イベント現場で実感 急速に存在感増すインドアゴルフ
米で人気沸騰中のゴルフエンタメ 「TOPGOLF」に行ってきた/小林至博士のゴルフ余聞
2024/09/30 17:00
先日、米国出張の折、人気沸騰中の「TOPGOLF」に足を運んだ。TOPGOLFはノリの良い音楽が流れる中、友人や家族と飲食しながらゲーム感覚で打ちっ放しを楽しむ、ゴルフを中心としたアミューズメント施設である。
昨年、米国ではゴルフコースでのプレー人口が約2560万人だったのに対し、練習場やシミュレーターなどコース外でのプレー人口は約2790万人と、コースでのゴルフを上回る異例の状況が生じた。その原動力となったのがこのTOPGOLFである。
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私が訪れたのは、フロリダ州オーランドの店舗だ。3階建ての施設に入ると、フロントで予約を確認し、打席へ向かう。途中、2階のカフェスペースではスポーツ映像が大画面で流れ、リラックスした雰囲気が漂っていた。打席の後ろにはソファやテーブルが並び、友人や家族とわいわい楽しむグループが目立つ。日本でいうとボウリング場の雰囲気に近い。
TOPGOLFではマイクロチップ入りのボールを使い、打球追跡システム「トップトレーサー」で弾道や飛距離、ボールの初速をリアルタイム表示する。そのため、単なるレジャーではなく、真剣に練習したいゴルファーにも適している。しかし、私が訪れた夜には、クラブを持参して練習している人は見当たらなかった。聞けば、日中はたまに、練習目的で来るゴルファーがいるそうな。
料金は、曜日や時間帯によって異なる。平日の午前が最安値で1時間37ドル(約5300円)、週末(金土日)の午後3時以降、閉店時間の午前1時までが最高値で1時間63ドル(約9200円、いずれも1ドル=145円換算)となる。日本人にとっては少々高く感じるが、インフレと経済成長が続く米国では、大衆レストランでの食事も一人50ドルは下らないのが現状で、TOPGOLFの料金も一般的なレジャーの範疇(はんちゅう)に収まっているのかもしれない。
実際、TOPGOLFの人気はすさまじい。娯楽ひしめくオーランドの平日の夜でも、最も人気の高い3階は満席で、2階でのプレーとなった。週末の夜に予約なしで訪れるのは、ほぼ無理だという。
TOPGOLFは米国内にとどまらず、英国、オーストラリア、タイ、中国など海外でも展開しており、その店舗数は100を超える。つい先日には、世界的人気ゲーム「フォートナイト」とのコラボも発表された。フォートナイトは総ユーザー数が5億人を超えるオンラインゲームで、そのコンテンツに採用されたことはTOPGOLFの認知度をさらに高めるだろう。
オーランドからニューヨークへレンタカーで北上する途中、いくつものインターチェンジでTOPGOLFを目にした。旅の途中で気軽に立ち寄れるエンターテインメントとしても定着しているのだ。
さて、そんな大人気のTOPGOLFだが、日本市場への進出はまだ実現していない。日本は米国に次ぐ世界2位のゴルフ市場であり、一定の需要は見込めるようにも思えるが、日本ではゴルフを、ボウリングやカラオケのようなエンターテインメントとして楽しむ文化がまだ根付いていないようにも感じた。米国でゴルフの在り方を一変させたTOPGOLFが今後、日本でどのような展開を見せるのか注目していきたい。(小林至・桜美林大学教授)
- 小林至(こばやし・いたる)
- 1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。