「マスターズ」初日リーダーボード
2022年 マスターズ
期間:04/07〜04/10 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
パトロンの頭に“コツン”から芸術チップ 中島啓太が堂々のマスターズデビュー
◇メジャー第1戦◇マスターズ 初日(7日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7510yd(パー72)
人影が長く伸びた最終18番、中島啓太(日体大)の第2打は右サイドに曲がった。芝の上で弾んだボールは座っていた男性パトロンの頭にコツンと当たり、ロープ内に帰ってきた。「人にボールを当てるのは初めてだったので少し動揺した」という心配をよそに、男性は両手を掲げて周りを盛り上げエキサイト。がっちり握手を交わしてボールをプレゼントした21歳は直後に見事なアプローチを見せた。
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カップのはるか左を向き、ロフト60度のウェッジでボールをしっかり捕まえて4ydほどキャリーさせた。グリーンの外から下り傾斜を伝わせ1mにピタリ。「あそこは(2打目で)“行ってはいけないところ”。練習はしていなかった。あそこから寄せられたのはあしたにつながる」。想像力も十分。オーガスタでのデビューラウンドを「72」で堂々と締めくくった。
「アジアパシフィックアマ」のチャンピオンとして初のメジャー。パッティングエリアから1番ティに続くスロープでの感動は、一瞬にして真っ白になった。「たくさん拍手をもらってうれしかったんですけど、名前をコールされたら(声援が)聞こえないくらい緊張しました」。手の震えを必死に沈め、無心で放った1Wショットはフェアウェイど真ん中へ。2打目を大きく左に曲げながら、3m強のパーパットを沈めて落ち着けた。
アイアンで2オンに成功した2番を含め、3つのバーディはいずれもパー5で奪った。72ホールを回った事前の練習ラウンドで練り上げてきた攻略ルート。「目標スコアはつくらない。ボールをしっかりインポジションに運ぶこと」を念頭に置く。
「ボールを運ぶのはほとんどできた。行っちゃいけないところに行ったのは7番、18番の2回」と納得。自分のスタイルに徹したことで、「回れるとは思っていなかった」イーブンパーのスコアがついてきた。首位とは5打差、前年王者の松山英樹と同じ19位で終えた。
初めての「マスターズ」。雰囲気の異色さを感じたのも「いろんなところから大歓声が聞こえた。そこくらいですかね」と動じる様子はない。「感覚的には水の中にいるよう。すごく苦しいときもあったんですけど、最後イーブンパーで回れて良かったと思います」というのは、あくまで自分との戦いを通じた感想だ。
同じ組でプレーした大会2勝のバッバ・ワトソンを何度もアウトドライブした。この日の平均飛距離292ydは超一流プロを交えたフィールド平均の285ydを大きく上回る。6人のアマチュア選手のうちトップのスタート。2011年大会以来、2人目の日本人ローアマチュア誕生のチャンス十分でも、「結果は後から来るもの。まずは自分に集中したい」と思いを貫く。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)