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2019年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

魔の12番で分かれたウッズとモリナリの選択

オーガスタの女神が微笑むのは、たったひとり――。サンデーバックナインで繰り広げられたタイガー・ウッズ選手とフランチェスコ・モリナリ選手(イタリア)の戦いは、まさに紙一重だったといえるでしょう。

勝敗を分けたポイントは、アーメンコーナー魔の12番、池越えのパー3。過去にも多くのドラマを演出してきたホールです。

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1992年大会でフレッド・カプルス選手が放ったボールが、グリーン手前のラフに跳ね返され、池までわずか60cmという場所に止まり、辛くもパーセーブで初制覇をたぐり寄せました。2016年にはジョーダン・スピース選手が「7」をたたき、残り9ホールで5打差をひっくり返される展開になりました。

12番まで流れはモリナリ選手にありました。3日目終了時点で、彼がたたいたボギーはたったの1回。昨年の「全英オープン」でもウッズ選手と優勝争いを演じ、競り勝っています。最終日を迎える前、私は8割の確率でモリナリ選手が勝つとみていました。

最終日の前半も、安定したプレーを継続していたモリナリ選手。パトロンの「ウッズ」コールの大合唱の中でも、終始落ち着いた様子を見せていました。一方のウッズ選手はティショットの精彩を欠き、10番(パー4)、11番(パー4)と右に曲げ、なんとか2打差2位で食い下がっている状態でした。

ドラマが動いたのは、前組のブルックス・ケプカ選手とイアン・ポールター選手(イングランド)が12番ティショットで池に入れたという情報が入ってからだと思われます。ウッズ選手は、試合後のコメントで「ケプカやポールターが池に入れていたのを見ていた。風がアゲンストに変わっていたことは分かっていた」と話しています。

ピンまで155yd、カラーまで約145yd。通常であれば、2人とも9番アイアンを持つ距離です。ただ、前組のケプカ選手らが9番アイアンで池に入れた情報が入ったことで、2人の選択が分かれることになります。モリナリ選手が握ったのは8番アイアン。ウッズ選手は9番アイアン。前者の攻め方は、大きな番手でスイングで合わせにいくというもの。結果的にスイングで距離を意識した分、ボールを薄く当ててしまい、大きくショートして池へ。後者は番手通りフルスイングしたことで、グリーン中央へ置くことに成功しました。

ウッズ選手はこの局面で、モリナリ選手の結果を待たずしてピンを狙わずグリーン中央へ落とすことを決めていた、と言っています。最悪グリーンに届かなくてもバンカーで良いという考え方です。その選択はまさにセオリー通り。オーガスタはこう攻めるべきだ、とする教科書通りの攻め方でした。

ウッズ選手がここまで冷静にクールな考え方を保つことができたのは、多くの要素が考えられます。まずは追うものと追われるものの視野の広さの違い。どうしても追われる側は優勝がチラつくことで、視野が狭くなってしまいます。微妙な風の向きや強さに気づけるかどうかは、この差に関わってきます。

また結果論ですが、誰よりもオーガスタの怖さを知っていたからという理由です。アーメンコーナーの難しさもメジャーでの最終盤の試合勘も熟知していたウッズ選手だからこそ、オーガスタの女神は微笑んだのかもしれません。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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