラウンドしている姿は注目せざるを得ず、ソーシャルメディア上でも大いに賑わいが見られた。フレンドリーな雑談も、アイコンタクトもほとんどない二人の間の緊張感は、ゴルフコースからリビングにいる視聴者に伝わってきた。きっとガルシアは、ウッズとペアで回りたくはなかっただろうが、実現するとファンは注視し、あれやこれやとそれについての話題が飛び交い、様々なメディアも間違いなく2人の様子を分析するのが大好きなのだ。
ザ・プレーヤーズ選手権の優勝に手の届くところにいたガルシアは、17番ホールで起こったことについて自分を責めつつも、受け入れようとしているように見えた。
「あのホールは、いつも得意のホールだったんだ。しかし今日はそうはいかなかった。それが結果であり、ホールで起こりうることだ。起こったことは受け入れるよ」と、ガルシアは振り返った。
ガルシアが、優勝争いに身を置き続けるべく大会に出場していることに疑いの余地はない。彼のパッティングストロークはザ・プレーヤーズ選手権でも本領を発揮しているように見え、最後のゲーム運びはほとんど全く疑問視されていない。素晴らしいドライバーショット、創造的なショートゲーム、どんなコースやどんな条件でも戦える点。ガルシアは印象的な特徴を沢山持っているアスリートだ。1999年のザ・ツアー選手権で表舞台に颯爽と現れて以来、世界を股にかけて24回の優勝を誇り、ライダーカップでヨーロッパのスターとしてその地位を確立してきた。
メジャー大会での優勝は、ガルシアのキャリアで唯一欠けている“ラストピース”だ。これはマスターズで優勝する前のスコットも、同様の状況だった。きっとスコットとガルシアの間の、ありのままの会話を盗み聞きしたら楽しいことだろう。ゴルフの精神的な面は、多くの場合、最もチャレンジングな面とも言える。昨年の全英オープンでの失望後、スコットは厳しい道に直面し、その失望は次のチャンスを得るまで 断ち切ることが困難なものだった。スコットがどれだけ、2013年のスタートに向けて闘志を燃やしていたか、想像してみてほしい。そして、オーガスタの土曜の夜、うまく行くと思い続けていた彼の姿を想像してほしい。そして、日曜の午後、彼はついに優勝を掴むことができたのだ。
スコットは、全英オープンで優勝のチャンスを逃しても壊れたりはしなかった。彼はその経験で強くなった。ガルシアは同様に、ザ・プレーヤーズ選手権で優勝を逃した過去は取り返せなくても、まだまだ2013年にできることは沢山あるのだ。
ガルシアがどう前に進み、どんな行動を起こすのかは、非常に興味の沸くポイントだ。彼は、結果が出ずに苦しんでいた2010年に、休息が必要と感じ、ゴルフから少し距離を置いたことがあった。しかしこれは、休暇のための時間ではない。すでに我々も楽しみにしている、約一ヶ月後のメリオンでの全米オープンはまさに、ゴルファーがコンディションをピークに持って行こうとあの手この手で準備をして挑む、大きな大会だ。
ガルシアは例年、夏に向けて調子を上げてくる兆候がある。彼は2013年に4度トップ10入りしている。その時はどうやら、信頼のおけるパッティングストロークを見つけたようだ。 彼のザ・プレーヤーズ選手権での72ホールほとんど全ては、傑出した出来だった。70ホールまで、ガルシアは優勝に必要とされる正しい戦いをしていた。最後の2ホールにとらわれることなく、そこまでの70ホールの結果を、彼は心の拠り所とすべきだろう。
ガルシアよりちょうど1年年下のスコットは、昨年の全英オープン後の戦いを経て、今年のマスターズで優勝するための自信を手に入れた。ガルシアがメジャー大会に参戦する初めてのシーズンで、誰が19歳の彼の大活躍を予測しただろう? 複数のメジャー大会で優勝することは簡単だということを言い切れるだろうか?
米国ツアーのゴルファー達は、コース上では激しいプレーで争い合っているライバルだが、彼らは絆を共有し、お互いによく助言を与え合っている。だから、次にガルシアがスコットと顔を合わせる機会があれば、ガルシアは貴重な経験を体験しているスコットに、気軽に声を掛けるといいだろう。「ランチに行かないかい?オレのおごりで」と。