記録ずくめの優勝は「プレゼントみたい」 34歳のイ・ミニョンが見せる確かな歩み
◇国内女子◇ニチレイレディス 最終日(21日)◇袖ヶ浦CC・新袖C(千葉)◇6590yd(パー72)◇曇り(観衆2942人)
ここまでの激戦になるとは、誰が予想しただろうか。ツアー通算8勝目を飾ったイ・ミニョン(韓国)本人ですら「いろいろありえないことが起きた」一日だったと振り返った。
トップと7打差の24位で迎えた最終日は午前9時10分スタートの最終組の8組前、同7時40分にティオフ。前半で3つスコアを伸ばすとサンデーバックナインでさらに加速した。「きょうはロングパットが入ってくれた」と11番(パー3)で16mを沈めるなど6バーディを奪い、自己ベスト「63」でリーダーボードを駆け上がった。
ともに初優勝を狙う大出瑞月、吉崎マーナとのプレーオフは「手が震えて心臓が飛び出そうなくらい」緊張したという。「プレーオフに弱いのは自分自身が一番分かっている。だから期待しすぎず『自分のプレーだけに集中すればいい』という気持ちでプレーしました」と過去3戦3敗のエキストララウンドに向き合った。
そんな鬼門を安定したショット力で走り抜けた。舞台の18番(パー5)は左ドッグレッグで、ツアー屈指のフェードヒッターとの相性は悪かった。ところが、壁のように立ちふさがる左サイドの林ギリギリのラインを1Wで攻め込み、ピンまで200yd前後のフェアウェイに何度も運んだ。「耐えて、耐えて、耐える人が勝つんだなと思って最後まで耐えました」。7度目のティショットは完璧で、ピン4mにつける2オンに成功。パーに終わった大出瑞月に対して、イーグル逃がしの2パットでプレーオフ7ホール中6度目のバーディを奪い、激闘に終止符を打った。
プレーオフはツアー史上最長の2時間6分。最終日の7打差逆転はツアー歴代4位タイで、24位からの大まくりはツアー史上最大。記録ずくめの一日に「本当に疲れました。『やっと終わった』って感じ」と笑うのも無理はない。
2017年に日本ツアーに参戦して10年目、今年34歳の誕生日を迎えた。来日前の15年には腎臓がんの手術も受け、病魔を克服した過去を持つ。「やっぱり(体力の)回復が遅い」と感じることも増えたというが、「周りの選手も強いし、『私もうまくなりたい』とモチベーションもあがる。実力もどんどんレベルアップしているし、日本に来てよかった」。前回の優勝が、竹田麗央や山下美夢有ら20代が大躍進した2024年シーズンに30代選手が挙げた唯一のタイトル。若手が台頭するツアーでベテランの歩みに陰りはない。
今季は優勝よりも「安定したプレー」をテーマに掲げて迎えた。出場12試合目で手にした2年ぶりの8勝目を「全然思いもしなかったので、プレゼントみたい」と話す。「2年ぶりだけど、2年に思わないぐらい短く感じています。ラッキーでした」と、派手なガッツポーズではなく柔らかな笑顔で勝利の味をかみしめた。(千葉市若葉区/安平賢太郎)