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「賞金女王になる」 イ・ボミが果たした亡き父との約束

表彰式が終わる間際に頭上にかかった虹。それは、まるで天国の父からの祝福に思えた――。

千葉県のグレートアイランドCで開催された「伊藤園レディス」最終日。首位から出たイ・ボミ(韓国)が、3バーディ、ノーボギーの「69」で通算14アンダーとし、3日間首位を守り切る完全優勝で今季6勝目、ツアー通算14勝目を飾った。優勝賞金1800万円を加えた年間獲得賞金は2億781万7057円となり、国内女子ツアー史上初となる2億円突破。シーズン2試合を残して、自身初の賞金女王タイトルを確定させた。

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「夢みたいです。父を亡くしてから、それまで以上に母が私のために頑張ってくれた。そんな母の夢(イが賞金女王になること)も叶えることができて本当にうれしい」と今年いちばんの笑顔を作った。

昨年9月に最愛の父・ソクジュさん(享年56歳)を亡くした。療養中に交わした「賞金女王になる」という約束を果たすために、悲しみを抱えながらも約2週間後のツアーに復帰。だが、トレードマークの笑顔が消えたイは、同年の賞金ランク3位に終わり、約束は果たせないままシーズンを終えた。

2015年シーズンは、5月「ほけんの窓口レディース」での1勝目を皮切りに年間6勝。さらに2位が7回と順調に賞金を積み上げ、賞金レースをリードした。シーズン終盤に差し掛かった頃には「(女王を)早く決めたい」気持ちが強すぎてプレーリズムを崩したものの、賞金レースでは独走状態をキープ。今週、単独3位以上で女王が決まる中、優勝という最高の形での締めくくりは、父との約束を果たす気概が伝わってくるようだった。

父との思い出は多くある。ゴルフを始めるキッカケを作ってくれたのも父。中学と高校当時、江原道(カンウォンド)の自宅から、練習場まで片道1時間半の道のりを送迎してくれたのも父だった。1年が経った今も、父を想うたび、思い出を口にするたび、必死で涙を堪える姿があった。

1年越しで叶えた父との約束。父に会えるとしたら、イはこんな言葉を掛けるという。「わたしお父さんのために、こんなに頑張ったよ。だから早くタバコはやめてね」。朝からホールアウト後まで降り続いた雨は止み、晴れ間がのぞいた表彰式。ほんの一瞬、天気雨が18番グリーンを濡らすと、空には美しい虹がかかった。イは天を仰ぐと、父の面影を偲ぶかのように、静かに微笑んだ。(千葉県長南町/糸井順子)

2015年 伊藤園レディス



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