ニュース

米国男子の最新ゴルフニュースをお届け

「僕は逃げていた」キャリアをむしばんだ?世界2位/松山英樹2023年末インタビュー(2)

2023年は松山英樹にとって苦悶の一年と言えた。PGAツアーに本格参戦して10年目。2014年から昨年まで続けてきたシーズン最終戦「ツアー選手権」進出を逃し、継続中の選手としては最長の9年連続で記録が途絶えた。第一線を走ってきた31歳に今、何が起こっているのか。人知れず抱えていた「振れない、飛ばない」悩み。インタビュー第2回(全3回)は飛距離ダウンの別の原因にもなった故障と、そのスイングについて語った。(聞き手・構成/桂川洋一)

30代を迎えたカラダ

PGAツアーで10年間を過ごし、「コントロールすることばかりを覚えて」振る力が落ちたと松山は言う。「ボールが飛ばない」と思って長い番手で力を抑えて打つケースが多くなり、飛距離ダウンの悪循環に陥った。しかしながら、ここ数年の肉体的な故障も飛ばなくなった理由に挙がる。

<< 下に続く >>

「けがの影響は間違いなくある。やっぱり首をけがしてから飛距離がちょっとずつ落ち始めた」。朝、痛みで起き上がれないほどひどかったのは昨年3月。それからは日々変わる患部の痛みと付き合い、トレーニングで以前と同じだけの負荷をかけられない時間が続いた。

ただ、けがと向き合う過程で自らに“甘え”があったとも感じている。

「試合(当日)の朝のウォーミングアップも、できないメニューが意外とあった。だから飛ばなくなるのも、そりゃそうだよねと思うけれど、僕はしばらく、そう感じることから逃げていた。『まだ落ちてない、まだ落ちてない』と逃げていた。トレーニング、練習をしたい、練習をしなくちゃいけない。でも、できる体力はあっても、気力がない時があった。それは体力がないということ。今までやってきたスタイルもある。練習にどう変化を、工夫を加えるか、分からなくなっていた」

身体を鍛えたいが、痛みが出るかもしれない。負のスパイラルはコースの外にもあった。

けがとスイングの問題点

ラウンド中だけでなく、その前後でも苦悶の表情を作らせた首の痛み。松山はそれが“過去の”スイングに起因すると考えている。上半身が勢いよく左方向に旋回する中で、インパクトで顔と目線が地面から離れるのが少し遅いのが松山の特徴。最大限ヘッドを走らせるために「頭が残っている」と言えば聞こえはいいが、その“ねじれ”が大き過ぎることで首に負担がかかっていた。

「いろんな人にスイングを見てもらうと、2013年頃のものが『良いスイング。首への負担も少ないよね』と言われることが多い。インパクトで頭も右側(飛球線後方)を向かなかった。当時は今よりも飛ばなかったけれど、距離のコントロールにも、方向性にも自信があった。そう考えると、自分の目指すスイングってやっぱりそこなのかなと。もちろん、歳をとって身体も変わっているから『できないかもしれない』とも考えるけれど、あの感覚で振れれば(首への)負担も少ない」

松山は2021年「マスターズ」で勝つ数年前、米国の有名コーチにも同じ助言を受けている。

「ブッチ・ハーモン(かつてタイガー・ウッズらを指導)のところに話を聞きに行って、やっぱり『もっと左を向け』と言われたこともあった。でも、それは自然にできないといけない。意識的にやるのは難しい」

そもそも、松山は「頭を残す意識は元々ない」と言う。「でも、“勝手に残っちゃうようなスイング”になった。ひどくなったのは2016年、17年くらいだと思う。なぜ? 身体が強くなって、ああいうふうにできちゃうようになってしまったからじゃないですか。ただ、自分でも良いスイングだなと思うのはやっぱり2013年から15年頃なんです。結果で言えば、2016年の終わりから17年が一番、勝っていた時なので、どちらが正解かと言われたら分かんないですけど…。ただ、16年、17年は(好調だった)パッティングありきの成績だったので。ショットは僕の中では自信を持って打てていたわけではなかった」

2016―17年シーズンはPGAツアーで3勝。うち2勝は世界選手権シリーズ(WGC)のタイトルで、期間中に世界ランキングはキャリア最高の2位まで浮上した。だが当時、松山が言う「悪いスイング」でスコアを作ったのは学生時代からの持ち球だったドローボールとは逆の、フェードボール。「その頃は逃げるような(フェード主体の)ショットを多く選んで、自信を持って打てないまま、もっと悪いスイングになっていった」。シーズンの戦績が良かった半面、身体への代償は大きかったのかもしれない。

ドローを基準にしたい

「2016、17年はフェードで良い結果が出ていたから『それでイイじゃん』という考え方もある」と認める。だが、ここ数年、特にマスターズを勝つ直前から質の良いドローボールにこだわってきたのは、今ある肉体的な不安を取り除くためではない。「僕の場合はフェードをメインに据えると、ドローが打てなくなる、イメージすら消えてしまうと知っている」とスコアメークを念頭に置いてのことだ。

「試合ではフェードを打たなきゃいけない状況が必ず来る。だから、フェードを打ち続けるのもラクかもしれない。でも、それをラクだと感じていると、本当は良くないと思っている。自分はドローをしっかり打ててこそ、フェードの狙い打ちや、距離を落とすショットもしっかり打てるタイプ。ドローという基準がしっかりしていないのに、フェードに頼っていてばかりでは(長い目で見て)意味がない。まず良いドローを意識せずに打てる自信をつかまないといけない」

松山の場合、ドロー主体で必要に応じてフェードを打つスタイルはゲームが安定するが、その逆は難しいのだという。「やっぱり自分ではドローをメインにしたい。振り返ってみると、勝った試合は(フェード主体でも)ほとんど良いドローも打てている時。マスターズしかり、ZOZOチャンピオンシップ(21年)やソニーオープン(22年)も…。ファイヤーストーン(16年WGCブリヂストン招待)もどっちかというとドローだった。WMフェニックスオープン(16&17年)もそう。(2位に7打差をつけた16年)WGC HSBCチャンピオンズはどっちもうまくいった」

松山が求めるドローボール主体のゴルフ。それは今、身体的にも、プレースタイル的にも取り組むべきこととして合致している。

関連リンク



あなたにおすすめ


特集

宮本卓×GDO 旅する写心
ゴルフフォトグラファー宮本卓×GDOのスペシャルコラボコンテンツ。国内外のゴルフ写真を随時更新中!!
やってみよう! フットゴルフナビ
サッカーとゴルフが融合した新スポーツ「フットゴルフ」の総合情報サイトです。広いゴルフ場でサッカーボールを蹴る爽快感を、ぜひ一度体感してみよう!

ブラインドホールで、まさかの打ち込み・打ち込まれ!!ゴルファー保険でいつのプレーも安心補償!