一夜明けても笑顔いっぱい

「AIG全英女子オープン」で42年ぶり日本人メジャー優勝を遂げた渋野日向子。天真爛漫な性格が現地の観客や報道陣に受け、“スマイルシンデレラ”と人気者になった。日本のゴルフファンに笑顔と感動を届けた20歳の等身大の姿とは―。偉業を成し遂げた大会を振り返りながら紹介する。

■開幕前…味のりにかじりつき、記念撮影「CM狙いにいきましょうよ」

嬉しそうに味のりを頬張る渋野日向子

アプローチ練習場でおもむろにキャディバッグから取り出した、味のり。「お腹すいたもん。食べるひと～？」と、問いかけに返事はなし。「はーい。一人で食べまーす」と笑って一人突っ込み。食べ物を口に入れるシーンを撮影されることを嫌うプロも多いが、カメラマンに向かって「よし、CM狙いにいきましょうよ！」。味のりの袋を持って「『白子のり』さんの味のりは、すごくおいしい。よろしくお願いします」。なんとカメラのレンズを真っすぐ見続け、PRしてくれた。

＜＜　下に続く　＞＞

■初日…ラウンド中の駄菓子は“タラ”に“イカ” ギャラリーから「何食べてるの？」

「タラタラしてんじゃね～よ」を頬張る※写真は最終日

有名になったラウンド中に食す渋野の駄菓子。海外メジャーデビュー戦初日は「タラタラしてんじゃね～よ」や「よっちゃんイカ」などを食べた。ティイングエリアで口に入れると「何食べているの？」とギャラリーから英語で質問される。結局、「教えてあげたかったんですけど、英語がわからないから、答えられなかったんですよね～」と苦笑い。彼女の活躍とともに駄菓子への注目度もさらに上がる形に。

■2日目…「はい、世界的無名、世界的無名（笑）」とスタート前にニヤニヤ

会場入りする渋野日向子（左）と青木翔コーチ※写真は最終日

スタート前の渋野に挨拶をすると、「あっ！」と声を上げてニヤニヤ。自分を指さして「世界的無名、世界的無名」と笑う。前日記事の見出しに『「なーんてこった」 世界的無名・渋野日向子が初メジャー初日に快進撃』 とつけていた。失礼な言い回しになってしまったかとラウンド後に謝ろうとすると、「全然、全然、そんな。見出しはやっぱり面白くないと。今日も面白い見出しね」と言われた。青木翔コーチも一緒になって「僕らをどんどん、いじっていじって。んー、きょうは『無名から、ちょっぴり有名に』なんてどうでしょうかね？」。2人に救われた。

■3日目…初の公式会見で爆笑生む 通訳が誰なのか後で知らされて「えー」

全てがお初！！

単独首位に立った3日目は初の公式会見に出席。英語を話せない渋野の通訳を担当したのは宮里藍さんの夫、座親匠（ざおや・たくみ）さん。宮里さんとの関係を知らなかった渋野。過去のメジャーで印象的な大会を聞かれて、「宮里藍さんが活躍していた大会は見ていた記憶があります」。座親さんがそれを通訳した。会見場にはくすりと笑いも。ぽか～んとした表情の渋野は後で知らされ、「えー、だからみんな笑っていたのか」。

■最終日…想定外の優勝スピーチ メモにない締めは笑顔の「サンキュー」

笑顔で表彰式に臨んだ

本人も想定外だった優勝スピーチ。英語が堪能な座親さんに書いてもらったメモを頼りに、大会スポンサーらに感謝の言葉を述べたが、途中でまずいと思ったという。「締めがない。どうやって終わるんだろう」。ピンチで最大の武器はやっぱり笑顔。「ほかに言えなさそうなので、とりあえず締めなきゃ」と満面の笑みを浮かべて「サンキュー」。すでにその笑顔で心をわしづかみにされた観客から万雷の拍手が送られた。

■優勝翌日…シンデレラと呼ばれても「サイズでかいし、ガラスの靴、ないでしょ（笑）」

渋野日向子は世界14位に

優勝翌日、渋野が宿舎で撮影や取材に応じた。前年優勝者として出場する来年の全英はスマイルシンデレラにちなみ、ガラスの靴でも作られるのでは、という話に。「でも、ないですよ。私、大きいもん」。ゴルフシューズのサイズは26.5cm。「だからそんな大きさのガラスの靴、シンデレラにないでしょ（笑）」と豪快に笑い飛ばした。

思ったことはすぐ口に出す。奔放なところも魅力だが、飾らず自然体だからこそ共感を呼んだ。その立ち位置はメジャー優勝者になっても「なんも変わらん」。朗らかな性格こそ、一番の強みだ。（イングランド・ウォーバーン／林洋平）