3打差4位の宮里優作 “心の青いレンズ”で逆転なるか
<宮里家のソウルフードとそこに垣間見た家族の絆・・・もっとも初Vが待たれる次男の物語>
お正月特番のトーク番組に出演していた女子プロの宮里藍さんが、司会の明石家さんまさんに持参したお土産に見覚えがあった。「お母さんのサーターアンダギー」。ころころっと丸い一口サイズの沖縄生まれのドーナツ。母・豊子さんお手製のそれをさんまさんに手渡しながら、「本当においしいんですよぉ!」と、藍さんは言った。その嬉しそうな表情も、そっくりと同じだった。
あれは、昨年の「日本オープン」のことだ。大会は、その年77回目にして沖縄に初上陸を果たした。本土復帰40年の“記念大会”で、もっとも期待を集めたのが藍さんの2人の兄。聖志と、特に優作は歴史にも残る難条件の中で、2日目にして3位タイにつけて優勝争いに加わった。身もよろめくほどの強風に、選手の誰もが普段以上の精神力と集中力を消耗する中で、例外なく這々の体で上がってきた優作が開口一番、かたわらのマネージャーに言ったのだ。
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「ください、お母さんのサーターアンダギー」。
そして、一気に2個、3個と口に入れると「これが好スコアの原動力」と、笑ったものだった。テレビの中の藍さんと、あのときの優作の笑顔が重なって見えた。沖縄が生んだ珠玉の3兄妹にとって、まさにあれこそが“ソウルフード”なんだ。そこにもひとつ、宮里家の絆の深さを垣間見た気がした。
もっとも、優作はあのとき、念願のツアー初Vにはいま一歩及ばなかった。本人はもちろん、あのときの関係者の落胆は大きかった。ジュニア時代のあの破竹の活躍と、まじめ一途な本人の性格をよく知る人たちにとっては特に、誰よりもその瞬間を見届けたい選手の一人が優作だから。
そして、きっとその思いは故郷のお母さんにはなおさらであったろう。あのサーターアンダギーを作ったご本人。最終日も地元での悲願成就を願ってつきっきりで応援されていたが、今回もまたお預けとなってしまった。あれだけの実力と実績を持ちながら、優作はなぜいまだに勝てないか。それは本人が一番知りたいところであろうが、我々ファンとしては、ただひたすらにエールを送り続けるしかない。
本人も、その日を目指してオフの今は日々研鑽中だ。ツアーきっての努力家は、世界を飛び回っている。先週は、アジアンツアーのQスクールに挑戦。残念ながら、予選落ちを喫したが帰国するなり休む間もなく来月1日には、アメリカに飛ぶ。藍さんと、恒例のアリゾナ合宿では今年も世界的コーチのピア・ニールソン氏の指導を仰ぐという優作。最愛の妹と分け入る“54ビジョン”の世界に、少しでも早く初Vへの突破口が見つかればいいのにと、心から思う。