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勝利なき新記録 河本結の11ラウンド連続60台は何を示すのか?

20歳の河本結が前週「宮里藍サントリーレディス」の第3ラウンドまでにマークした11ラウンド連続60台(最終ラウンドは「71」)が、新記録だったことはあまり知られていない。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)によると、1988年のツアー制度施行後は、元世界ランキング1位アニカ・ソレンスタム(スウェーデン)がスポット参戦で数年かけて樹立した「10ラウンド連続60台」が最長記録だった。

5月第3週の「ほけんの窓口レディース」の第2ラウンドから計4試合をかけて、達成した。4試合の優勝スコアがすべて2桁アンダーというコース事情はあるが、年間10勝した2003年の不動裕理でも同年の連続60台は5ラウンド、平均ストロークで最小の『70.0922』を記録した16年のイ・ボミ(韓国)でも4ラウンドが最多だったという事実は、その難しさを表しているといえる。

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ただ、この間、河本の大会順位は6位、2位、3位、3位。3月の「アクサレディス」に続くツアー2勝目を僅差で逃し続けたのだ。

■「きょうはわたしの日」が示すもの

「サントリーレディス」で河本のキャディを務めた加藤大幸氏は“敗因”について「(絞るのは)難しい。でも、優勝するときは自分の番手の距離が残ったり、ロングパットでも得意のラインにつけられることが多い。だから、勝った選手は『きょうはわたしの日でした』なんて表現をしますよね。そこは少なかったかな、と思う」と慎重に言葉を選んだ。

1打差2位で迎えた最終ラウンドでは、第2打が河本の本来の番手の距離と合わないことがほとんどだったという。「言い訳にするつもりはない。ただ、ビットウィーン(between)って言うんですけど、例えば残りが9IとPWの間の距離になる。負けるときはこういうこともよくあるんです。もちろん、そこでがまんしながら勝つのが強い選手ですが、一日を通じてこれが続けば、選手も難しくなってくるのは確かです」

とらえ方を変えれば、好調を維持しながら勝ち切れないとも映る。それでも、今季開幕前から河本の年間複数回優勝を公言していた加藤氏は「すでに1勝している。焦る必要はないと思う」と述べる。

「サントリーの最終ラウンドも結局、1アンダーで回った。パーが17ホール続いて、最後にチップインバーディ。疲れる内容でも最後まで粘って、アンダーパーは12ラウンド続けている。60台を続けて出すということは、シーズンを通して彼女はバーディを奪える選手(現在の平均バーディ数は全体2位)だと示している」

加藤氏はかつて石川遼宮里美香のエースキャディを務め、現在は小鯛竜也のバッグを主に担ぐ。「僕は男子をメーンで担ぐけど、彼女(河本)のゴルフのとらえ方や攻め方は男子選手に近いように感じる。昔からPGAツアーの映像ばっかり見ているらしく、いまのPGAツアーの選手を昔そこでキャディをしていた僕よりいっぱい知っているほど(笑)。向上心や可能性はすごく感じます」

■河本が大切にする2冊のノート

河本はポケットに入るサイズの2冊のノートを大切にしている。ツアー会場にも持ち込み、よく目を通すのだという。「携帯でメモを残す選手もいると思いますが、私は絶対に手書き派。書くことで、脳に記憶が残る」。丁寧な字で書かれたノートを見せてもらうと、蛍光ペンを使いながら数字を書き並べたページがあった。

記されていたのは、昨季の主戦場だった下部ステップアップツアーでの自身のスタッツ(平均ストローク、平均飛距離、パーオン率、フェアウェイキープ率、パーオン時の平均パット数など)。それらの数値が昨季のレギュラーツアーでは何位に相当するのかも。

隣のページには直近4シーズンの賞金ランキングに応じた平均ストロークを記し、近年の流れを分析。今季の目標とする「賞金ランク5位以内」に入るために必要と考えられる数値を、スタッツごとに書きとめている。

「平均ストロークの目標は『70.9』。でも、理想を言うと『70.5』までいけたら。少なくとも71台ではなく、70台にしたい(現在は『71.1149』で全体7位)。賞金ランク上位に入るには、求められる数字だと思うんです」

「あとは1打ごとの自己評価をスコアカードに○、△、×で書きます。たとえピンにからんでも、自分的に50点くらいだったら△。ダメだったら×。必ずしも感触と結果が同じにはならないから」

もう一冊のあるページには、PGAツアー選手のショートゲームの数字が記されていた。10yd刻み(10yd~90ydまで)でフェアウェイ、ラフ、バンカーのそれぞれから打った際、世界のトップたちは平均何mに寄せるのか。ラフからの場合、残り50ydからでは5m20㎝に寄せているが、残り60ydになると7m50㎝を残す…。バンカーは40ydでは4.8mにつけるが、50ydでは8.8m、60ydでは15.6m。『50ydから80ydのバンカーは難しく感じる』とのメモが足されている。

パットに関しては、名手とされたルーク・ドナルド(イングランド)が世界ランキング1位だった2011年から12年にかけての数値を書いた。ドナルドのカップイン率を距離別に分けると、2.1mで74%だったのに対し、2.4mは44%。しかし2.7mでは52%、3mは58%と上昇していた。

数字を並べているのはノートの一部で、決して数字マニアでもなければ、書いて満足しているわけでもない。河本は「PGAツアーの選手たちでもこの距離のバンカーからはこうなんだとか、この距離のパットは決めにくいんだって分かるのは良いと思うんです。例えば自分が同じ距離のパットを決められなかったとき、PGAツアーの選手もこの距離ならば何%しか入らないんだからって思える。そのためにやっているんです」と言う。

「60台を続けられたことは良かった。オーバーをたたかないようにしようという意識は常にある。勝てなかったのは悔しいけど、成長はできていると思う。わたし、夏から秋にかけて結果が良いことが多いんですよ。だから、これから楽しみにしたい」

■4試合で2度の悔し涙「彼女の準備があるからこそ…」

惜敗を重ねたこの4試合のうち河本は、2試合で悔し涙を流した。加藤氏は感情を露わにした20歳を「ノートのことも含めて、彼女の試合に向けた準備は徹底的なんです。練習ラウンドを見ていて、いつも思う。でも、だからこそ感情があふれ出るときがあるんです」と思いやった。

勝負の世界ゆえ、優勝こそすべてとの見方もある。

しかし、将来的に描く米ツアー参戦、全米女子オープンでの優勝争いから逆算した『今季賞金ランク5位以内』、『来季賞金女王』の目標設定がある。今季のノルマも因数分解から導いた。

“勝利なき新記録”。それは現在の、そしてこれからの成長の証しなのだ。(編集部・林洋平)

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