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「両親に感謝したい」谷口拓也/アイフルカップゴルフトーナメント

出だし連続ボギー、プレッシャーを乗り越え栄冠を掴んだ谷口

出だしのピンチをどうにか切り抜けた谷口拓也に、また新たな試練が訪れていた。

同じ組のS.K.ホが、スーパーショットを連発していた。前組の宮本勝昌が、5打差4位から猛然と追いかけてきた。10番のボギーで1打差まで、追い詰められた。

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息詰まる接戦に、前夜、受け取ったメールがよみがえる。

「『何苦楚魂』で、頑張って来い!」

同じ四国出身で、プロ野球ヤクルトスワローズで活躍する岩村明憲選手からのメッセージ。『何苦楚』は「なにくそ!」と読む。昨年、岩村選手のお兄さんを介して知り合った1つ上の先輩の座右の銘だ。

谷口も気に入って、ゴルフボールにプリントしている。窮地になるとすぐにその字を見つめて「なにくそ!」と、目の前の1打と向き合った。

16番で、2メートルもないパーパットを外した。3パットのボギーで、いよいよ宮本に並ばれた。「以前のあの子なら、そのまま崩れて、負けていたでしょう。この2年間で、精神的にほんとうに強くなりました」と、母親美恵さんは言う。

土壇場のピンチには、前夜の電話がよみがえった。

「お前なら、できる」。

東北福祉大の安部靖彦ゴルフ部監督。大学2年のとき、2度の退部勧告を受けた谷口を、「頭を丸めていちからやりなおせ」と、引き止めてくれた人物。その翌年から、 2年連続で中四国アマを制するなど、現在の礎を築くことができた。「先生がいなかったら、僕はここにいない」というくらい信頼を寄せている恩師からの言葉が、初勝利を手繰り寄せる原動力となった。

17番で、3メートルのバーディパットを入れて再び1打差。最終18番は、ティショットを右のラフに打ち込んだ。グリーン右手前から斜面がせり出して、その地点からはピンフラッグが見えない。無難に左に逃げて確実にパーであがる手もあった。

しかし谷口は、「そんなの、僕らしくない。逃げるより、攻めていく!」と、ダイレクトに右サイドのピンを狙っていった。ピッチングサンドで打った残り105ヤードの第2打は、手前3メートル。V目前のプレッシャーに「3パットするかもしれない・・・」との不安は、台風10号の名残が吹き飛ばしてくれた。

ウィニングパットは「フォローの風に乗って」、最後のひと転がりでポトリ、とカップに落ちた。

バーディフィニッシュでつかんだ、歓喜のツアー初優勝。全身で、喜びを表現した派手なバンザイポーズ。そのあとは、最後まで応援してくれた大ギャラリーへの感謝の気持ちも忘れなかった。

18番グリーンを去る際に、今週バッグを担いでくれた伊能恵子さんと、揃ってクルリとフェアウェイ方向へ向き直った。2人並んで深々とお辞儀。ヒーローインタビューでは、「見守ってくれた父と母にも感謝したい・・・」と言うなり、ふいに言葉を詰まらせた。

ぬぐってもぬぐっても、後から後からこぼれ落ちてくる涙が、谷口の思いのたけを伝えていた。

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