キレそうでキレない岩田寛「ぼくは幸せ者です」
日本勢初のWGC制覇へ1打差!岩田寛「短気で日本では有名です」
未完の大器にビッグチャンスが訪れた。中国のシェシャンインターナショナルGCで開催中の「WGC HSBCチャンピオンズ」。6アンダーの3位タイで3日目を迎えた岩田寛は6バーディ、2ボギーの「68」とスコアを伸ばし、通算10アンダー。単独首位を走るグレーム・マクドウェル(北アイルランド)に1打差に迫って最終日を迎えることになった。
上位4人のうち、3人はメジャーチャンピオンだ。ここは世界6大ツアーのトップ選手が集結する世界選手権シリーズ。漢字と英語が列挙された豪華な顔ぶれのリーダーボードを見上げても、岩田は落ち着き払っていた。「この漢字で、何でこんな風に読むんだろう…」―。4大メジャーに次ぐビッグタイトル。日本勢初の戴冠という快挙が、手の届くところにあるとは思えぬ冷静ぶりだ。
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トップと4打差、最終組のひとつ前の組。絶好のポジションで雨のムービングデーに出ると、序盤2番(パー5)で3Iでの2打目を池に入れ、ボギーを叩いた。続く3番ではバーディパットがカップの縁でクルリ。たまり始めたフラストレーションはしかし、すぐに打ち消した。
4番、12mのラインを読み切って最初のバーディ。5mのチャンスを活かした6番からは2連続を決めた。9番では3mを沈めてパーを拾うなど粘り強さも健在で、バックナインは3バーディ。最終18番ではカラーからパターでねじ込み、どよめきで締めくくった。
ホールアウトすると待ち構えていたのは各国のメディア。好位置にも変わらない表情に「もっと興奮していいのでは?」という質問が飛んだ。即座に苦笑いで「昔からこんな感じなんで。見ている人は面白くないかもしれないですけど…」と切り返し。「僕は一打、一打、大切に。短気なんで。ずっと我慢することを今年ずっとやり続けてきた。明日もそれをやるだけです。本当に短気?そうですよ。日本では有名だと思います」。シャイで寡黙。33歳の等身大の姿で“世界デビュー”を果たした。
年末には米ツアー下部ウェブドットコムツアーの最終予選会を受験予定だが、日本勢5人目の米ツアー制覇は、米レギュラーツアーのシード獲得にも直結する。それも「上がり3ホールで考えます」と今は素知らぬ顔。9月に悲願の国内ツアー初優勝を遂げた男が、翼を広げるときが来た。(中国・上海/桂川洋一)