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2023年 ライダーカップ
期間:09/29〜10/01 場所:マルコ・シモーネGC(イタリア)

小林至博士のゴルフ余聞

経済効果はメジャー以上 国の威信懸けた「ライダーカップ」の価値/小林至博士のゴルフ余聞

2023/09/27 12:28

9月29日に幕を開ける「ライダーカップ」は、収益において「マスターズ」や「全米オープン」をも上回る、世界最大級のゴルフイベントである。隔年開催の米国と欧州それぞれの代表12人による対抗戦で、日本人にとっては縁がなく、地上波や新聞などの主要メディアが報じることもない。私も、アメリカに在住することがなければ、それほど関心を持つこともなかったかもしれない。

だが、一度見ればその魅力に取りつかれること間違いなしだ。マッチプレーの試合形式は、分かりやすくスピーディ。チームメートやファンの大声援を背に、歴戦のつわものたちがメジャーでも見せない鬼気迫る表情で、賞金でも出場料でもない、国と選ばれた者としてのプライドだけを懸けて闘う姿は、見る人の心を深く打つ。

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1927年創設、44回目となる今年の会場はイタリアの首都・ローマ近郊のパブリックコースである。前回、欧州開催となった2018年のフランス大会に続いて、イタリアで開催されるのは史上初となる。

ベルサイユ宮殿に近接するル・ゴルフ・ナショナルで開催された2018年大会は、記録ずくめの大会だった。SNSのインプレッション数は220億、入場者数は27万人に達し、いずれも史上最高。テレビ放映権、グッズ販売、飲食、宿泊などを合わせると、大会が生み出した経済効果は400億円以上にのぼったと推計されている。今回も、フランス大会と同様の効果が期待されている。

ライダーカップは96年の歴史を誇るが、メジャー大会を超える注目を集めるようになったのは、それほど昔のことではない。最初の転機は1979年大会からチーム欧州となったことだ。それ以前は米国対イギリス・アイルランド連合軍で、米国の圧勝続き。知る人ぞ知るイベントだった。

しかし、大陸欧州が加わり、スペインのセベ・バレステロス、ドイツのベルンハルト・ランガーら名手が活躍。実力が拮抗した。そして1985年、14大会(28年)ぶりにカップを奪還し、1987、1989と防衛に成功したあたりから、コンテンツ価値が急騰していった。また、スイングの最中に咳をしただの、ボールが入れ替わっただの、対戦相手をののしり合うという、ゴルフっぽくない対決モードが熱狂に拍車をかけた。

人気を決定づけたのが、のちに“沿岸戦争”として語り継がれることになった1991年大会である。ピート・ダイ設計の独特のレイアウトに吹き荒れる海風という、それだけで嵐を予感させる舞台、キアワ島オーシャンコースでの戦いは、最終日最終組の最終ホールにもつれ込んだ。ランガーが2mのパットを決めれば欧州の防衛、外せばアメリカが奪還という状況で、ランガーはパットを外してがっくりと崩れ落ち、米国チームは狂喜乱舞した。その後もブルックラインの激闘(1999)、メダイナの奇跡(2012)など、数々の伝説に彩られて、今に至っている。

1997年大会において初の大陸ヨーロッパでの開催をスペインで実現して以降は、開催を通じて、当該国や地域のゴルフの普及に一役買うという好循環も生まれている。

今大会の見どころは、セルヒオ・ガルシア(スペイン)らライダーカップの顔がごっそりLIVゴルフに移籍した欧州が、地元開催の連勝を「7」に伸ばすことができるかどうか。これまでも、出場選手の知名度や世界ランキングは米国チームのほうが常に格上ながら、ライダーカップになると、欧州チームは、信じられないようなショットを連発して戦前の予想を覆してきた。今回の戦いはいかに。(小林至・桜美林大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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