今週は桂川有人が“凱旋” 岩田寛は“AO”に次ぐ大会3勝目なるか
2024年 ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!
期間:04/25〜04/28 場所:太平洋C御殿場C(静岡)
167cmの桂川有人はなぜ飛ぶ? 目澤秀憲コーチが明かすスイング改造の舞台裏
◇国内&欧州男子ツアー共催◇ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント! 最終日(28日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)
桂川有人の飛距離大幅アップに驚いている人は多いに違いない。167cmは日本選手の中でも小柄。海外勢に混じるとひと際小さく見えるが、ひとたびドライバーを振れば、その屈強な選手たちをアウトドライブする。平均飛距離は300yd以上。もともと飛ばし屋のイメージはなかったが、昨年からどのように飛距離を伸ばしてきたのだろうか。(取材・構成/服部謙二郎)
目澤秀憲コーチとスイング修正に着手
「目指したいスイングとそれに対してのトレーニング、そしてクラブフィッティングの全てがハマった」と話すのは、昨年12月に桂川のコーチに就いた目澤秀憲氏。「スイング、体、クラブ、まさに三位一体。今はすべてがいい方向にいっています」と、取り組みに手ごたえを感じていた。
桂川の「もうちょっと飛ばしたい。距離の階段をちゃんと作りたい」というリクエストを受け、まず『ギアーズ』というスイング解析機を使ってスイングのエラーを洗い出すことから始めた。「体の動きをみると、けっこうリバース(トップで左に倒れる動き)していて、横の移動が上手く使えていなかったんです。それによってひざも流れやすく、うまく地面を踏めていませんでした。入射角が鋭角になりやすく、スピンも増え、なかなか距離は出せない状態でした」。桂川の求める飛距離アップには、大幅なスイング修正が必要だった。
理想のドローボールを求めて
では、具体的にどのような改善策を施したのか。「これまではフェード一辺倒で、ドローが打てるスイングではありませんでした。打てたとしても低いドローになってしまって、試合で使える球ではなかった。スイングを良くする意味でも、飛距離を上げる意味でも、コントロールしたドローが打てるスイングを目指してもらいました」
ドロー習得にあたり、桂川に起きていたエラーを改善していった。「リバースしていたのを、軸がセンターのやや左ぐらいにくるようにして、横移動を増やしました。さらにキャスト(アーリーリリース)する動きもあったので、バックスイングでちょっと手を遠くに上げるようにし、手と体の距離をとって下半身から動かす練習をしてもらいました。結果、キャストの動きが減り、体を使ってしっかり振れるようになりました」
トレーニングで効果を促進
もちろん意識を変えるだけでは、スイングを変化させることは難しい。そこにトレーニングを加え、体に刺激を与えた。「昨年アメリカで戦っているときは、なかなかトレーニングができなかったと聞きます。腰痛も抱え、スイングにも影響が出ていた。ことしはオフにしっかりとウエイトトレーニングを積むことができ、体に明らかな変化が出ました」
1月に稲葉弘泰トレーナーと目澤氏の3人でタイ合宿を行い、スイングと体の擦り合わせを図った。目澤氏がやらせたいスイングに対して、稲葉トレーナーが動ける体を作る。2月に再びトレーニング合宿を行うなど、着実に体を仕上げていった。
その効果は4月初旬、再びギアーズで測った時に表れていたという。「年末の時とまるで別人でした。教科書通りのスイングで、軸はずっとセンターをキープ。どちらにも体が倒れずに打てていました。骨盤も今まではボールに近づく動きが大きかったんですが、かなり減って前に出ない」と大幅に改善。ヘッドスピードは2~3m/s上がり(約53m/s)、ボールスピードも75m/sを下回らなくなった。それだけスピードが変われば、当然飛距離は伸びる。
三位一体の改造
さらに目澤氏は、背景にあるクラブフィッティングの効果を強調した。「プロに入ってからアップライトなクラブでやっていたようで。今回ギアーズで測ったところ、結構トウアップで当たっていました。身長が高くはないし、手元も低いところで当たりやすいので、クラブはもう少しフラット目がいいのでは、という話をしました」。ツアーレップ(用具担当)とも話し、アイアンを標準から2度ほどフラットに。「そのポジションなら力を発揮しやすいですし、ドローも打ちやすい。アイアンのシャフトも元々好きだったモーダスに戻して、ヒールに当たるミスも減りました」
スイング、体、ギア、まさに三位一体の改造で小柄な飛ばし屋に進化。そして改造からわずか4カ月で、欧州ツアーという世界の舞台で最高の結果を残した。「いろいろ変えたのはありますが、一番大きいのは実際に本人の振っている感覚と球やスイングのデータが揃っていること。そうすると緊張した場面でも振っていけますからね。感覚が合っていれば怖がらずにスピードも出せるはずです」。一度は夢破れた海外挑戦。一流のコーチ、トレーナーとタッグを組んで仕切り直し、桂川は自らの手で世界に挑む機会を再びつかんだ。(編集部/服部謙二郎)