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故郷への想い 惜敗の上田桃子がロープの外で作った輪

◇国内女子◇KKT杯バンテリンレディスオープン 最終日(16日)◇熊本空港CC(熊本県)◇6452yd(パー72)

プレーオフで敗れて3季ぶりの優勝を逃した上田桃子は、無念の表情でつぶやいた。「勝ちたかった。それだけです…」。昨年大会は、開幕前夜に最大震度7の熊本地震が発生して中止になった。2年ぶりの故郷での開催に「照準をあわせてきた」と誰よりも意気込んでいた――。

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2016年4月14日、21時26分。上田は翌日の開幕に備えて熊本市内の実家でくつろいでいた。ガタガタ…、ガタガタ…。小さな揺れから悪夢は始まった。突如、大きな揺れに変わり、電気が落ち、食器が割れ、部屋の中は散乱した。身動きは取れず、母の八重子さんとともに必死に恐怖心に耐えた。揺れが止まると車に避難して、駐車場で眠れぬ夜を過ごした。「まさか熊本が…」。がく然とした。

大会中止が決まった翌日(15日)。多くの選手がコースにキャディバッグを取りに来たが、上田の姿はなかった。絶望の淵にいた。故郷が崩壊していく姿。「正直、試合なんて出来る状態ではなかったんです…」と振り返った。

母に言われ、翌週の「フジサンケイクラシック」から出場することを決めたが、上田が熊本をあとにした16日未明に震度7の”本震”が発生した。それまでは、1カ月で更新は2回ほどのブログを、14日の地震から4日間で11回更新した。被災地に「情報」を提供しようと必死にパソコンの前に座り続けて首筋は凝り固まった。「本当にストイックで無茶をする」と家族は心配した。

「私が結果を出して熊本を元気にする」と誓った昨季は気合いが空回りして賞金ランク35位。「後悔はしていないです。私がそうしたいと思ったから。でも技術がなかった。下手は練習しかないと思った」。2007年の賞金女王は、30歳を「変革」と自らのゴルフを一から見つめ直した。それは、今季、徐々に実を結び始めた。

今季初の優勝争い。3日間で合計1万6814人が応援に駆けつけた。ロープの外で見守った八重子さんには、多くの人が声をかけた。知人だけではない。父の仕事仲間、上田の弟の友人の父、仮設住宅で暮らす人…。上田の応援で集まった人たちは、「久しぶり!」「地震大丈夫だったか?」と輪を作った。八重子さんは「正直(声をかけてくれた人で)知らない方も多くいるんです。でも本当にうれしいよね」と笑った。県民の小さな同窓会のようだった。

18番。決めれば勝てた80センチのパットを外した。プレーオフ1ホール目では池に入れた。この日は、朝の練習場から右手首を何度も自らほぐすなど万全でない様子だった。アイアンショットをダフると首を傾げて手首をもんだ。それでも「前だけを見つめる」と気丈に戦った。「みんなの(熊本県民の)思いは、しっかり持っていたはず…」。言葉を詰まらす敗者に送られた拍手は小さいものではなかった。(熊本県菊陽町/林洋平)

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