写真で振り返るアーノルド・パーマーカップ
“オレオ・ボーイ” 金谷拓実が見せた適応力
◇米国選抜vs世界選抜(大学)◇アーノルド・パーマーカップ 最終日(9日)◇アローシアンC(アーカンソー州)◇パー72
最終日のシングルス戦、ドーミーに追い込まれた17番で首の皮をつなぐバーディパットを沈めた金谷拓実(東北福祉大)は力強く右拳を振り下ろした。次の18番ティへ向かう途中、金谷の元に走り寄ってきたのはマーク・イメルマン監督の娘さん。小さな手にはオレオクッキーが握られていた。
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今大会で世界選抜として集まった選手たち。親睦を深めるため、開幕前の食事会では各選手に短いスピーチの時間が与えられた。そのお題は「このコースについて感じたことと、みんなが知らない意外な自分の一面について」だった。
ティエリアに置かれているスナックで、金谷が気に入ったのはオレオだった。それを思い出し、金谷は分かりやすい英語で言った。「アイ・ラブ・オレオ!」。話を聞きつけたゴルフチャンネルのインタビューでも「アイ・ラブ・オレオ!」を繰り返した。半分は監督にあおられたものだったが、それを言うとみんなが笑ってくれることも確かだった。いつの間にか、“オレオ・ボーイ”の愛称が定着していた。
「周りのみんなは、僕が英語を話せなくてもすごく優しくしてくれて、溶け込ませてくれた。感謝しているし、本当に楽しかったです」と金谷は言う。世界アマチュアランキング3位で、「マスターズ」にも出場したとなれば、選手仲間が一目置くのも当然だろう。だが、いつの間にか、金谷はチームのムードメーカー的存在になっていた。
開幕前の取材中、金谷がふとこぼしたことがある。「なんかあれですよね。僕、感情とか少ないから面白くないですよね?なんか、そう思います。(取材者が)困っているイメージがあります。『どう思いますか?』って言われても、試合はやるべきことをやって、それが結果になるっていう感じだから…」。取材者の期待に応えられない空気を感じとって、彼なりに悩んでいるのだった。
2つの話に共通するのは、自分を客観視して、良い方向に変えていける、変えていこうとする資質を備えているということだ。ゴルフの技術だけでなく、そんな環境への適応力も、金谷の魅力だと感じた一週間だった。(アーカンソー州リトルロック/今岡涼太)
今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka