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アウトオブバウンズな世界紀行

「バンコクでの初体験」Bangkok, Thailand

2019/02/11 13:39

これまで何度もタイを訪れたが、ムエタイを生観戦するのは初めてだった。国技という割にはタイ国民の人気はそれほど高くないらしい。「痛いから嫌い」とか、「そんなに好きじゃない」とタイの友人たちは首を振る。賭け事の対象になっていることや、貧困層のスポーツというイメージが敬遠される理由というが、イチ旅行者にとってはそれも魅力だ。インターネットでチケットを購入して、「儲けてやろう」とひそかに意気込み、タクシーに乗り込んだ。

(これは取材で世界を旅するゴルフ記者の道中記である)

向かったのは、1945年に開場したラジャダムナン・スタジアム。バンコク市内にあり、タイでもっとも古いムエタイおよびボクシングの専用施設だ。ちょっぴり不安だったチケットの受け取りもスムーズだった。2等席は1500バーツ(約5250円)。入ってすぐ、まるで市場の競りのように手を上げて、指で合図を交換しながら賭けをしている地元民たちが目に入った。だが、そちらに行こうとすると係員に制止されて、「外国人用」と書かれた隣のエリアに案内された。どちらのエリアにも椅子はなく、コンクリートの階段に直接座った。

あらためて場内を見渡すと、リングサイドは欧米人や関係者たちに占められていた。2等席は賭けに興じる地元民と観光客が半々くらい。金網で隔てられた最上段の3等席には、立ち見の地元民たちが陣取っていて、ここが一番熱狂的な雰囲気だった。賭けに参加するのは困難だった。なにせ、タイ語も分からなければ、なにをやっているのかも理解できない…。モヤモヤした気持ちを、客席の間を縫って歩く若い女性の売り子からカットフルーツを買って落ち着けた。

3分5ラウンド制の試合には、一定のパターンがあった。すぐに理解できたのは、最初は様子見で、3ラウンド目以降に本格的な戦いが始まること。賭けがヒートアップするのも、3ラウンド目以降だった。ノックアウトや激しい打ち合いはほとんどなく、お互いに首を抱えあった膝蹴りの応酬(この駆け引きが奥深い楽しさらしいが…)が主で、両者ともに余力を残して試合を終え、勝敗は判定に委ねられる。ときには、両者が距離をとって、笑顔すら浮かべながらお互いが勝ったというアピールを繰り返し、数分経過してそのまま終わる…という試合もあった。日本ならブーイングが起きそうなところだが、タイの人たちは皆が納得したような表情でその様子を見守っていた。

途中、珍しく攻撃的なファイターがいた。体格で勝る彼は、飛び蹴りを連発し、相手を暴力的に追い詰めていく(格闘技としては至極まっとうだと思うが)。個人的には興奮したが、会場の雰囲気は少し冷めたようで、「えげつない」、「おとなげない」といった風情でこの選手を眺めているようだった。やはり、“微笑みの国”の人々は根が優しく、争いごとや人を傷付けることを好まないのか…。

思い出したのは、タイの終わらない宴会だ。仕事柄ときどき、食事会やパーティに招待される。飲んで食べてと、やることは日本と変わらないのだが、招いた方は決して自分たちから「もうオシマイの時間です」とは言わない。ゲストが居続ける限り、やりたいようにやらせている。食事とお酒も求められれば可能な限り提供する。「この会は何時まで?」と聞こうものなら、「好きなだけ」とウインクされる。それがタイ式のおもてなしなのだ。

深い時間にはカラオケに移行するのも日本と同じ。そして、必ず歌を勧められる。そうこうしていると、「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」のイントロが流れてきてマイクを渡される。こうなったらもう歌うしかない。歌い終えると、次に「昴(すばる)」は歌えないか?とリクエストされる。アジア圏を旅行するときは、この2曲に加えて「北国の春」を覚えておいて損はない。気がつけば、酔っぱらい同士で絡み合い、まるでムエタイの首相撲をしているように…夜はとっぷり更けていくのだ。(編集部・今岡涼太)

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