パトリック・リードのプロフィール
2018年 マスターズ
期間:04/05〜04/08 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
すべては勝つための試練 “自分を信じた”リードがマスターズ初制覇
◇メジャー第1戦◇マスターズ 最終日(8日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7435ヤード(パー72)
日曜日の朝、パトリック・リードは午後2時40分のスタートを控えて、日課のゴルフ中継を眺めていた。「解説者たちは、みんなロリー(マキロイ)が勝つだろうと予想していた。自分とノタ(・ビゲイ)を除いてはね」。
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キャリアグランドスラムを目指すマキロイとの最終組。1番ティに現れた2人だが、声援は3打差で首位に立つリードよりも、マキロイへの方が大きかった。「誰も僕が勝つとは思っていなかった。家族と僕は、勝つ必要がある、自分は勝てると思っていた。(みんなの予想で)プレッシャーが軽くなったよ」と振り返った。
それでも、1番は右の林からパーセーブしたマキロイに対し、リードは左の林からボギーとし、2人の差は2打になった。
序盤はリードとマキロイの一騎打ち。だが、マキロイがじりじりとスコアを落とし、一方でリーダーボードを駆け上がってきたのは、最終組の4組前を回るジョーダン・スピース。前半を5アンダーで折り返して通算10アンダーとし、さらにバーディを重ねていった。
12番、13番、15番でバーディ。さらに16番で9mのバーディパットを沈めると、スピースはキャディのマイケル・グレラーを見て「冗談だろ!」と気合いの叫び声を上げる。この日9つ目のバーディで、スピースはついにリードに並ぶ通算14アンダーに浮上した。
「初めてメジャー優勝するのは、楽じゃないことはわかっていた」とリードは言う。「ドッグファイトになることは分かっていた」。
14番でリードがバーディを決めて通算15アンダー。「マスターズ」の18ホール最少スコア「63」の記録更新も見えたスピースだったが、最終18番でティショットを左の木に当てボギーフィニッシュ。この日「64」で通算13アンダーとして後続を待った。
刺客はスピースだけではない。最終組の1組前を回るリッキー・ファウラーが、18番でバーディを奪って通算14アンダーでホールアウト。その地鳴りのような大歓声は17番のリードの耳にも届いていた。
「ジョン(ラーム)と同組なのは分かっていたけど、あれはリッキーに違いないと思ったよ」とリード。テレビ中継のアナウンサーは「マスターズでは、ときにリーダーボードは必要ない」と粋なコメントで状況を説明する。
パーオンを逃した17番だったが、1.5mのパーパットを沈めて「1アップで最終ホール」。18番では、2打目をピン上7mにつけて「たぶん、コースの中でもっとも速いパット」。だが、リードはそれらの試練も「自分が初めてメジャー大会を勝つための1つ1つのテスト」だと受け止めていた。
ウィニングパットは1.2m。リードは多くの少年たちと同じように、子どものころから“この”パットを打ってきた。「このパットを沈めたらグリーンジャケット!これを決めたらマスターズに勝つ!」その瞬間がついに目の前で実現した。
「たぶん、きょうのラウンド以上に精神的にタフなゴルフはないと思う」と振り返ったリード。昨年覇者のセルヒオ・ガルシアにグリーンジャケットを着せてもらうと、「ふーっ」と大きく息を吐いた。
2015年のジョーダン・スピース、16年のダニー・ウィレット、17年のセルヒオ・ガルシア、そして18年のパトリック・リード。4年連続でメジャー大会初優勝者が「マスターズ」で誕生した。(ジョージア州オーガスタ/今岡涼太)