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<見かけによらず(!?)ロマンチスト、兼本貴司の意外な素顔>

一芸に秀でた人は、そのほかの分野でも応用が利く、というのはよく言われることである。ゴルフ界でもっとも顕著な例は、やっぱりジャンボ尾崎だろう。

地元・徳島海南高のエースとして選抜高校野球大会を制したのは1964年の春のこと。翌年にはプロ野球・西鉄ライオンズに入団。4年在籍ののちにゴルフに転向し、そのあとの破竹の活躍は、今さら言うまでもないだろう。

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ジャンボほど極めなかったにしても、少年時代は別のスポーツでならしてから、とか、さまざまなスポーツを経験したのちにプロゴルファーに、という選手の例は少なくない。

その一人がツアー1勝の兼本貴司である。小学校時代はサッカー、中学は野球。高校時代は陸上部でやり投げの選手になったが「どれでもそこそこに活躍出来た」と、本人はいう。しかも、驚くのが高校時代の背筋力。なんと、当時は「260キロ」もあったというのだ。

今ではさすがに100キロ代まで落ちてしまったというが、身体能力の高さは当時から際立っていたようだ。

運動神経の良さは今でも変わらず、たとえば毎年、オフは尊敬してやまない中嶋常幸の恒例のスキー合宿に参加しているが、初参加の2年前はほとんど初心者だったにもかかわらず、いきなり上級者コースを難なく滑降してみせた。

あまりに驚いたインストラクターに、本気でプロ入りを勧められたほどだったらしい。それら数ある得意スポーツの中でも一番夢中になったというゴルフでは、初心者のころから100を打ったことがなく、空振りをしたこともないという。

中学には158センチしかなかった身長は、高校時代に一気に20センチも伸びて、スラリと恵まれた体格は、ツアーでもひときわ目立っている。

飛距離も申し分なく、飛ばし屋として一目置かれる存在だが、その分、ショットが暴れるのが悩み。「浮き沈みが激しい選手だからね」と謙虚に、客観的に自分を見つめて日々精進を重ねている。

そんな兼本が好きな言葉は「氣」。

いわゆる、「気力」とか「活気」を意味する「気」だが、「“気”という字には中に〆があって、ストレスがたまってしまうような気がして嫌なんです」。

その点、「氣」と記せば「真ん中に“米”がある。中までしっかりと、栄養が詰まっているような感じがして。だから皆さんもいつも“氣力”を持って頑張ってください」。

そう語ったのは、オフに訪れた広島県内の小学校でのこと。子供たちの前で「夢を持つことの大切さ」という講義を行ったときの一場面なのだが、粋な授業内容に「こんなにロマンチストな選手だったのか」とスタッフは内心、みな目からウロコ。

ジャパンゴルフツアーは先週まで2週間のオープンウィークに、時間にあかせてふとそんなことを思い出してしまいました。これからまた3週連続のトーナメントで、選手たちのそんな素敵な素顔を見付けて、みなさんに紹介していきたいと思います。

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