愛読書は『禅ゴルフ』 日本代表の自覚を胸に/フットゴルフ・小林隼人
あの空気感をもう一度、味わうために/フットゴルフな人々 vol.2 阿部敏之
―フットゴルフの魅力はどんなところですか?
僕個人としては、蹴るのが好きだし、得意っていう中で、奥の深さもある。それに、いろんな人にチャンスがあると思うんです。今も子供にサッカーを教えていますが、接触プレーが苦手とか、チームスポーツだと輝けなくても、個人競技では自分を磨きさえすればトップになれる。いろんな意味で自分が強ければチャンピオンになれるので、みんなに可能性のある競技だと思います。でも、日本のフットゴルフ界は「どうしたら自分が強くなっていくのか?」というところで、まだちょっと甘い部分があるんですよね。
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―トップレベルの話ですね。
はい。2019年のアジアカップ(オーストラリア開催)では、決勝でオーストラリアに負けました。日本は技術的にはアジアの中で絶対的トップですが、大事な場面で外すシーンが多かった。その一方で、オーストラリアや中国などは、ここ一番の集中力というか、変なキックなんだけど入って勝っちゃうみたいなところがあった。世界で戦っていくためには、技術だけ磨いてもダメで、心も強くしないといけない。自分に勝てれば、そういうショットも自信を持って蹴り込めるようになってきます。
―フットゴルフ日本代表の強化合宿(20年10月)では特別講義をしていましたね。
アジアカップは(日本フットゴルフ)協会が旅費を出しているわけではなく、選手たちが実費で行っているので強制できるものではないのですが、ちょっと競技者として緩い部分がありました。たとえ協会が言えなくても、選手としていろいろ経験している僕なら「こんなんじゃ勝てないよ」っていうことは伝えられる。日々の生活やトレーニングで自信をつけていくしかないっていうことを話しました。
―2023年の第4回「ワールドカップ」(米国フロリダ州)は、阿部さんにとっても大きなモチベーションになっていますか?
そうですね。フットゴルフを始めたばかりの2018年12月に、Jリーグ経験者の特別推薦みたいな形で、(第3回ワールドカップ)モロッコ大会に参加させてもらったときの空気感が、鹿島や、日本代表で参加した海外試合の感覚に似ていたんです。日の丸をつけて、どこの言葉をしゃべっているのか分からないような人たちと戦う高揚感。それを最初の方に味わったので、また選ばれて行きたいっていう気持ちがありますね。
-出場した「ワールドカップ」はどんな経験になりましたか?
世界のプレーに圧倒されたし、レベルの差に驚かされました。ワールドカップのコースは、めちゃくちゃ長くて、起伏も激しくバンカーも多くて、パーを獲るのが精一杯みたいなところばかりです。モロッコでは、カップが(ゴルフの)グリーンのカラーに切られていて、グリーンからもそのまま蹴らせてもらっていたので、繊細さも必要になってくる。チョンって当てるだけなのに、転がってピンを過ぎると下まで落ちて戻ってくるのも大変みたいな(笑)。そうなると、みんな怖くてショートするんです。それを海外選手は経験なのか慣れなのか、簡単に寄せてくる。この数年で経験を積んで、またレベルアップした自分でチャレンジしたいです。
―世界と日本の差はどれくらいありますか?
サッカーと一緒ですが、まずパワーをどう補うか。それでいて、海外選手もちゃんと器用だし、たくさん戦っていて経験もある。どうやって追いつけるかな…って思いますね。あと、日本はまだ短いコースが多くて、そうなると大きなミスは出ないんです。だけど、距離が長くて、大振りをしなきゃバーディが獲れないとなると、攻めてミスが出てスコアが崩れる。サッカーもそうですが、日本で親善試合をやったときには良い結果が出るけれど、アウェーになると環境やプレッシャーに屈してしまう。慣れていないというだけで成績が落ちてしまうのは本末転倒ですよね…。
-そういう意味では、今年5月に米国フロリダ州で開催予定の日米対抗戦「パシフィックトロフィー2022」は良い機会ですね。
そうですね。アメリカのコースを知ることと、アメリカも比較的強いチームなので、そういう相手と戦うことは貴重な経験になるはずです。