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小林至博士のゴルフ余聞

ニクラスかニクラウスか、それが問題だ

「ニクラス」か「ニクラウス」か、それが問題だ。英語発音に近い表記ならばニクラス、「Nicklaus」の綴りから想起しやすい(ローマ字読み風?)読みにするならばニクラウスである。

四半世紀の間、英語を生業の一つとしてきた私は、英語発音に近い表記が好きだが、日本人が発音しやすい、既に定着しているなど、さまざま事情はあるだろうから、統一されていればそれで良いと思っている。たとえば、元米大統領のオバマさんの場合、英語での発音は「バ」にアクセントがある。しかし、日本ではそもそも抑揚はあまりないが、強いて言えば「オ」にアクセントが来る読み方だ。ちなみに、英語におけるアクセントは、常に母音にあり、子音が強調されることはない。たとえば「McDonald」において、「マ」が強調されることはない。

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しかし、多くの場合、各メディアによって抑揚も表記もばらばらである。冒頭のジャック・ニクラス(ニクラウス)もその一例で、ゴルフファンでなくともその名を知られるスーパースター(それも50年以上にわたって)であるにも関わらず、である。ちなみに共同通信はニクラウス、ゴルフメディアはニクラスが多い。

各メディア、何を基準にどのように決めているのだろうか。旧知の島村俊治さんに聞いてみた。島村さんと聞いてピンと来る方も多いだろうが、NHK在籍時には夏冬合わせて8回の五輪をはじめ、プロ野球、ゴルフなどスポーツ実況のエースとして君臨し、80歳のいまも現役バリバリ、その道58年、プロ中のプロである。

島村さんによれば、かつては明確だったそうである。外電のハブであった共同通信社が統一の表記・発音を決めて、それを新聞・テレビ・ラジオを問わず、全マスコミが遵守することになっていた。しかし、世紀末の変わり目あたりから、足並みが乱れ、なし崩しになり、今に至っていると。

その理由は、各メディアが海外に支局を設けるようになったこと、海外中継が増えて中継局がその場で判断する必要が多くなったことなどから、という。米大リーグ(MLB)中継において、島村さんの古巣であるNHKと、実況を担当しているJ SPORTSでは、表記が全く違うケースは多々あるが、今や統一しようという機運はないのだそう。

確かに、私が知っている限りでも、大谷翔平が所属するエンゼルス(ちなみに、英語読みに近づけるならエンジェルズ)の「Joe Maddon」監督について、NHKは「マッドン」とローマ字風、J SPORTSは英語読みに近い「マドン」である。それにつけても、NHKはそのかたわらで、英語発音に近づけようとしてか、「Cabrera」を日本に定着した「カブレラ」という表記にあえて背を向け「カブレーラ」とすることもあったりして、何を基準にしているかもよくわからない。実に混沌としているのが、外国語の表記である。

う~ん、どうするか。アメリカのように、なんでもアメリカ英語の読み方で徹底してしまえば、話は簡単かもしれない。アメリカでは、宗教改革で有名な「マルチン・ルター(Martin Luther)」も英語読みで「マーチン・ルーサー」、同じくドイツ人のゴルファー、「ランガー(Bernhard Langer)」のファーストネームも、「バーンハード」か「バーナード」である。

しかし、日本は、母国語の発音を出来るだけ尊重するという気配りだと思うのだが、ドイツ語の読み方に近い「ベルンハルト」と表記している。つまり、母国語風あり、ローマ字読み風あり、英語風あり。この曖昧さが日本らしいといえばそうだし、多くの外国人が日本に来て最初に覚える言葉「しょうがない」ということだろう。(小林至・桜美林大教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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