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<東北福祉大の元キャプテンが苦労の末に手にした“賞金王”の座>

今季15試合が開催されたチャレンジトーナメントで『LANDIC VanaH杯 KBCオーガスタ・チャレンジ』と『ロイズコーポレーションin福岡雷山』の2試合、いずれも福岡県で行われた大会を制したK.T.ゴンが賞金王の座を獲得し、来シーズンのシード入りを果たした。

K.T.ゴン・・・アマチュア時代は権奇澤(ゴン・キテク)の名前で活躍し、『日本学生選手権』(04年)を制した、東北福祉大のエースでキャプテンだった男だ。同大ゴルフ部監督の阿部靖彦氏から「今季はお前がキャプテンをやれ」と命じられたのは4年生になったとき。それは信じられないオファーだった。

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「自分でいいんですか?」というゴンに、「いいからやれ」と監督に言い返されて決まった。

「日本で一番強い大学のキャプテンだから、やってみたいな、という気持ちはあったんですけど、まさか本当に指名されるとは思ってなかったんです」とゴンは当時を振り返る。それが発奮材料になったのだろう、『日本学生』を制したのはその年だった。

今でこそ流暢な日本語を操るが大学入学当時は、「言葉には苦労しました」とゴンは言う。阿部監督には、「ゴルフより、まず日本語を覚えろ」と言われるほどだった。

「いつでも韓国語の辞書と日本語の辞書を2冊持っていましたよ。分からない言葉に出くわすと、僕が韓国語の辞書を引いて、友達に日本語の辞書を引いてもらうんです」

そんな努力を見て阿部監督はキャプテンに指名したのだろう。

05年、卒業と同時にプロ転向。だが、QTの壁は厚く、なかなかツアー出場の機会は巡って来ない。06年にサードQTを突破できなかったのを機に、ゴンはある決意をした。韓国の男性なら避けて通れない兵役だ。

ゴンの郷里はプサン。自宅から15分ほどのところに、あのドンファンが入隊していたプサンの空軍基地がある。仕事はあまりきつくなく、なによりも厚生施設としてゴルフ練習場まであるのが魅力だ。しかし、希望者が多く、かなり早く申し込んでいなければ、そこへの配属は叶わない。11月に志願したゴンが12月に配属になった先は、38度線のすぐ近くの陸軍基地だった。

「入ったころは、もの凄く後悔しましたよ。冬は凄い寒いし…」というゴンだが、2年の兵役を終えるころには、「いい経験をしたな」と思えるようになったと言う。

「2年間、まったくゴルフはできませんでしたけど、ゴルフだけやっていたらできないような友達もできたし、お金では買えない経験でした」と言うのだ。

しかし、やはり2年のブランクは大きい。兵役を終えてすぐに日本に戻ったが、韓国のナショナルチーム時代に一緒に汗を流した同期や後輩たちが、日本ツアーで大活躍しているのを目の当たりにしたのだ。

「松山(秀樹)とか藤本(佳則)とか、東北福祉大の後輩はあんまり気にならないんですけど、やっぱり韓国のナショナルチームで一緒だった後輩とかのほうが気になりますね。でも彼らが勝てば嬉しいし、僕は僕で頑張ればいいんですから」

ゴンの昨年のQT順位は205番目。チャレンジトーナメントにもなかなか出られない順位だ。4月に行われた開幕戦の『Novil Cup』には出られたものの、次の出番が巡って来たのは、ようやく7月になってからだった。それが初優勝となった『LANDIC VanaH杯 KBCオーガスタ・チャレンジ』だったのだ。

「いつもは、試合になるとピリピリしていたんですけど、今年はあんまり試合には出られないし、意気込まなかったのが良かったですね。年を取ったせいかな。一所懸命やって結果を待つ、という気持ちになれました」とゴンは今季の自分のプレーを分析した。31歳にして初シード。「オフの過ごし方が大事です」というゴンの活躍を見守りたい。

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