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小林至博士のゴルフ余聞

女子プロが来年のキャリアと職場を懸ける戦い

先ごろ、縁あって、BSフジの番組「古閑美保のゴルフチャレンジアスリート」主催のプロアマ大会に出場した。女子プロ1人とアマチュア3人が組んで、スクランブル方式で競い合うチーム戦である。スクランブルとは、全員ティショットを打ち、セカンドショット以降は、チーム内でベストポジションと思われるボールを選択し、その場所からチーム全員が打つという競技方法で、調子が悪くても、ぶすっとすることなく、あるいはそういう方への配慮も無用という、とても楽しい方式である。

ご一緒したのは、柳澤美冴プロ。昨年、ステップアップツアー(LPGAツアーの下部ツアー)で初優勝を遂げた、その実力が素晴らしかったのはもちろんだが、コミュニケーション力も見事なものだった。

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私を含むおじさん3人に対してのワンポイントアドバイス、あるいは世間話、いずれも絶妙だった。和気あいあい、笑顔いっぱいの表彰式からは、他の組もとても楽しかった様子が伝わってきて、柳澤プロに限らず、女子プロゴルファーの接遇能力は総じて高いのだろう。

一事をもって万事となすわけではないが、LPGAツアーの試合数、賞金額が毎年のように増加しているのはこういうことだと実感した。ステップアップツアーも、スポンサー企業が続々と現れ、1991年に始まったときには2試合だったのが今年は20試合である。

そのステップアップツアーの今シーズンが先月で幕を閉じたこの時期は、毎日のように、こうしたプロアマがそこかしこで開催されている。関係者に聞くと、柳澤プロのようにお客さんの評判の良い選手は引っ張りだこで、20日間連続なんていうこともあるそうな。

LPGAツアー最終盤のビッグトーナメントへの出場がかなわないプロは、これらのプロアマ戦で日銭を稼ぐのも重要だが、うつつを抜かしているわけにはいかない。今月末にQTが控えているのだ。QTというのはQualifying Tournamentの略語で、シード権を持たないプロゴルファーが、翌年のシード権を得るために参加する予選会のことである。

欧米ではQ School(キュー・スクール)の呼称のほうが一般的だが、いずれにしても、世界の主要なツアーの多くでは、この時期、晩秋から冬にかけて開催される。ちなみに欧州ツアーのQ Schoolは、先週末に大団円を迎えた。2カ月、3ステージ、14ラウンドの長丁場を経て上位25人が来季の欧州ツアーのシード権を手に入れた。

このQT、来年の職場があるかないかがここで決まる。キャリアと生活を懸けたその戦いの緊張感たるや、私はアメリカ在住時にゴルフチャンネルに勤務していた頃に、うかがい知ったレベルだが、選手の心臓のドキドキ鼓動が、ピンと張りつめた空気を通して聞こえてくるような独特のものがある。

柳澤プロも、房総カントリーでのファーストステージ(11月26-29日)に臨む。その翌週に開催されるファイナルを突破して、来年のツアー出場権を得ることを祈っている。(小林至・江戸川大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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