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ZOZO後記
月曜日の涙と2020年大会へ/初めての「ZOZOチャンピオンシップ」後記 その(4)

2019年10月、世界最高峰のゴルフツアーであるPGAツアーが初めて日本で開催された。タイガー・ウッズの通算82勝目で華々しく閉幕した「ZOZOチャンピオンシップ」。ただ、光浴びるところには陰がある。初回大会の成功の裏には数多くの苦労があった。日本側のトーナメントディレクター(大会事務局長)を務めた株式会社ZOZOの畠山恩(はたけやま・めぐみ)さんと激動の時間を振り返る短期連載。最終回は、2020年大会への課題とトーナメントへの思いを聞いた。

■寿司ロールのおもてなし

「ZOZOチャンピオンシップ」は日本ツアーとの共催とはいえ、オペレーションのほぼすべてをPGAツアーが担った。大会開催が決定してから、日本人スタッフたちは日々、彼らの「アメリカンスタンダード」や「PGAツアー基準」とのせめぎ合いに頭を悩ませてきた。ほとんどの海外選手が初めて目にした日本のコースの2グリーン、芝種やコースセッティング…。お茶の間への放送体系やギャラリー向けのサービスに至るまで、日米の慣例の違いをコミュニケーションで埋めてきた。連載初回で触れた来場者の「手荷物問題」も、そのひとつだ。

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畠山さんには後悔もある。ひとつが選手・関係者に振るまったクラブハウス内での食事のこと。用意した「寿司ロール」は乾いて水分を失ってしまうことを懸念して、わざわざ一人前ずつプラスチックのふたを被せた。

ただ、実際は洋風メニューを多く並べた。いわゆるコンチネンタルブレックファースト、ホットドッグにハンバーガー…。「PGAツアーには『普段、米国でプレーしている選手たちがストレスを抱えないよう、環境を極力合わせた方がいい』と言われ、朝食も昼食も米国風を中心にしたんです」

ところが、試合中に伝え聞いた話ではどうも様子が違った。「欧州ツアーをメーンに戦っている選手のなかには、各国を巡りながら“ご当地”を楽しむ人も多いそうなんです。日本に来たら、おいしい和食を食べられると期待していた選手やキャディさんもいたはずで…」。会場のアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブのシェフたちとの会議を重ねて料理を用意しただけに、その気遣いが裏目に出てしまったことが悔しかった。世界に誇る食文化を持っているにも関わらず…。「来年はラインアップを考えないと」と、もう意欲的だ。

■スマホ撮影許可の是非は

「ZOZOチャンピオンシップ」は、スマートフォンによるカメラ撮影を指定エリアを設けて許可した。日本のスマホは、ゴルフのプレーの妨げになるシャッター音が響くという課題がある。だが「みなさんの記憶だけでなく記録にも残してほしい。ゴルフのすごさと楽しさを拡散いただくことは大会にとって大切」という思いから実現させた。

海外のSNSには「撮影不可エリア」でスマホを掲げず、規律を守る日本人ギャラリーのマナーを称賛する声も多く上がった。一方で、一部の来場者によるルール違反はあったのも事実だ。「お客様のなかには『自分がルールを守っているのに、守っていない人がいるのが本当につらい』という意見もありました。多くの方が喜んでくださった写真撮影のルールですが、守らない方がいると、変更せざるを得ないかもしれない。どうかご協力いただきたい」。PGAツアーは“やると言ったらやる”文化。“ダメだと思ったらやめる”のも早い。

■涙が込み上げてきた月曜日

予定より1日後ろ倒しになった優勝シーン。ウッズのウィニングパットは、涙でかすんで見えた。「スタッフや知り合いのカメラマンさん、記者さんたちの顔を見た瞬間に安心感というか『ああ、もう大丈夫なんだ…』という思いが湧いて、泣いてしまいました。そこまで気持ちが張り詰めていたし、会社にとっても初めてのイベント開催で本当に大変でした。みなさんに支えられたという気持ちでいっぱいで」

開催の約1カ月半前には、大会の発起人だった前澤友作前社長の退任が発表され、「私が入社して数カ月の内のことでしたから、動揺がなかったと言えばうそになります」と振り返る。「でもすぐに話せて、ますます頑張らないといけないと思った。彼の情熱があってPGAツアーが日本に来たこと、多くの人を動かしたのは事実です」

ついには嗚咽(おえつ)するほど泣いた。大会名誉会長として隣にいた前澤氏には「お前、こっちに来るなよ! もらい泣きしちゃうから」と言われた。「おれも泣いちゃうな」とつぶやいたのは、日本ゴルフツアー機構の青木功会長だった。

大会は2024年まで日本で開催されることが決まっている。ZOZOのチームはすでに2020年大会に向けて、宿泊や交通の改善に会議を始めた。「ゴルフというスポーツがここまで人の心を動かしたり、熱狂させる力、熱量を体感することはいままでありませんでした。ゴルフに対する見方を少しでも変えられたかもしれません。選手には来年も日本に来てもらいたい。今年来なかった選手にも来てもらいたい。多くの人にPGAツアーの選手を見てもらいたい。この熱量を維持できるように頑張るのが私の仕事です」(完)

(編集部・桂川洋一)

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