M.A.ヒメネスが負傷のA.キロスに代わり選抜入り/ザ・ロイヤルトロフィ
2010年 ザ・ロイヤルトロフィ
期間:01/08〜01/10 場所:アマタスプリングCC(タイ)
どんな人の心をも溶かしてしまう18歳、石川遼の本当の凄さとは・・・!?
先週に引き続き、今週も驚異の18歳の話題についてもう少し・・・。お察しのとおり、2009年度の賞金王が凄いのは、ゴルフだけではないのである。話はさかのぼって、今年1月。欧州対アジアの対抗戦「ザ・ロイヤルトロフィ」でのことである。
大会週の水曜日は、スポンサーや関係者を招いて前夜祭が行われた。我々日本ゴルフツアー機構(JGTO)のスタッフも開始時間に合わせてコースを早めに出たのだが、数人が開催準備のためにギリギリまで居残った。
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と、夕方に激しいスコール。それはコース内ですら、水没したバンカーとフェアウェイの判別もつかなくなるくらいの雨量で開催地のバンコク市内も大混乱。たちまちあちこちで車の大渋滞が起こったのだ。
おかげでコースから前夜祭の会場まで、車で1時間半もあれば着けるところを、なんと4時間半もかかってしまった。
スタッフがようやく到着したのはパーティも半ばをとっくに過ぎて、料理もメインにさしかかるころ。ほうほうの体で着席してしばらくしてから出場選手たちが、各テーブルを回ってゲストをねぎらうご挨拶の時間が始まった。
しかし我々スタッフは、選手にとってはゲストというよりも、いわば“身内”である。先導役が「このテーブルはみんな関係者だし、必要ないから」と、テーブルをスルーしていく列の最後に石川がいた。
ぞろぞろと、揃って選手たちが離れていくそのとき石川は、ふいにスタッフのほうに向き直って言ったのである。
「ひどい渋滞に巻き込まれたんでしょう? 大変でしたね! みなさん疲れたでしょう、大丈夫でしたか?」。
まさか、そんな言葉をかけられるとは予想だにしていなかったから、みな一瞬、豆鉄砲を食らったような顔をした。しばし呆然ののちに気を取り直して
「あぁ・・・ありがとう、大丈夫だよ!」と返すと石川も、それは良かったというふうに、うんうんと頷きながら、満面の笑みを残して隣のテーブルのほうへと歩いていった。
その背中を目で追いながら、スタッフがつぶやく。
「なんなんだよ、なんて出来た18歳なんだよ。あんなこと言われたら・・・・・・嬉しくなっちゃうじゃないか!!」。
きっといい大人でも、そこまでの気配りは出来ない。いや、もしも内心は気になっていたとしても、そんなふうに心のこもった労いは、なかなか口に出して言えるものではない。
まして、思春期の真っ直中にいる男子ならなおさらだ。
それを、石川は難なくやってのけるのである。もちろん計算も、何のてらいもなく。本当に気になっていたから、尋ねずにはいられなかった。石川にとっては本当に、それがごく自然なことなのだ。
コースの中にはいつも、石川のプレーについて歩く熱狂的なギャラリーがいるが、それ以外にも“隠れファン”はたくさんいる。そりゃああんな優しさを見せられれば、応援せずにはいられない。関係者もみんな、“遼クン”が大好きなのだ。
そんな人たちの思いがますます石川に見えないパワーを与えているのは間違いない。にわかには信じられないような奇跡を彼が随所で起こすのは、きっとそのためでもある。
今週はマスターズ。昨年、予選落ちのリベンジを果たしに石川もかの地に乗り込む。
2年目の今年はゴルフを知り尽くした“パトロン”の心をも、虜にすることが出来るだろうか。18歳のひたむきな思いは、オーガスタの奇跡を呼び込めるか。