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佐藤信人の視点 勝者と敗者

ケプカのメジャーの重みを感じない能力

ことしの「全米プロゴルフ選手権」は、終わってみれば6月の「全米オープン」も制したブルックス・ケプカが終始安定したプレーを見せ、メジャー通算3勝目という形で幕を閉じました。

結果的にはケプカの勝利となりましたが、前評判ではそれほど彼の名前が挙がっていた訳ではありません。どちらかと言えば、レギュラーシーズンを含め通算19勝を誇るダスティン・ジョンソンや、前週「WGCブリヂストン招待」で勝利を挙げたジャスティン・トーマス。「全英オープン」でメジャーでの復活優勝を予感させたタイガー・ウッズロリー・マキロイ(北アイルランド)、ジョン・ラーム(スペイン)といった欧州勢が続くというのが大方の予想だったと思われます。

直近出場したメジャーで6戦3勝という強さを見せたケプカですが、そもそも昨年勝利を収めた「全米オープン」の前まで、米ツアーでの勝利数はレギュラー1勝のみ。「全米オープン」を制した後も、それほど勝利数を重ねていないことから、舞台となったエリンヒルズ (ウィスコンシン州)がたまたまケプカ向きだったのでは、と酷評されてしまうほどでした。

しかも彼は今シーズン1月に手首を故障し、4カ月ほど戦線離脱しています。「マスターズ」の出場もできませんでした。ケプカが周りを納得させたのは、ことしの「全米オープン」で難攻不落シネコック・ヒルズ (ニューヨーク州)で勝利を収めた時点。ようやくその実力が認められるまでになりましたが、まだまだ優勝候補の筆頭には名前が出ない存在であったのは事実です。

では、なぜ彼がメジャーでこれほどまでに結果を残せたのか? それは彼の当たり前のことを普通にできる能力にあると思っています。特に年に4回しか開催されないメジャーの大舞台で、普段通りのプレーをすることがどれだけ難しいことか。いくらレギュラーツアーで何度も優勝を飾っている選手であろうとも、それは非常に困難な仕業です。「メジャーをとれば人生が変わる」と思うのは、元王者でも初優勝を狙うプロでも同じことと言えます。

ケプカがメジャー向きと言える要素を挙げるとするならば、メジャー制覇を大げさにとらえない、特別視しない能力に尽きると思うのです。ほかの選手がレギュラーツアーとは違うモードで挑むところを、まったくレギュラーの試合と同じ波長で臨んでいけたケプカ。このメジャーの重みを感じない能力こそが、ほかの選手にはなく、彼の長けている部分だと感じました。

その要素が顕著に見られたのが、最終日の1番と18番(どちらもパー4)でのティショット。首位でスタートした彼が、非常に狭いフェアウェイのホールで、落としどころの左右にバンカーがある1番のティショットを、躊躇せずにドライバーを持ち、当たり前のようにバンカーの上を超えていったシーン。またウッズに2打差と迫られた最終ホールでも、2打のリードを持ってすればアイアンでも良い場面で、迷いなくドライバーを持ち、フェアウェイやや左寄りの好位置につけ、優勝をぐっと引き寄せました。

ほかの選手がどういうプレーをして、どのくらいの差で迫っているかなど、ケプカにとってはそれほど気にならないのでしょう。意識の中にはあると思いますが、彼のプレーを見ていると、それほど大きな問題ではなく、気にせず自分のプレーに集中できるしたたかさを感じることができるのです。絶対の自信と揺るがない精神力をもって初めてできる、真の強いプレーヤーの姿と言えると思います。

一流選手が集うトップクラスの争いの中では、ケプカが持つ動じない能力こそが必要な要素。彼が3度もメジャーを制した実績を考えれば、メジャーで問われる一番のポイントなのかもしれません。今季の4大会はすべて終了しましたが、この大舞台に強い男が来年もタイトルホルダーになっている可能性は低くない気がしています。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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