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ZOZO後記
手荷物と“ギャラバス”の混乱/初めての「ZOZOチャンピオンシップ」後記 その(1)

2019/12/23 18:14

世界最高峰のゴルフツアー、PGAツアーが2019年10月、初めて日本で開催された。千葉県のアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブを舞台にした「ZOZOチャンピオンシップ」。タイガー・ウッズがツアー最多勝利数に並ぶ82勝目を挙げ、歴史的な1ページを日本で刻んだ。一方で、光浴びるところには陰もある。初回大会の成功裏には数多くの苦労があった。日本側のトーナメントディレクター(大会事務局長)を務めた株式会社ZOZOの畠山恩(はたけやま・めぐみ)さんと激動の時間を振り返る。

「コースに泊まったほうが…」

「3時間、眠れれば十分」。冗談ではなく、大会期間中はそんな毎日だった。大型台風がいくつも襲来し、天候不順に見舞われた今年の秋。スポーツをはじめ多くの催事が急な予定変更を強いられるなか、「ZOZOチャンピオンシップ」も連日、予行演習なしの判断と調整を求められた。大雨で大会2日目が順延され、再開された3日目は無観客での開催を余儀なくされた。予定されていた日曜日での72ホール完遂はならず、閉幕は翌月曜日になった。

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「開幕前のプロアマ戦は午前6時にスタート。コースが4時にオープンするので、私たちは3時半くらいには会場入りしていました。悪天候でほぼ毎日、日没までプレーが続いたこともあり、ホテルに帰るのは午後11時過ぎ…。みんなで『コースに泊まったほうがよっぽど眠れるんじゃないか』なんて話していました」

スタッフは会場近隣に宿泊していた。大会初日の夜、ようやく眠りについた午前0時半ころ。ホテルで火災報知機のベルが鳴り響き、慌てて外に出た。あたりを見回しても火も煙もなく、凍えながら1時間以上待機した結果、誰かが誤って押してしまったことが判明した。身の安全が第一とはいえ、疲労度を考えれば心の底から「良かった」と言い切れない心情は窺い知れる。

サマンサからZOZOへ

畠山さんは今年5月、新元号のスタートともに株式会社ZOZOに入社した。実はゴルフ業界ではすでに知られた存在で、直前までサマンサタバサジャパンリミテッドに在籍し、国内女子ツアー「サマンサタバサ ガールズ」の立ち上げから運営にかかわってきた。女性視点での大会運営は、男性ファン中心のゴルフツアーに一石を投じる機会になった。それ以前は、同社契約の海外セレブらとの折衝を担当する窓口役として活躍。学生時代の米国滞在経験から、英会話も駆使して知見を広げてきた。

2018年秋に開催が決まった「ZOZOチャンピオンシップ」だが、ZOZOはスポーツイベントを主催した経験がなく、プロゴルフに精通した人材も乏しかった。サマンサタバサでの実績を買われた畠山さんは、前澤友作前社長との面談を経て新たな挑戦を決断。世界最高峰のトーナメントで大役を任されることになった。

手荷物問題

ウッズのメモリアル優勝に象徴された大会は、成功に終わったと言える。ただ、期間中に来場者を巻き込んだ“混乱”があったことは見過ごせない。そこには日米における慣例や考え方の違いに影響されたものもあった。不穏な空気を漂わせたのは、開幕前からの「手荷物問題」だ。

PGAツアーのポリシー(規則)では、テロなどに対して場内、選手の安全を確保するため、ギャラリーが持ち込めるバッグの種類・大きさが指定されている。一辺15㎝以下のものを除いては、透明なプラスチック、ビニールバッグ(30cm×15cm×30cm以内)に手荷物を入れる必要がある。普段国内ツアーを観戦するファンにとっては馴染みのないルールで、畠山さんは「日本では大混乱になる」と案じていた。バックパックを背負ってコースを練り歩く人々を何年も見てきた。米国はコース外の敷地も広く、多くのファンは自動車で来場し、荷物をトランクに入れて観戦を楽しむ。公共交通機関で訪れる人も多い日本とは、事情が異なる。

大会側はツアーと最後まで交渉し、“普段使い”の手荷物の持ち込み許可を求めたが、やはりNGに。ホームページなどで告知に努めた。だが、ルールを知らずに来場したファンを追い返したり、透明なバッグをゲートで販売したりするわけにはいかない。急きょ、トーナメントウィークになってセキュリティチェックを通過したすべてのバッグの持ち込みを認めたが、一部で不満が噴出した。

「PGAツアーの観戦ルールをご存知の方、大会公式サイトをご覧になった方はルールを守ってくださったが、『普通のバッグでも入場できているじゃないか』とご意見をいただいた。ギリギリまでツアーと交渉したがゆえにアナウンスのタイミングが遅くなってしまった。理解していたつもりでしたが、情報を『伝える』のと『伝わる』のは違うこと。コミュニケーション不足の改善はまだまだ、課題だなと思いました。来年はどうするのが良いか、もっと考えなくてはいけません」

ギャラリーバス

さらなる混乱は開幕後にあった。来場者の“足”の問題だ。コース最寄りの北総鉄道・千葉ニュータウン中央駅、印西牧の原駅からのギャラリー用のバスに乗車するため、ロータリーには早朝から長蛇の列ができた。混雑時は2時間、3時間待ち…という惨事だった。

申し訳なさそうに畠山さんは話す。「バスの台数自体は潤沢にあったんです。ただ、私たちが想定できていないことがあった」。大会は限られた駐車場付きの入場券を所持していたギャラリー以外には公共交通機関の利用を促していたが、自家用車でコースを訪れる来場者も少なくなかった。“想定外”だったのは、彼らを受け入れる大会未公認の臨時駐車スペースが、畑や空き地に無数にできたこと。地元警察とも相談したが、私有地に規制をかけることはできない。

「『どこかにとめられるのでは…』という期待から、午前4時、5時に来られている車もありました。コースの周りは普段と違う交通規制もあって、Uターンをしていただく場所や、雨が降って道路に轍(わだち)ができて、行き来が難しいところも…。周辺に自然と渋滞ができ、バスがなかなか通れなくなってしまいました」。数年来、国内外の多くの大会を視察し、ギャラリーバスでの来場に慣れた畠山さんにとっても痛恨だった。「案内の仕方で、お客様を混乱させてしまった」と、ここにも情報提供の難しさがにじむ。

千葉ニュータウン中央駅では、ピーク時に快速電車1編成で約1500人が下車したという。それだけの人数が早朝から一気に習志野を目指した。「思っていたより、みなさんの初動も早かった。熱は徐々に高まっていくかなと思っていたんですが…」。日本初開催のPGAツアーへの期待は運営サイドの想定も上回っていた。(編集部・桂川洋一)

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