ポール・ケーシーが今季2勝目へ4打差首位
相手を怒らせてなんぼ? ジェイソン・デイ流マッチプレーの戦い方
1980年代に大ヒットした米国のホラー映画「13日の金曜日」は、ホッケーマスクを被ったジェイソン(ボーヒーズ)が、残忍な武器や怪力で次々とおぞましい殺人を犯していくストーリーだが、ゴルフのマッチプレーにおいては、気のいいオーストラリア人、ジェイソン・デイに注意した方がよさそうだ。
デイは昨年の「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」で優勝しただけではない。米国ゴルフダイジェスト誌が取り上げたリポートによると、今週カリフォルニア州にあるTPCハーディングパークで開催される「WGCキャデラックマッチプレー選手権」に出場する64選手中、今大会の他、「ライダーカップ*」「プレジデンツカップ*」「ボルボワールドマッチプレー選手権」「セベ・トロフィー*」「ロイヤル・トロフィー*」「ユーラシアカップ*」などすべてのマッチプレー競技における勝率で、79%を誇り1位に立つのがデイなのだ。(*シングルス戦に限る。また総マッチ数が3に満たない選手は除外)
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「ストロークプレーとは少し違う。マッチプレーでは、もし1ホールを落としても1ダウンになるだけだけど、ストロークプレーでボギーやダボを叩いて、相手がバーディを獲ったとしたら、それだけで1打から3打の差がついてしまう。だから、ストロークプレーでは堅実でありながら、同時に積極的でなければいけない。でも、マッチプレーなら、僕の積極的なプレースタイルは、いち早く勝負に決着をつけられると思う」とデイ。
だが、積極的なのはショットだけではない。メンタル的な駆け引きにも躊躇はない。2011年大会では、2回戦でポール・ケーシー(イングランド)と対戦し、終盤で30cmのパットをわざとコンシード(OKとすること)しなかった。
「次の瞬間、彼(ケーシー)は僕のことをにらみつけたんだ。それは分かった。だって、彼は向こう側からレーザー光線のような焼ける視線で僕をにらんだんだから。その後2ホールを彼は落として、結局僕が勝ったんだ」
「相手を尊重しないとか、そういうことではない。マッチプレーでは、自分はいつも全部のパットをカップに沈めようと思っているし、相手にも同じことを望んでいる。もしミスをしたり、自分の感情をコントロールできないんだとしたら、それはその人自身の過ちだ」
日常生活では、相手を怒らせたり、挑発したりするようなことは避けたがるのが人の常だが、マッチプレーにおいては、結果的に相手にそんな好戦的な態度を取らせるようなことになっても、気にしないとデイは言う。「勝っても負けても、試合が終わったらいつもと変わらない自分に戻るから。僕はフレンドリーでハッピーな男だと思っているけど、マッチプレーだけは少し違うんだよ。でも、ゴルフコースを後にするとき、“ああ、もうこいつは俺のことを好きじゃないだろうな”ってこれまで何度思ったことか(笑)」
勝負に徹するならデイの選択は当然だが、相手に微妙な気を遣うのも人間である。マッチプレーではそんな人間性を観察するのも面白い。(カリフォルニア州サンフランシスコ/今岡涼太)
今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka