「2億円稼いだ」骨董品級のシャフトも 久保谷健一のクラブとゴルフ哲学
2017年 パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ
期間:04/20〜04/23 場所:千葉カントリークラブ梅郷コース(千葉)
20年間変わらない 一発をモノにする「ケンケンゴルフ」
◇国内男子&アジア共同主管◇パナソニックオープン選手権◇千葉カントリークラブ梅郷コース(千葉)◇7130yd(パー71)
最終日に「64」。宮本勝昌選手とのプレーオフをモノにして、大逆転で5年ぶりの優勝を果たした久保谷健一選手のゴルフは「ケンケンらしい」のひと言。20年前を思い出しました。1997年の5月、プロ3年目、25歳の久保谷選手は川奈ホテルGC富士Cが舞台の「フジサンケイクラシック」で、ジャンボ尾崎さんとの接戦を制してプロ初優勝を遂げたのです。
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われわれ同世代のプロにとっては、大変な衝撃でした。当時、活躍していたのは丸山茂樹選手。アマチュア時代の実績、レベルからも「丸山選手なら勝って当たり前」。しかし、久保谷選手の優勝で「ケンケンができるのなら」と、この年は、私を含め宮瀬博文選手、藤田寛之選手、横田真一選手がプロ初優勝をすることができました。
一方で、久保谷選手はプロ初優勝から23試合中14試合で予選落ちと成績が出ません。予選通過した試合の最高位は20位です。ただ、最終戦の「大京オープン」でプロ2勝目。野球でいえば、毎回得点するのではなく1回で大量得点を取る。「一発をモノにする久保谷選手」を強く印象づけたシーズンとなりました。
久保谷選手は、2012年「日本オープン」優勝で5年のシードを獲得していました。ただ、選手にとって“長期シード”は心揺れる元にもなります。「長期シードで守られている」時期に成績が出なければ、まず初年に「このままダメになるのではないか」と心配の芽が出てきます。2、3年目も同様であれば先々の不安に襲われ、心配の芽は成長します。たまにトップ5に入っても「あぁ良かった」で終わり、ゴルファーとしての成長は望めません。
最終年はどうなるか。開き直ります。久保谷選手は「角番」と表現していましたが、人間は追い込まれると頑張れるものです。私も、5年シード4年目の賞金ランキングは80位。しかし、最終年は優勝には至りませんでしたが同48位で翌年のシードを獲得しました。ただ、ここで勝ち切るのが「ケンケンらしい」ということです。
45歳、ベテランの優勝はすべての同世代に勇気を与えるものです。しかし、ベテランばかりが活躍するツアーは健全とは言えません。堀川未来夢、稲森佑貴、星野陸也、今平周吾、香妻陣一朗、大堀裕次郎といった若手選手の名前が出てくるようになりましたが、勝たないとダメです。一人が勝って突破口を開き、同世代に波及させる。ツアーの主導権は、若手に握ってもらいたいものです。(解説・佐藤信人)
- 佐藤信人(さとう のぶひと)
- 1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。
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