「彼女がみんなを笑顔にしてくれたんだ」海外記者が贈る渋野日向子への感謝
2019年 ザ・ノーザントラスト
期間:08/08〜08/11 場所:リバティーナショナルGC(ニュージャージー州)
驚いたウィニングパット 松山英樹は渋野日向子の“笑顔”に何を思う
快挙の映像はスマートフォン越しに目に収めた。イングランドでの「AIG全英女子オープン」最終日の優勝争いが繰り広げられたのは米国東部時間のお昼過ぎ。松山英樹は今週の米ツアー「ザ・ノーザントラスト」に備え、ニュージャージー州で過ごしていた。渋野日向子のメジャー制覇をネットニュースで知ると、すぐに動画をチェック。「スゴイ。おめでとうございます…というよりも、スゴイ!」と感嘆の声を上げた。
目を丸くしたのが、渋野のウィニングパット。下りの6mを強気にねじ込んだシーンに「勝つか、負けるかを決めて、あの強さで打てるのはすごい。勝負がかかっていて、入れることしか考えていないからあの強さで入ったと思う。少しでも躊躇する気持ちがあれば入らない」と驚いた。
<< 下に続く >>
「オレなら、1mショートですよ(笑)。日頃から(渋野は)ああいうパットが打てているということだと思う」と分析。「スイングを見てもすごく良い。言葉では説明できない、誰かに似ているとかは分からないけれど、僕は好きなスイング。ショットメーカーなのかなと感じた」とビッグタイトルを引き寄せたその技術の高さに納得した。
スマイルシンデレラ。そのフレーズが世界に行き届いてまだ数日しか経っていない。日本勢42年ぶりとなる女子メジャー制覇という事実は、観るものの心をつかむ、20歳の天真爛漫で、自然な笑顔と言動によっていっそう華やかになった。松山は素直に認めた。「僕とは違う。僕はあんな笑顔でプレーできない」
2017年までに日本男子では前人未到の世界選手権2勝を含む米ツアー5勝を挙げながら、目標のメジャー制覇に至っていない。そしてここ2年はタイトルからも見放されている。人見知りで無愛想。外からそう思われていることも知っている。時にその強張った雰囲気と敗因とを直接的に結びつけようとするのは、何も周囲だけではない。
傍目から見れば、残り3試合になった今シーズンの初めから、松山はプレー中によく笑うようになった。本人は「“つくり笑顔”もありますよ」と明かす。「そうした方がプラスになるかなあ、ポジティブになれば、悪いこともうまく行き始めるのかな…なんて考えたりするから。けれど、最近の成績を振り返ると全然そういうこともないんですよね」。目標と期待がメジャータイトル一本に絞られたいま、メンタルを整える術を人知れず練っている。
「彼女(渋野)よりも僕は年が上だけど、自分のスタイルがまだ分かっていない。彼女はもう見つけているのかもしれない。だからスゴイなと思います」と大舞台でスタイルを貫き通せた渋野の自信の積み重ねに、松山は感服した。「自分は自分のやり方で、マイナスの感情を少しでも排除できるようにいろいろやっていく」。コースとの戦い方、自分との向き合い方はゴルファーの数だけある。だからこそ、シンデレラの笑顔の輝きもいっそう際立つ。(ニュージャージー州ジャージーシティ/桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw