アブダビ、近代と伝統の共存/アブダビレポート(4)
2013年 アブダビHSBCゴルフ選手権
期間:01/17〜01/20 場所:アブダビGC(UAE)
スリル溢れる砂漠の接戦を制したドナルドソン
ジェイミー・ドナルドソンは「アブダビHSBCゴルフ選手権」で劇的な勝利をおさめ、ヨーロピアンツアーでは2度目となる優勝を果たした。
ウェールズ出身のドナルドソンは、最初の17ホールをノーボギー5バーディとしたが、パー5の最終ホールを3パットとし、ボギーで終えた。
<< 下に続く >>
これにより、昨日トップの最終組ジャスティン・ローズとトービヨン・オルセンが、18番ホールでバーディを奪えば勝負はプレーオフへ持ち越させることになった。しかし、オルセンは15フィートのパットを、世界5位のローズは12フィートのパットを決めきれなかった。
「まるで夢のようだよ。最後の自滅はいただけなかったとはいえ、今週は良いプレーを続けてきたからね」とドナルドソンは述べた。
「最低でも2人のうちどちらかはパットを決めると思っていたけど、2人ともパットを失敗した時に今週は自分にツキがあったと感じたよ」。
「優勝トロフィーを持ってこの場所に立てて本当に幸せだよ」と続けた。
昨年の「アイルランドオープン」で優勝するまでに、ドナルドソンは欧州ツアーで255試合を要したが、その後13試合で2勝目を飾ることとなった。
ドナルドソンは前回優勝のロバート・ロックを激励するために、自身の「マスターズ」招待状の写真をメールで送ったが、昨年優勝のロックに続いて、アブダビゴルフクラブでの優勝を勝ち取った。
前半戦では世界トップ2のロリー・マキロイとタイガー・ウッズが予選落ちの憂き目にあうなど、難しいコースを振り返って、ドナルドソンは自分に起こった事を信じられない気持ちでいっぱいだった。
「水曜日のプロアマでコースが非常に難しいと感じて、自分にはチャンスが無いと思っていた」。
「まあまあのできならば納得だと思っていたんだ」とドナルドソンは述べた。
「トロフィーをこうして持っている事が信じられない」。
昨年11月の中東、ドバイでマキロイに敗れたローズは、オルセンと並んで2位。
しかし、最も同情票が集まったのは、ローズと同じく英国出身のデビッド・ハウエルだった。
オフィシャル世界ランキングで現在258位、3年前は569位にまで落ち込んだ。元世界ランク9位のハウエルは最初の10ホールで5バーディを奪って、首位に上った。
しかし、「ライダーカップ」の元スターは、12番ショートホールでボギー。続くホールでは、バンカーからピンそば4フィートにつけるショットを見せたが、信じられない事にそこから4パットでトリプルボギーの7打。
ハウエルは何とか6位タイにつけたが、あのまま首位をキープして7年ぶりの勝利を収めていれば、ランキング100位以内に返り咲いていただろう。
昨年末に世界ランクが50位内になりオーガスタナショナルへの招待が決まっているドナルドソンは、最新版ランキングが発表される明日には、ランクを30位前後まで上げているだろう。
ドナルドソンはローズに2打差でスタート。1番ホールに続いて9番、11番でバーディ。ハウエルの悪夢の直後も、14番で18フィート、15番で15フィートのパットを沈めて2打差をつけた。
最終日を68でラウンドしたドナルドソンは、通算「274」の14アンダーとし、一年前に親友のロックがマキロイに1打差、ウッズに2打差をつけて優勝した時のスコアを一つ上回った。
「マスターズ」の招待状の写真をロックに送った件について、ドナルドソンはこう述べている。
「ただの冗談だよ。彼は今大会中体調を崩していたけど、“僕のトロフィーとり返せ”と言っていたよ」。
トロフィー持ち上げた彼は、「とりかえしたぞ、ロッキー!」と言った。
初日を67でラウンドして以来首位を守ってきたローズだったが、最終日は71で回るのが精一杯だった。バック9では3バーディを奪ったが、グリーンを捉えきれなかった11番と16番ではボギーを叩いてしまった。
今大会2位で世界ランク4位の座を取り返すには充分な成績を残したローズは、「今日は大変な一日だったよ」と振り返った。
「フロント9では何故か調子に乗る事ができなかった。だけど、その後で何とか調子を取り戻して気持ちも戦闘モードに入っていった」。
「14番ホールでバーディを奪った時、ジェイミーが勢いに乗っていた事には気づいてなかった。あの時は1打差でリードしていると予想していたんだけど、実際には1打リードされていたんだね。ジェイミーには脱帽だよ」。
「悪い所は多くなかったので、自分を責めるのは難しいよね」。
「どちらかといえば自分のベストはフロント9ではなくバック9で発揮したと感じているよ。それは自信になるよね」。
「特に何かを変える必要はないと思っている。守りに入るのではなく、良いスイングを続けたい」。
「だけど、2位で終えたとはいえ、長くて厳しい一週間だったね」。
最後のパットに向かう時、昨年9月の「ライダーカップ」が彼の頭をよぎった。
「フィル(ミケルソン)との18番ホール。右のエッジ外からのパットを思い出した。今回も全く同じ場所からの一打だったけど、残念ながら入ってくれなかった」。
「交換したいかって?いや、それは無いよ」。
ドナルドソンの勝利を祝福する彼は、「パース病」と呼ばれる脊髄の怪我で4年間の苦闘を経験している。
ある医者は、選手生命が終わってもおかしくないと告げたが、他の医者からセカンドオピニオンを得た彼は、悪夢が現実となる代わりに、夢の沢山詰まった道を歩んでいる。
22才のオルセンは4番、5番をバーディで終えトップに躍り出たが、続く6番でのダブルボギーは、挽回するには大きすぎる痛手だった。
「ライが良くない事はわかっていたんだけど、何とかグリーンを狙いに行った」とオルセンは述べた。
「安全策で行けば良かったかもしれない。しかし、終わった事は何とでも言えるからね。今日はバーディを狙って行ったんだけど、残念ながらそんなに沢山は奪えなかったよ」。