「自分を誇りに思ってほしい」岩井明愛がパリ五輪金メダリストから贈られた言葉
◇女子メジャー第4戦◇アムンディ エビアン選手権 最終日(12日)◇エビアンリゾートGC(フランス)◇6479yd(パー71)
初のメジャータイトルは、岩井明愛に確かに見えていた。首位タイで迎えた最終18番(パー5)、決めればプレーオフという2.5mのバーディパットがカップ右を抜けた。わずか一筋だった。激闘を繰り広げたユ・ヘラン(韓国)、ブルック・ヘンダーソン(カナダ)と気丈に笑顔でハグした24歳。ところが、グリーンを離れて現地メディアのインタビューに英語で応じていると、涙があふれ出た。「ごめんなさい…」。震える声で、言葉を絞り出した。
世界の頂点にあと一歩まで迫ったからこそ、こみ上げる感情がある。「たくさんのファンの中で、しかもメジャーの雰囲気の中でラウンドできてすごく楽しかった。勉強になりました」。目を真っ赤にしながら、1打差の通算18アンダー3位という結末を懸命に受け止めた。
最後までファイティングポーズを崩さなかった。3打差2位で迎えた最終日。ボギー、バーディで迎えた3番でティショットを大きく右に曲げてダブルボギー。首位と5打差に開いた。それでも「最後まで何があるか分からない」と信じた。メジャーで過去最高は7位。初体験の優勝争いの中で冷静さを失わなかった。
いつものアグレッシブなスタイルを貫いた。7番、9番のパー5でバーディを奪う。7番、8番でヘンダーソンの連続イーグルを見ても心は揺るがない。8番をボギーとした首位のユ・ヘランと2打差で後半へ。14番(パー3)で2.5m、15番(パー5)で2mのチャンスを決めて右こぶしを握った。ついに首位を捉えた。メジャータイトルを持つ2人と堂々と互角に渡り合った。
涙を流す自分のインタビューを、すぐそばで見守っている人がいた。元世界ランク1位でパリ五輪金メダリストのリディア・コー(ニュージーランド)だった。プライベートでラウンドをともにしたことをきっかけに、気にかけてくれていた。そんな尊敬する先輩に抱きしめられ、声をかけられた。「素晴らしい戦いだった。自分のことを誇りに思ってほしい」。その言葉に、力強くうなずいた。
今年5月、世界の人に名前を覚えてもらえるようにと登録名を「Aki」に変えた。見る者にその名を刻むのに十分すぎるインパクトを残したプレーだった。「プレッシャーを感じつつも、気持ちをコントロールできた。やっぱり悔しい感情の方が大きいですけど、メジャーでこういう優勝争いが経験できたことがうれしい」。いまは、ただただ悔しい。それでもその涙は頂点に近づいた証。涙を拭って、またタイトルに挑んでいく。(フランス・エビアン/中村文香)