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2018年 ダンロップフェニックストーナメント
期間:11/15〜11/18 場所:フェニックスカントリークラブ(宮崎)
「神がかり」後の踏ん張りが勝因
「ダンロップフェニックス」は市原弘大選手が最終日に5打差を逆転し、劇的な勝利を飾りました。
まさに彼の最終日は神がかっていました。9番(パー4)で見せたイーグルショットは、残り151ydをワンバウンドさせてカップイン。14番(パー4)でも難しいスライスラインを読みきり、絶妙なタッチでバーディパットをねじ込みました。
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ただ今回の勝因は、その神がかったショットやパットの後に見せた彼の踏ん張りにあると思っています。ゴルフというスポーツは18ホールを波のない、常に一定のテンポで回り切る平常心が求められます。ミラクルを起こすと、その一打に高揚してしまい、その後崩れてしまうことがよく見られます。プロもアマもホールインワンした日に意外と全体のスコアが悪くなってしまうのは、それが理由だと思われます。
市原選手は前半を好スコア「31」で回り、上位で折り返しました。そこから10番、13番とバーディを奪い、今回の勝利につなげました。神がかった部分だけがフォーカスされがちですが、実は後半の「32」が勝利をたぐり寄せた一番の要因なのです。
市原選手は日本の出場権を持っていなかった時代、欧州ツアー、アジアンツアーと世界を転々して戦ってきました。同じく世界で戦ってきた川村昌弘選手が今週、欧州ツアーの最終予選会(ファイナルQスクール)を通過し、来季出場権を獲得。実は市原選手もこの最終予選会に出場するかどうかで迷っていたのです。
欧州での予選会は、8月末の国内賞金ランキング上位者にファイナルから受けられる資格が与えられます。そのなかで手を上げたのが川村選手でした。「日本ゴルフツアー選手権」で初優勝した市原選手は同じ権利を得ていましたので、出場できるチャンスを前に相当悩んでいる様子でした。
川村選手のニュースが飛び込んできたのが、「ダンロップフェニックス」の2日目。市原選手がどのように感じていたかは不明ですが、少なからず思うところはあったはずです。それを聞いて奮起したかどうかは分かりませんが、結果的に良い方向に転じました。
今回のビッグタイトルを制し、36歳の苦労人はより一層、世界への意識が高まったと思われます。神がかったショットの後に見せた粘りと、運命的に国内の試合を選んだ判断。このバランス感覚があれば、観衆をあっと驚かせるような逆転劇を近いうちにもう一度見せてくれる気がします。(解説・佐藤信人)
- 佐藤信人(さとう のぶひと)
- 1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。