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アウトオブバウンズな世界紀行

「済州島のビジネス・バー」Jeju, Korea

2018/10/27 21:00

韓国に行くのは久しぶりだった。正直に打ち明けると、しばらく訪れなかった間に虚実ないまぜの世間の情報にさらされて、韓国人に対する苦手意識が芽生えていたことも否定はできない。だからこそ今回は、その苦手意識をなくす旅にしようと思っていた。

(これは取材で世界を旅するゴルフ記者の道中記である)

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すべての仕事を終えた日曜夜に街へ出た。海鮮料理屋で刺身を食べ、韓国人女性記者に紹介してもらったサウナで、初のあかすりを体験した。想像と違ったのは、担当したのがおじさんで、こちらは素っ裸で施術台の上に寝転がり、なんの遠慮もなく体中をゴシゴシとされたこと。綺麗になったとは思うけど、やっぱりちょっと抵抗がある…。

サウナから出ると(おじさんを忘れるために)少し飲んで帰りたくなった。街にはネオンが輝いていたが、人通りは多くない。理想はアイリッシュパブだったが、そんなものは見当たらない。ふと、店名の横に“Business Bar(ビジネス・バー)”と書かれた謎の看板が目にとまった。商談や接待で使うラウンジのような店かなと推測したが、入り口のガラス窓越しに小綺麗なバーカウンターが見える。システムは入ってみないとわからない。でも、こういう瞬間がじつは一番ワクワクしたりする。

扉を開けて店内に足を踏み入れると、ジーンズにカットソー姿の若い韓国人の女性店員が出迎えてくれた。英語も日本語もほぼ通じない。メニューを頼むと、ウィスキーのボトルが2、3万円で、あとは1杯1500円ほどのビールしかない。店は静かで雰囲気が良かったし、まあビールが飲めればいいか…と、そこに腰を据えてみることにした。

ハイネケンを注文すると、その店員は奥の冷蔵庫から緑の小瓶を持ってきて栓を抜いた。グラスは?と聞かれたが、いらないと言うと瓶の口をティッシュで拭ってくれた。カウンター越しにカタコトの英語と日本語と韓国語、さらにネット翻訳を使って会話をした。彼女は済州島生まれの21歳。この仕事しかしておらず、日々の暮らしは幸せだという。寝ることとチャミスル(韓国焼酎)が好きだと言って微笑した。

そういえば最近、済州島に多くの中国人が訪れているという話を思い出した。店に他の客はいなかった。「中国人は好き?」と聞くと「ノー」と答えた。ついでに「日本人は好き?」と聞くと「ノー」と即答して、目の前で話している相手が日本人だというのに、悪びれるそぶりもない。「韓国人は好き?」と聞くと、嬉しそうに「イエス」とうなずく。そこまで断言するものだから、こっちも簡単には引き下がれなくて「なんで日本人が嫌いなの?」と食い下がった。

彼女はちょっと考えると、スマートフォンで韓国語から英語に翻訳した画面をこちらに向けた。そこには「Greasy」と書かれていた。「脂っこい、ベタベタしている」という意味と、「口先がうまい、ずるい」という意味を合わせ持つ単語だった。

そう言われれば、思い当たる節がないこともない。たしかに韓国人男子たちは、あきれるほど美容や美白に熱心だし、それに比べれば日本人、特におじさんたちは脂ギッシュだ。彼女の使った韓国語がどういう意味を含むのかはわからないが、我々日本人にはずるいと言われる側面もあるかもしれない――。

自分はちょっとした衝撃を受けていた。さきに書いたように、今回の出張では韓国人に対する苦手意識をなくそうと、ひそかな意気込みを持っていた。こちらから歩み寄ればいいと、深く考えずに思っていた。だけど、向こうが嫌だと思っていたら、それだけでは成立しない。結局、自分の発想には韓国人に対する無意識の傲慢さがあったのだ!それこそが「Greasy」という単語で表現される人間性なのかもしれなかった。

帰国は翌朝だった。ホテルや空港で韓国人と接するたびに「尊敬」や「対等」という言葉が頭に浮かんだ。アシアナ航空の韓国語と日本語、英語をまじえたサービスが、じつに立派なものに感じられた。明快に拒絶されたことで、根拠のない優越感が消え去っていた。

サウナを教えてくれた女性記者が、別れ際に顔パックをくれた。最初は女性用のお土産かと思ったが、自分で使えということだった。帰国してこの原稿を書きながら、その顔パックをしてみている。まずは顔の脂でも落としてから、もう一度じっくりと考えてみよう…。(編集部・今岡涼太)

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