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佐藤信人の視点 勝者と敗者

短縮競技でも 小鯛竜也が見せたホンモノの“対応力”

◇国内男子◇マイナビABC選手権 最終日(29日)◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7217yd(パー72)

「ブリヂストンオープン」に続き「マイナビABC選手権」も悪天候によるコースコンディションの不良により、競技短縮を余儀なくされました。

2週連続の最終日中止という事態に、優勝者に対して「(72ホール戦っていないのだから)“ホンモノ”とは呼べない」という声があがってしまうのも事実ですが、私はそうは思いません。

それは競技短縮を視野に入れてラウンドするなかで、限られた期間で最善を尽くすことも勝者に値する重要な要素といえるからです。

予定通り4日間競技を戦ううえで、選手たちはその日、その日のペース配分を頭に入れて戦っているものです。初日はなるべく上位をキープし、2日目は予選を通るためにギアを入れ、3日目“ムービングデー”はバーディを量産していく。最終日はトップ争いの駆け引きに打ち勝つという一連の流れです。

最終日中止となる可能性が大きいことを選手全員が把握しているなかで、3日目終了時点でトップに立つということは、トップ争いの駆け引きも考えながらバーディも獲っていかないといけません。1日で2日分の神経と労力、そして何より“対応力”を要することになります。

特に「マイナビABC選手権」の舞台は高速グリーンで知られるABCゴルフ倶楽部ですから、4日間同じ状態でも攻略するのは至難の業。しかも2日目まで非常に速かったグリーンに慣れてきた後、3日目は雨で重く変化したグリーンに対応していかなければならないのです。

このような状況で初優勝を果たした小鯛竜也選手のプレーは、抜群の“対応力”を発揮したといえます。序盤調子が上がらず、何ホールかティショットを曲げていましたが、その局面でセカンドショットを確実にピンそばに寄せる好プレーを連発していました。

また雨に濡れた高速グリーンを攻略し、ロングパットの距離感も冴えわたっていました。この状況下で見せた「安定したゴルフ」は十分“ホンモノ”と呼ぶに相応しいプレーだったといえます。

小鯛選手はそもそも17歳でプロ転向後、なかなかツアー出場に恵まれず、レギュラーツアーデビューした2011年から5年間で出場は5試合のみ。昨季のチャレンジツアー「Novil Cup」で優勝するまで10年を要した苦労人です。

この勝利によって、いまだ未勝利の若手選手やチャレンジツアーに出場している選手に、大きな勇気と希望を与えたことは明白です。今後、小鯛選手に続く新たな初優勝者が現れたとき、この1勝の影響度を再認識させられることでしょう。(解説・佐藤信人)

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佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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