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2019年 BMW PGA選手権
期間:09/19〜09/22 場所:ウェントワースGC(イングランド)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

地に落ちた「マスターズ」覇者の復活

欧州ツアーの旗艦大会「BMW PGA選手権」で優勝したのは、2016年「マスターズ」覇者のダニー・ウィレット選手(イングランド)でした。3年前にオーガスタでグリージャケットを羽織りましたが、その後は世界ランキング400位台まで低迷。このまま、第一線から姿を消すのではないか、と思われたほどでした。

不振のきっかけになったと思われるのが、同年10月の米国選抜と欧州選抜の対抗戦「ライダーカップ」開幕前の、SNSでの“つぶやき”でした。ウィレット選手の兄がTwitterで、米国人をからかうような表現の文章を書きこんだのです。

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これに開催地の米国ファンが大激怒。大きな波紋を呼び、大会開幕前の公式記者会見でウィレット選手が謝罪しました。しかし、大会期間中の彼に激しい野次が浴びせられます。結果は米国選抜の完勝。ウィレット選手は厳しいアウェーの空気に包まれ続け、個人としてもまるで結果を残せませんでした。

ここから彼の歯車が狂いはじめます。「マスターズ」をともに制して親友のような間柄だったキャディとはケンカ別れをし、同じく信頼を寄せていたマネージャーとも離別。栄光をつかんだ彼のチームは、完全に解体されました。試合に出場しながらも、最高9位だった世界ランクは18年5月に462位まで落ち込みました。

仮に彼がケガだけによる離脱で成績を落としていたら、もう少し楽観的に見ていたと思います。しかし、精神的な理由で陥ったと思われるスランプでした。しかも「マスターズ」優勝者になった年に観客から野次を浴びせられ、ヒーローからヒールになる。ファンからの冷たい反応は、選手にとって大きなショックを伴うものです。もしかしたら、このままウィレット選手は戻ってこられないかもしれない、と正直思っていました。

しかし、彼は見事なまでにカムバックしました。新たなコーチとともに立て直し、18年の欧州ツアー最終戦「DPワールド ツアー選手権 ドバイ」で復活優勝。今年は自信が戻ったのか米国ツアーにも参戦し、昨季(2018-19年)はシード権を獲得しました。そして前週、世界ランク5位のジョン・ラーム選手(スペイン)との接戦を制し、最新の世界ランクを31位まで戻してきました。

試合後には「優勝しなくても、今の僕には十分なんだ」と話していたウィレット選手。無欲な状態で、自身のベストパフォーマンスを出すことに集中できる選手です。さらに前週大会からは、2020年に米国で行われる「ライダーカップ」出場選手を決めるためのポイントレースが始まりました。1年間に渡る長い争いですが、ウィレット選手が代表入りに向けて一歩リードした形です。

ゴルファーのキャリアは、他のスポーツ選手と比較して長いものです。その中で、ドラマがない選手はひとりもいません。一度は地に落ちた「マスターズ」王者。1年後に米国の地で再び欧州代表として活躍する彼の姿を、私は見たいと思うのです。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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