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「振れない、飛ばない」米国10年目のジレンマ/松山英樹2023年末インタビュー(1)

2023年は松山英樹にとって苦悶の一年と言えた。PGAツアーに本格参戦して10年目。2014年から昨年まで続けてきたシーズン最終戦「ツアー選手権」進出を逃し、継続中の選手としては最長の9年連続で記録が途絶えた。第一線を走ってきた31歳に今、何が起こっているのか。単独インタビューの初回(全3回)では、人知れず抱えていた「振れない、飛ばない」悩みを明かした。(聞き手・構成/桂川洋一)

告白「飛距離が落ちた」

2022―23年シーズン、松山は3季ぶりに優勝のない一年を過ごした。トップ10入りは10年間で最少の2回にとどまり、フェデックスカップポイントランクもワーストの50位に終わった。だが、内容面での“暗中模索”の度合いは「2018年の方が悪かった」と言う。今は取り組むべき課題、目の前の大きな壁と向き合っているからだ。

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悩みはシンプル。ボールが、飛ばない。以前に比べて、飛ばなくなった。

「気づいたのは、遡(さかのぼ)れば結構、前にはなる。去年の時点ではそうだった。天気が悪ければ飛距離が落ちるのはもちろんだけれど、『それにしても飛ばないな』というときが結構あった。(最後に優勝した2022年1月)ソニーオープンの頃は身体の状態も良くて、アドレナリンも出てキレもあり、自分の基準の飛距離ぐらいは打てた」

「でも(同じ年の)4位に入った全米オープンの頃にはもうかなり迷い始めていた。『飛ばないのか? 飛ぶのか? どっちだ?』って。そういう試合をずっとやっていたら、もうワケが分からなくなってしまっていた」

年が明けて2023年。数少ない良い成績を残した試合を含め、不満ばかりが募るシーンは続く。

「9位だったファーマーズインシュランスオープン(1月)も、アイアンショットがピンに真っすぐ飛んでいるのにショートしたり。最終日の前半は良かったけれど、ドライバーもアイアンも飛んでいない。グリーンに乗った時に、パットが全部入ったような感じ(でスコアが良かった)。大きめの番手を持って『ちょん』と打ったのが、たまたまピン近くについたりして。納得できない結果だった。プレーヤーズ選手権(3月)で『ちょっとずつ戻ってきたかな』という感触があったが、それからはやっぱり自信を持てずにずっとやっていた」

事実、今季のドライビングディスタンスは297.2ydと前のシーズン(304.7yd)に比べて7.5yd落ちた。ツアーで127位という順位は10年のキャリアでワーストである。ただ、それ以上に持ち前のアイアンショットに自信を持てないのが、松山のゲームを難しくした。長年、想定してきた番手ごとの距離に到達しないケースが増えた。

「2015年あたりから7番アイアンのキャリーで185ydを基準にしてやってきた。今年は175、176ydぐらいしか飛んでないこともあった。1番手近く飛ばないから、自分の距離感が分からなくなってしまう。『ちょっと飛ばないな…』という日で、170ydくらいになってしまうことも」

「6番アイアンで200ydを基準にしているが、『どこまで飛ばせるのか』と、もう分かんなくなっちゃって。とりあえず大きめの番手を持って、距離を合わせてばかり。(飛距離ダウンは)ドライバーだけじゃなくて、アイアンショットの方で感じることが多いんです」

「飛ばなくなった」原因

飛距離が出ない原因。松山には思い当たる節がいくつかある。もちろん年齢が30代に差しかかったこと、それに伴う故障が増えたことも理由ではある。だが、それ以上に痛感しているのが、PGAツアーでのキャリアの積み重ねが生む“悪しき副産物”だという。

「アメリカで長くやってきたことが(原因のひとつに)ある。例えば、強い風が吹いた時にショットで“コントロールすること”ばかりを覚えてしまって、いざという時に振れなくなっているのが間違いなくある。難しいシチュエーションで、自分に何かしらの制御をかけて打つことが多くなってしまって、振らなきゃいけないところで振れないことが多くなった。データ上では以前と変わらなくても、実際の試合では意外と飛ばなかったり、練習場での感覚でコースに行くと、同じように振っているつもりでも意外と振れてなかったり」

ショットごとに飛ぶ距離が違えば、スコアメークが困難になるのは言うまでもない。1打が勝負を、プロとしての生活を脅かすトッププレーヤーの世界ならなおさらだ。

「例えば“あさイチ”のショットは(どんなゴルファーも)飛ばないでしょう。僕ももちろん同じで、以前はそういうときも(フルパワーで)振って、距離を合わせにいっていたのが、今は大きめの番手で(短い距離に)合わせることが多くなった」

「でも、それでグリーンをオーバーすると、また怖くなって(力を)緩める。“どんどん飛ばなくなる習慣”を自分で作ってしまっている。“飛ばない方”に(自分の距離感を)合わせているから、自分の体にもキレを求めなくなってしまった」

松山はかねて全力で振ることの重要性を強調してきた。ジュニアゴルファーに「飛距離を伸ばすためには?」と問われた時は、トレーニングの必要性とともに、ロケーションを恐れずに振り切る力をつけてほしい、と。それがまさに今、自らの課題になっていることがもどかしい。

「自分なりに小細工のようなものを身に着けて、そうやり続けてしまった結果『ツケがいま回ってきたなあ』みたいな。もちろん、それ(小細工)もスキルなんでしょうけど、それに頼りすぎてしまって、振ることができなくなってしまった」

松山がいま対峙(たいじ)しているのは、10年間のプロ生活で“変わってしまった”自分自身。「振っていた」あの頃を取り戻すのに必死だ。インタビュー2回目は、飛距離が落ちたもうひとつの原因でもある故障と、数年前から抱えてきたスイングの問題点について語る。

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