【リオ現地レポート(2)】ブラジルゴルフと日系人コミュニティ
2016年 リオデジャネイロ五輪
期間:08/11〜08/14 場所:オリンピックゴルフコース(ブラジル・リオデジャネイロ)
【リオ現地レポート(3)】サッカー王国でゴルフのポジションは?
リオ五輪で開会式、閉会式、男女サッカーの決勝会場となるマラカナンスタジアムのすぐ脇に、1950年に開校したリオデジャネイロ州立大学はある。3月初旬、本来はオリンピックを考慮して早めに新学期が始まっているはずだったのだが、ブラジルでものごとはそう簡単には運ばない。給与未払いへの対応や待遇改善を目的として、教職員らによる一斉ストライキが行われている最中で、構内は安閑とした雰囲気に包まれていた。
一般的なブラジル人にとって、ゴルフというスポーツはどういうイメージなのだろう?そんな疑問を解消すべく、同大学文学部日本語学科主任の北原聡美先生の紹介で、授業のなくなった学生たちに話を聞いた。
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まず、知っているプロゴルファーは誰か?と尋ねると、チャゴ・ブラガさん(26)は「タイガー・ウッズ」という名前を出したが、それ以外は知らないと首をひねった。アマンダ・オノラットさん(24)は“知っているわけないでしょ”といった風情できょとんとしたまま。2人ともゴルフをした経験も、知り合いにゴルフをする人もいないという。
そもそもゴルフを目にする機会はあるのだろうか?ブラガさんは「国際ニュースでときどき見るけど、国内ニュースで見たことはない」という。オノラットさんは「Wasabi(リュック・ベッソン製作、ジャン・レノ、広末涼子主演)という映画で見たことがある」と教えてくれた。おっと、さすがは日本語専攻の学生だ。
ブラジルでゴルフの敷居が高いのは間違いない。道具は高価だし、プレーフィーももちろん高い。「ゴルフはゴルフ場に行かないとできないし、あっても入りにくい。サッカーは缶1つあればできるのに…」とブラガさんは言う。そう言われては身も蓋もないが、それでも「機会があればやってみたい」とプレーには前向きだ。
一方のオノラットさんは「難しそうだし、簡単にできなさそう」と、眉をひそめる。剣道や柔道の経験はあるそうだが「ゴルフはやりたくない」と消極的だ。ちなみにゲーム好きという彼女が今はまっているのは任天堂3DSの“牧場物語”。「ブラジル人はあまりスポーツをしないのよ。太った人が多いでしょ…」と、近くで別の人がささやいた(写真を見て分かるように、決して彼女が太っているわけではない)。
ブラジルゴルフ連盟のニコ・バルセロス氏によると、ブラジルのゴルフ人口は約2万人。内訳はハンディキャップ取得者が1万人で未取得者が1万人。人口比でいうと、日本の6%(※1)に対して、0.009%(※2)と極小の割合だ。
(※1 日本のゴルフ人口:720万人、全人口:1.2億人/2015年・GDO調べ)
(※2 ブラジルの全人口:2億40万人/2014年・ブラジル地理統計院推定)
現在、同連盟ではゴルフの知名度を上げるため、学校やビーチ、ショッピングセンターでスナッグゴルフのイベントを実施している。「ようやく、人々がゴルフとはどういうものかを知り始めた段階」とバルセロス氏は言う。だからこそ「オリンピックはとても重要な宣伝活動になる」と鼻息は荒い。五輪後にパブリックコースとなるオリンピックゴルフコースでは、毎週150人の子どもたちを招待してゴルフ教室を実施する予定だという。
先日行われたテストイベントで実際に同コースを歩いたが、フェアウェイは広く、ラフはなく、その一方で大きくアンジュレーションに富んだグリーンを戦略的にバンカーが取り囲んでいた。風とティ、さらにピンポジションの組み合わせで難易度はいかようにも調整できる。アベレージゴルファーも、プロレベルのゴルファーも、どちらも充分に楽しめるコースという印象だった。
ブラジルで18ホールを備えたパブリックゴルフコースが誕生するのは、このオリンピックゴルフコースが初めてとなる。ブラジルゴルフ発展の息吹を目撃することになるのだろうか?112年ぶりに五輪に復帰するのが、ゴルフとは縁の遠かったブラジルというのも、面白い巡り合わせだ。(編集部・今岡涼太)
今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka