すべては勝つための試練 “自分を信じた”リードがマスターズ初制覇
2018年 マスターズ
期間:04/05〜04/08 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
オフライン観戦を貫く「マスターズ」 だからパトロンは熱狂する
2018/04/10 08:30
◇メジャー第1戦◇マスターズ◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7435ヤード(パー72)
もしパトロン(ギャラリー)に「賛成か?反対か?」というアンケートをしてみたら、どちらが多数派を占めるか興味深い。「マスターズ」はいまや(知る限り)世界唯一の携帯電話を持ち込めないトーナメントだ。
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それはメディアも同様で、携帯電話やスマートフォンはプレスセンターから持ち出せない。一度コースに出てしまえば、入ってくる情報は遠くの歓声や手動のリーダーボード、周囲の人々の口伝えなど。コース内には何万もの人々がいるが、誰ひとりとして、スマートフォンの小さな画面をのぞき込んだり、目の前を歩く選手に携帯カメラを向けたりしない。十数年前までは当たり前の光景だったが、現代のオーガスタは世界でもまれなアナログの聖域と言えるだろう。
例えば、アーメンコーナーと呼ばれる一角。12番ティの後ろに立つと、左手に11番グリーンと巨大な手動のリーダーボードがあり、正面には絵画のような12番グリーンがたたずんでいる。右手奥には13番ティも眺められる。
大会2日目。そこに宮里優作がやってきた。11番グリーン右奥からのアプローチはジャストタッチと思いきや、スルスルと3、4m 流れてグリーンの速さがひと目でわかった。続く12番では、奥のカラーに止まった宮里のティショットを見たティレル・ハットンが、手前のバンカーに落として天を仰ぐ。やはり風が舞っているのか…。
視界の外から11番グリーンに白球が飛んできて、次の組が来たことを知らされる。登場したのはフィル・ミケルソン、リッキー・ファウラー、マット・クーチャーの3選手。隣にいたパトロンは、ピンそばに止まった球を指さして「あれはフィルに違いない」とささやいている。3選手の飛距離や調子を考えて、誰が先に2打目を打ったのか?と想像してみたりする。
リーダーボードには10人ほどの名前が載っていた。池田勇太と回るトニー・フィナウ、小平智と回るビジェイ・シンが好調で、彼らの名前から取材すべき日本人選手の現在位置をかなり正確に知ることができる。松山英樹は小平の3組後ろだからあの辺か…という具合だ。
11番、12番、13番と、視界には常にどこかに選手がいる。前に座ったパトロンの帽子を飾るたくさんのピンバッチを眺め、「自分も集めようかな」と考えてみたりする。気づいたら、フィナウの名前がボードから消えていた。確か16番まで終わっていたから、池田はいま17番か18番にいるはずだ。急いでクラブハウスに戻らなくては…。
きっと、鈍った脳の筋トレのようなものだろう。コース図を頭に描いて、誰が、どこで、何をやっているかを想像する。歓声の大きさや距離で、何番ホールで、どの選手が、何をやったかを推測する。コース内では自分にとって、目の前で起きていることが一番豊かでオリジナルな情報ソースだから、選手の視線やリアクション、音や風などに集中する。それにコースも選手も一流の中の一流だ。
直接見ていなくても、プレスセンターに戻れば多くの記録や映像が残されている。インターネットやテレビからも多くの情報を補える。冒頭のアンケート、もちろん筆者は大賛成だ。(ジョージア州オーガスタ/今岡涼太)
今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka