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「どっちつかずでつらい思いも」 杉浦悠太・父が見守ったアマチュアVまでの道のり

◇国内男子◇ダンロップフェニックストーナメント 最終日(19日)◇フェニックスCC(宮崎)◇7042yd(パー71)◇晴れ(観衆6865人)

前半2つ目のバーディを獲った7番(パー5)で、4Iを握った第2打のアドレスがなかなか定まらない。首をひねって何度もグリップを握り直す杉浦悠太(日大)に「時々、すごく神経質な部分があるんです」と奥雅次コーチは笑った。

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史上7人目のアマチュア優勝を遂げた杉浦を、奥コーチは「普段は“ほわー”っとしている」と表した。ある部分ではマイペース、こだわるところはとことん突き詰める。土で汚れたクラブを無造作にグローブでぬぐい、真っ黒にしてしまった杉浦に苦笑したことも少なくない。

そうかと思えば「クラブのフェース面への意識や握り方には、すごくこだわりがあるみたい」と、スイッチが入ったときのストイックさには周囲も感心するほどだ。

だからこそ、小学校6年間は少しだけつらい時期だったかもしれない。小学1年から、4歳で始めたゴルフと並行して野球も始めた。「体を作るためにも、色々なスポーツをやった方がいい」という思いだった父・博倫(ひろみち)さんだが、「どっちつかずで、つらい思いをさせたかな」と振り返った。

“二刀流”の生活は中々ハード。朝9時から夕方5時までは野球の練習に参加し、帰宅後はゴルフクラブに持ち替えた。「練習場は時間もかかりますし、金銭的に毎日もつれていけないから」と、博倫さんが自宅の庭に練習できる場所を用意。「毎日打つようにしよう」と約束し、最低50球は打ち込んだ。

時にはゴルフより、チームスポーツの試合を優先することも。野球の試合前には、ゴルフの試合前であろうと準備のためバッティングセンターへ。その負けん気の強さと努力に感心しながら、杉浦の気持ちがゴルフに傾くのも感じていた。あるとき「ゴルフだけやっていたら、もうちょっと結果が出るよね」と息子に言われ、少し悩んだという。

ゴルフ一本に絞ったのは、中学に上がるタイミング。「ゴルフはメンタルスポーツですし、キツイ部分もある。楽しくやっていないと続かない」と心配もあったが、息子自身が楽しめれば、選ぶのはどちらでも良いと思っていた。

中学卒業後は福井工大福井高に進学し、2018年には中島啓太久常涼を抑えて「日本ジュニア」で優勝。19年からはJGA(日本ゴルフ協会)ナショナルチームのメンバーに選ばれ、中島らと海外でも経験を積んだ。昨年「日本オープン」3位などプロツアーでも実績を残し、今季は下部ツアー「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」で優勝を挙げ、今大会への出場を決めた。

大学4年、アマチュアとして臨んだ最後のトーナメントは「後悔しない攻め方を」とドライバーを振り切り、フィールドで唯一初日から3日間60台をマーク。後続に4打差をつけて最終日を迎えた。ツアーで自身初の最終組は食事も喉を通らない緊張が襲ったが、杉浦は「せっかくこんなところでプレーできているので、楽しまないと」という思いを持ち続けた。

一時は2打差に迫られたが、上がり3ホールで2つ取り返して通算12アンダー。一度も首位に並ばれることなく、3打差で勝ち切った。

大会を終えてすぐ、「プロ宣言したよ」と報告した息子に博倫さんが言いたいことは、ひとつだけ。「楽しんでやれよ。楽しんでいれば、辛いことがあっても多少乗り越えられると思う」。グリーン上でうれしそうにこぶしを掲げた息子の勇姿は多分、一生忘れない。ただ、優勝争いを見守った一日は「平静を装っていたけど、内心ドキドキでした」。少しだけ気持ちが折れかけた、と明かした。(宮崎市/谷口愛純)

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