JALの宮里藍が見せたトップアスリートの対応
2015年 ANAインスピレーション
期間:04/02〜04/05 場所:ミッションヒルズCC(カリフォルニア州)
米国人トップ3独占を強調…敗者ルイス“ウィンウィン発言”の真相は
米国女子ツアー今季メジャー初戦「ANAインスピレーション」は、2009年覇者のブリタニー・リンシコムと2011年覇者のステーシー・ルイスのプレーオフの末、リンシコムの劇的な逆転優勝で幕を閉じた。今季からスポンサー変更で装いを新たにした大会だが、地元アメリカ人選手同士によるタイトル争奪戦となり、大会は大いに盛り上がった。
「ブリタニー(リンシコム)とは友達。彼女にとっては、しばらくぶりの勝利で、とても素晴らしい1勝となったはず。リーダーボードのトップ3にアメリカの国旗が並んだこともうれしいし、なによりもメジャーの舞台でアメリカ人が優勝できたことはウィンウィンね」
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タイトルを逃した直後のルイスが、こんな風にトップ3に言及したことは特に印象的だった。
近年は韓国をはじめ世界各国の強豪選手が次々に参戦し、アメリカ人選手が意地とプライドをかけて守りたいと感じるであろうツアーNO.1の座を、ことごとく外国人選手にさらわれてきた現状がある。米国女子ツアーは、昨シーズンにルイスが戴冠するまで、実に20年間も外国勢に賞金女王を許していた。
ルイスが外国勢進出の是非に言及したとは思わなかった。今季から全日本空輸が冠スポンサーとなった今大会は、ツアーを代表するメジャー大会にもかかわらずスポンサー降板による存続ピンチを乗り越えた大会だった。昨年は表彰式の舞台裏で、次のスポンサーを尋ねるメディアにツアー関係者が今年の開催も含め言葉を濁していた、という事実がある。今大会がスポンサー変更というターニングポイントを、彼女が考え得る最高の形で終えたーそんな安堵感で、思わず出た一言と感じたのだ。
今大会は、1972年に歌手のダイナ・ショアが歯磨き粉メーカーのコルゲート社(米国)と手を組んで「コルゲート・ダイナ・ショア・ウィナーズ・サークル」としてスタート。82年から食品大手のナビスコ社(米国)にスポンサーを代え、83年からメジャー競技に昇格した。2002年からはやはり食品大手のクラフト社(米国)も加わり、冠スポンサーとして大会を支えてきた。
だが、1試合ごと、1年ごとの積み重ねは、長くなればなるほど、大会やツアー本体のあり方を左右する。米国女子ツアーは年間トーナメント表を見ても、10年前のそれや、男子のPGAツアーと比べ、米国企業の撤退が目立っている。米国内において、スポンサーが期待するほどはファンに届かないツアーとなっている事実を、ルイスはじめ選手たちも感じざるを得ない状況だ。存続が一時宙に浮いたメジャーに救いの手を差し伸べ、無事に着地へ導いたANAに最大のメリットを考えるのは当然の流れだった。
最近では日本企業に加え、キア(キア・クラシック)、JTBC(ノーステキサスLPGAシュートアウト)をはじめとする多くの韓国企業、そして台湾の中国信託商業銀行(スウィンギングスカートLPGAクラシック)、富邦金控(フボンLPGA台湾選手権)などアジア企業のスポンサードが増加しているが、選手にとっては試合があるだけありがたいに違いない。勝負は勝負。その一方で、自分たちにできることとして、そのスポンサーにとってメリットになる好ゲームとなったことを喜ぶのは、トップ選手が抱く危機意識の裏返しとして当然とも思う。
ちなみに、昨季のトップ10にランクインしたアメリカ人選手は1位ルイスと4位のミッシェル・ウィの2人だけ。昨季の日本女子ツアーで、アン・ソンジュら外国勢が賞金ランク上位を占め、トップ10の構成が日本勢、外国勢ともに5人ずつとなった状況も、ちょっと似た傾向に見える。
時代は動いても、意地とプライドをかけたゴルフツアーでの戦いは永遠に続くと信じたい。米女子ツアーの今季メジャー初戦で、ゴルフをめぐる“変化”の一端を目撃した気がする。
糸井順子(いといじゅんこ) プロフィール
某自動車メーカーに勤務後、GDOに入社。ニュースグループで約7年間、全国を飛びまわったのち、現在は社内で月金OLを謳歌中。趣味は茶道、華道、料理、ヨガ。特技は巻き髪。チャームポイントは片えくぼ。今年のモットーは、『おしとやかに、丁寧に』。