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母になってツアー復帰 「想像もしなかった」34歳のいま/宮里美香インタビュー(前編)

宮里美香が“ママ”になってツアーに戻ってくる。産休前最後の試合になった2022年5月「ブリヂストンレディス」から約1年9カ月。出産を経て迎える34歳での再スタートを前に、1歳2カ月の長男を連れた宮里が心境を語った。2回にわたり紹介するインタビューの前編では、20代のころは想像もしなかったという “いま”に迫る。(取材・構成/石井操)

「叫んだ」初めての出産

“鼻からスイカを出すぐらいに痛い”と比喩される出産。「いままで叫んだことってあまりないんですけど…絶叫しました」。22年12月に第一子を生んだ宮里は、想像を絶した痛みとの戦いを、そう笑って振り返った。「(麻酔を使って陣痛を抑える)無痛分娩を選んだんですけど、痛かった。人によって(痛みの大きさは)違うみたいなんですけどね」

出産前、夫には自宅で待機してもらっていた。「旦那さんも立ち会いができたので、看護師さんから『来てもらったほうがいいです』と言われて頑張って電話したんですけど、最後の方は『あ、もう無理』って。電話するのも本当に大変だった」。苦しさにもだえながら連絡をつけ、夫が病院に到着して1時間ほどして産声は上がった。

30歳を節目に描いた人生設計

史上最年少の14歳で「日本女子アマ」を制覇し、ジュニア時代から多くの海外試合を経験してきた。プロデビューは日本ではなく予選会を突破した米ツアーを選び、19歳で渡米した。主戦場は米国のままスポット参戦した2010年「日本女子オープン」で初優勝を飾ると、12年8月「セーフウェイクラシック Presented byコカコーラ」で米ツアー初優勝。13年「日本女子オープン」でプロ3勝目を挙げた。

しかし、以降はタイトルに近づきながらも手が届かない時期が続き、17年シーズンに米ツアーの賞金シードを逃して28歳で撤退を決めた。「30歳が節目の年というのはありましたね。ちょうどプロになって10年あたりなのもあって、30歳手前に日本でやるのか、それともこのままアメリカでやるのか、今後を考えだした」。翌18年は主催者推薦を受けながら日本に主軸を置き、初めて出場した日本の予選会(QT)を突破。本格的に国内ツアーに加わった。

宮里にとって“30歳”は、人生におけるもう一つの節目と考える年齢でもあった。「30歳までに結婚はしたいというのはあった。実際は31歳で結婚と(思い描いていた時期よりも)過ぎちゃったけど、33歳で出産を経験できて。自分的にはこんなに早く出産できるとは正直思っていなかった」

実際に子どもを授かった宮里が、強く伝えたいことがある。「若い子たちに言えるのは“早いうちに結婚したほうがいい”。出産を早いうちに経験して復帰というのは全然ある。ゴルフに限らず、女性アスリートは結婚で(競技から)フェードアウトする人は多いと思う。私もそういう風に(なるのではと)捉えていた。でも、こういう選択肢もあるんだ、というのは、自分もちゃんと経験して“いま”感じることですね。ずっとアメリカでゴルフをしてきて、日本に帰ってきてからもゴルフをして。プライベートはすごく充実していると思えるし、また新たな道がひらけた段階かな」

愛息にも海外経験を

ベビーカーを押して街中を歩くと、いまも不思議な感覚に包まれる。あっという間に1歳を過ぎた我が子は、もう歩き回れるようになった。着られなくなった衣類が増えるたびに成長の早さを実感する。「いま11㎏ぐらいあるので、若干もうトレーニングですよね」と高く抱きかかえ、表情をのぞきこんだ。

名前は「青颯」と書いて「アラン」と読む。イタリア語のオレンジ色=アランチョーネ(arancione)に由来し、宮里が長く勝負カラーとする大事な色でもある。保育園は英語に触れられる機会の多いインターナショナルスクールを選んだ。自分が成長する時間を過ごせた海外に、いずれは息子にも行ってほしいという思いからだ。

「やっぱり最初にアメリカに行って良かったって今でも思う。私の性格もあると思うんですけど、アメリカ挑戦をすると決めて、動じないというか、何ごとにもブレずにやってこられた。最初に日本からだったらずっと戸惑っていたかもしれないし、色んなことが起こり得た。柔軟に対応できたというのはすごく良かった」

未来を想像することはなかなか難しい。ただ、少なくとも35歳を迎える年齢になって第一線でプレーする姿は、「20代のときは想像もしていなかった」という。「ましてや、日本に帰ってきてプレーするなんて」。海を渡って奮闘してきた当時の自分を思い返せば、驚きを隠せない現実だ。

「でも、それはそれで幸せですね。子どもを授かって、生まれて、復帰できる。ママゴルファーなんて想像もしていなかったな。いつまで続けられるかというのはまだ全然考えていないですけど、すごく楽しみ」

かつて描いた未来予想図とは違うことばかりでも、しっかりと幸せを感じられている。再びゴルフクラブを握るこれからも、きっとそれは変わらない。

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