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鍛造か鋳造か----論争再び

「さあどうです。我々はフォージド(鍛造)です。ほかとは違うんです」
勇ましくも、あるいは、厚かましくも、と言う向きもあろうが、鋳造が主流のアイアンの世界に乗り込んできたナイキ。ナイキはPGAツアーのプレイヤーが使うことを考えてクラブを作ろうとしているという構図に見えるが、ナイキ社のケル・デヴリン(Kel Devlin)は言う。

「鍛造対鋳造という問題なんです。私たちのアイアンは鍛造。ウッドも鍛造素材です。それは品質へのこだわりなのです。いまや本物が求められていて、それは鋳造では作れない。鍛造にしなくてはできないんです」

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たくさんのメーカーがデヴリンとは真っ向から対立する。ピンも、キャロウエイもすべてのアイアンが鋳造だ。タイトリストのDCIシリーズもすべて鋳造で、唯一の鍛造ブレードは特注ベースで販売されるのみ。テイラーメイドの3種のアイアンのうち2種は鋳造で、残る一種は鍛造モデルだが供給量は少ない。

これまでPGAツアーの何百試合もが鋳造アイアンによって勝たれてきた。多くのゴルフ業界関係者、たとえば有名なインストラクターのデイヴ・ペルツが、実際のところ鍛造と鋳造の違いのわかるゴルファーはいないという考えをもっている。これほどたくさんの素材があり、熱処理の技術にもいろいろある時代にあっては、昔とは違って鋳造こそアイアンを作るには望ましい方法であり、万能であることは疑いもないというのだ。

それでも、ナイキのクラブを作った人物に、鍛造のクオリティーについて語らせるとまったく譲らない。トム・スティーツ(Tom Stites)、ナイキに行く前からツアープロの間では人気のクラブデザイナーだった人物。

「鋳造がなぜよくないのか申し上げましょう。素材をもってきて溶かして鋳型に注ぐと、メタルの表面構造がまったく変化します。鍛造では、安定した表面構造が得られるのです」

この説明に対して、独自の鋳造工場をもつピン社会長のジョン・ソルハイムは、鍛造よりも鋳造の方がいいものになると反論する。

「注意深い作業によって、鋳造で均質なクラブヘッドを作ることは可能です。鍛造の過程には人間に頼る作業があります。ハンマーで叩き、削るという人手をかけなくてはいけません。そのために、製品に品質のムラが生じるのは避けられない」

スティーツはいまや鍛造技術は向上していると対抗する。

「我々はCNCミリングによって、ヘッドのあらかたの重量を落としてしまって、そこからは研磨に至る最終工程になります。たとえば、フェースの平面性をとってみても、かつてないまでのレベルです。それが非常に重要なことなんですけどね」

ナイキのゴルフクラブ部門の責任者マイク・ケリー(Mike Kelly)は付け加える。

「鍛造であることがナイキのクラブへの信頼感を生み出していると感じています。ベストプレイヤーたちは鍛造のクラブを欲しがります。我々にはある。これまで、鍛造のブレードアイアンの分野に力を入れるところはほとんどと言っていいくらいなかった。カテゴリーとしては小規模であることはわかっていますが、我々はブレード分野でナンバーワンになりたいのです」

タイガー・ウッズフィル・ミケルソン、デイビス・ラブ三世、そしてセルヒオ・ガルシアがタイトリストの鍛造アイアンを使っている。デビッド・デュバルはナイキの鍛造アイアンだ。2001年の全米オープンでプレイオフの末破れたマーク・ブルックスは新たにナイキのスタッフプレイヤーとなっている。ブルックスは論争に加わってこう言っている。

「鍛造と鋳造は違うということはわかりますよ。誰がなんといっても私はそう思います」ブルックスの使っているのはややキャビティーの入っているタイプの鍛造アイアンだ。そのアイアンもPGAマーチャンダイズショーで発表される事になるだろう。ナイキとしてまず打ち出そうとしているのは純粋なブレード。ライ角にプラス・マイナス2度ずつのオプションがあり、シャフトはダイナミックゴールド(X100, S300, R300)。デザインしたスティーツは言う。

「このアイアンは過去のすばらしい鍛造アイアン、たとえばマグレガー、ウィルソン、ホーガンからインスピレーションを得ました」

ところで、マグレガーといえば、同じくPGAマーチャンダイズショーに鍛造アイアンの新製品を出すことになっている。ホーガンもプレミアムの鍛造アイアンを予定している。

ナイキはアイアンとあわせて同じく鍛造のウエッジも発表する。ロフトは53,56,58,60度。バウンスとソールの幅が異なる。ウエッジについてはさらにバリエーションが追加されることになっている。

ドライバーは275ccと350ccの2種がすでに公表されている。もう一種、400ccについても展示されることになりそうだ。USGAが385ccまでという規格案を発表し、それが460ccまで引き上げられるという展開に至って、ナイキは留保して事態を眺めるという状態だった。275ccはロフト9.5度のみ。デビッド・デュバルの使用スペックだ。

350ccモデルには8度、9.5度、10.5度、11度。フジクラ、グラファイトデザイン、トゥルーテンパー(グラファロイ)のグラファイトシャフトが装着される。

鍛造はドライバーについても声高に連呼される用語となっている。全モデルのフェースが鍛造であるというだけではなく、デヴリン曰く。

「我々のドライバーのフェースは製造工程が違う。たとえばフェース面ははめ込みではなく最大範囲を面として活かす形で溶接されているんです(full face-spanweld)。デュバルに使ってもらったらボールの初速はアップし、一方でスピン量は減りました」

275ccモデルは4つの鍛造されたピースが溶接されているドライバーである。350ccモデルの方はボディー部分が鋳造でフェースが鍛造。かくてナイキは鍛造で先手をとってクラブビジネスに乗り込もうとしている。 (GW)

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